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雛渡り
弐
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「────つっかれた~!!」
お昼前から始まった全体稽古は、20時になる前に終了した。
そのままみんなで銭湯へ行って汗を流し、帰ってくると今度は瑞祥さんのお母さんがたくさんのご馳走を振舞ってくれた。
お腹いっぱいになった所で瑞祥さんの部屋へ向かうと既にお布団まで用意されていて、一番先にダイブしたのは瑞祥さんだ。
続いて盛福ちゃんと玉珠ちゃんも滑り込み、私もえいっと飛び込む。
「クソ~! 年々雛渡りの練習キツくなってる気がするぞ!」
「瑞祥さんオバチャンみたーい」
「お!? 言ったな盛福! こうしてやる!」
脇腹をくすぐられた盛福ちゃんは笑いながら転げ回る。微笑ましい光景に仲良いなぁ、と頬をゆるめる。
頬杖をついて二人を見守っていると、玉珠ちゃんが枕を持ってすすすと隣へやってきた。どうかしたのかと首を傾げる。
「巫寿さん巫寿さん……! 神社実習の話聞かせてください!」
「あっ、ちょっと玉珠! 抜け駆けずるーい! 私も私も!」
瑞祥さんの腕から逃げ出した盛福ちゃんが枕を持って私の布団に潜り込んできた。なんだなんだと瑞祥さんまで布団を寄せてくる。
大したことじゃないんだけどなぁ、と頬をかいた。
夜もかなり深まった頃、いつの間にか誰かが持ってきた甘酒とお菓子が広げられ、話題は最近見たドラマの話から恋バナにシフトチェンジしていた。
「ええーッ! 盛福は陶護先生のことが好きなのか!?」
「ちょっと瑞祥さん声おっきい!!」
顔を真っ赤にした盛福ちゃんが顔面目掛けて思いっきり枕を投げる。軽々とそれを受けとった瑞祥さんは枕を抱きしめて「ひゃ~!」と頬を赤くする。
私までドキドキして胸の前で枕を抱きしめた。
「ど、どこが好きなんだ……?」
「全部ですよぉ。ちょっとナヨナヨしてる所も可愛いし、何より医務室に好き好きアタックしに行った時に、わざとらしく面倒くさそうな態度取るくせに耳は真っ赤なんです! そこも可愛くて~」
好き好きアタック……!
そんなことまでしてるのか盛福ちゃんは。
恵理ちゃんといい盛福ちゃんといい、自分の気持ちを恥ずかしがらずに表に出せるのが凄いなと思う。女の私から見ても、そうやって素直な女の子は可愛いし素敵だ。
そうか、でも好き好きアタックって……。
「はいはい、私の話は終わり! 次は玉珠だよ!」
「わ、私……?」
ぽっと頬を染めた玉珠ちゃんが熱海で被っていた布団をぎゅっと握りしめる。
「いるでしょ? 好きな人の一人や二人くらい~」
「二人いちゃ駄目だろ」
「瑞祥さんこまかーい! で、どうなの!?」
うう、と言葉を詰まらせた玉珠ちゃんは小さく首を振った。
「私は別に、神修で推しカプを推せるだけで満足だから……」
「え!? 神修内にカップルがいるのか!?」
そうなの!?と私も目を丸くする。
学生の人数が少ない神修では、他学年の学生も何となく把握している。誰と誰が付き合っているのかという情報はかなり気になる話題だ。
「はい。泰慶が尊くて……」
タイケイ?
聞きなれない単語に皆が首を傾げた。
「あっ……泰慶というのは、泰紀さんと慶賀さんカップルでのことす」
数十秒の沈黙の後「ええ!?」という声が揃う。
「た、泰紀くんと慶賀くん? 私のクラスメイトの?」
「そうです。あそこを見てるだけで私は幸せで……」
恍惚とした表情でうっとり息を吐いた玉珠ちゃん。すっかり取り残されている私たちは困惑気味に顔を見合わせた。
「あのさ玉珠、あいつら男だよな?」
「です」
「付き合ってもないよな」
「……私はちゃんと分かっているんです」
何が、というツッコミが見事にそろう。
玉珠ちゃんは長いまつ毛を伏せて、憂いを帯びた表情で布団のしわを見つめた。
「こんな狭い界隈で、しかも考え方の古い人が多い中じゃ自由に恋愛なんてできません。だから二人はこっそり影でお付き合いをされているんです。誰にも話せず受け入れてもらえない中、二人はひっそりと愛を育んでいるんです」
愛を育む……?
どうしよう頭が混乱してきた。
「知ってますか……?あの二人、食堂で座る時は必ず隣同士に座るんです。泰紀さんは左側に、慶賀さんは右側に」
それは別にわざわざ隣同士で座っているのではなく、何となく私たちの中で座る位置が固定されているからだよ。
一応そう訂正を入れれば玉珠ちゃんは微笑みながら小さく首を振り、「私には分かるんです」。
いや何も分かっていないというか、とんでもない勘違いをしているのでは。
「それに泰紀さん、よく慶賀さんの頭を撫でているんです。それはそれは愛おしそうな顔で。いえ……本当は私からはいつもお顔は見えていないのですがきっとそういう顔をしています」
「いや、それは撫でてるんじゃなくて叩かれて────」
「私には分かるんです」
いや絶対分かってないよね玉珠ちゃん。
「あの二人には私たちには介入できない絆があります。特別な、特別な絆が……」
拡大解釈すればそれは間違いないのでもう言うのをやめた。
「玉珠は腐女子ってやつだったんだな! 確かにあそこ仲良いもんな~」
「泰慶ってことは泰紀さんが攻めなのー?」
すっかり面白がった二人が玉珠ちゃんに話を合わせて盛り上がり始める。
中学時代の友達にボーイズラブが好きな友達はいたし話も聞いていたのでなんとも思わないけれど、それはあくまで二次元の話だった。
まさか身近な人物でそのカップリングとやらに当てはめる人がいるとは。
流石にクラスメイトなので次に顔を合わす時が気まずい。この話題が終わるまでは口を閉じておくことにした。
「で、で! 瑞祥さんはどーなんですか!」
「え、あたしぃ?」
「そうですよ! 後輩たちに喋らせといて自分だけ逃げるなんてズルいです!」
そーだそーだ、と玉珠ちゃんが調子を合わせる。
もごもごと口篭ると逃げるように視線を泳がせ、私と目が合うなりバッと指を指す。
「巫寿はまだ何も言ってないだろ!」
「えっ、私ですか?」
思わぬ飛び火に目を見開いた。
と言っても好きな人なんていないので発表することはないのだけれど。
ええー……と苦笑いでいると、さっきまで楽しそうにしていたはずの盛福ちゃんが急に真顔になった。
「そういうのいいです。やめてください。私たちの巫寿ちゃんに好きな男なんていません」
玉珠ちゃんまで真剣な顔でうんうん頷いている。
まだ何も言ってないのに好きな人がいないことになった。
「何だよそれ! 私だって別に……好きな人なんていないし……」
「ええっ、高三なのに!? 華の女子高生がそんな虚しい!」
「虚しくて悪かったな!」
顔を真っ赤にした瑞祥さんがそう噛み付いた。
「あんなによりどりみどりなのになぁ。鶴吉さんは性格も明るいし顔だって整ってるし。聖仁さんだってなかなか好物件じゃないですか?」
「コウブッケン? 何だよそれ」
首を傾げた瑞祥さんをサラッとスルーした盛福ちゃんは枕に頬杖をついて息を吐いた。
むぅ、と唇を尖らせて枕に顎を乗せた瑞祥さんを見る。
少しつり目気味の大きな瞳に凛とした眉、常に自然と上がっている口角は活発な性格の瑞祥をよく表している。伸ばしっぱなしの黒髪には艶があって、背も程よく高く華奢だ。
神修では全員がほぼ顔見知りで幼い頃からの知り合いが多いからか多くの男子学生は見慣れているのだろうけれど、一歩外に出れば間違いなくモテる部類の女の子だ。
「……私だって、人並みに恋愛したい気持ちはあるけどさ。なんかそんな機会がないんだよなぁ」
そうぼやいたのが聞こえて、私は心の中でああなるほどなと理解した。
間違いなくその隣に最強の番犬が控えているから、瑞祥さんはモテるはずなのにモテないし彼氏も好きな人も出来ないんだろう。
二学期、瑞祥さんが倒れて必死に祝詞を奏上していた聖仁さんの背中を思い出す。あんなに必死になってまで守ってきた女の子だ。そう簡単に取られちゃ堪らないだろう。
にやにやしそうになるのを必死でこらえて枕に顔半分を埋める。
密かに見守ろうって決めたんだから、余計なことは言っちゃダメだ。
ただ現状瑞祥さんの方は全くその気がなさそうなので、聖仁さんには是非とも頑張ってもらいたい。
お昼前から始まった全体稽古は、20時になる前に終了した。
そのままみんなで銭湯へ行って汗を流し、帰ってくると今度は瑞祥さんのお母さんがたくさんのご馳走を振舞ってくれた。
お腹いっぱいになった所で瑞祥さんの部屋へ向かうと既にお布団まで用意されていて、一番先にダイブしたのは瑞祥さんだ。
続いて盛福ちゃんと玉珠ちゃんも滑り込み、私もえいっと飛び込む。
「クソ~! 年々雛渡りの練習キツくなってる気がするぞ!」
「瑞祥さんオバチャンみたーい」
「お!? 言ったな盛福! こうしてやる!」
脇腹をくすぐられた盛福ちゃんは笑いながら転げ回る。微笑ましい光景に仲良いなぁ、と頬をゆるめる。
頬杖をついて二人を見守っていると、玉珠ちゃんが枕を持ってすすすと隣へやってきた。どうかしたのかと首を傾げる。
「巫寿さん巫寿さん……! 神社実習の話聞かせてください!」
「あっ、ちょっと玉珠! 抜け駆けずるーい! 私も私も!」
瑞祥さんの腕から逃げ出した盛福ちゃんが枕を持って私の布団に潜り込んできた。なんだなんだと瑞祥さんまで布団を寄せてくる。
大したことじゃないんだけどなぁ、と頬をかいた。
夜もかなり深まった頃、いつの間にか誰かが持ってきた甘酒とお菓子が広げられ、話題は最近見たドラマの話から恋バナにシフトチェンジしていた。
「ええーッ! 盛福は陶護先生のことが好きなのか!?」
「ちょっと瑞祥さん声おっきい!!」
顔を真っ赤にした盛福ちゃんが顔面目掛けて思いっきり枕を投げる。軽々とそれを受けとった瑞祥さんは枕を抱きしめて「ひゃ~!」と頬を赤くする。
私までドキドキして胸の前で枕を抱きしめた。
「ど、どこが好きなんだ……?」
「全部ですよぉ。ちょっとナヨナヨしてる所も可愛いし、何より医務室に好き好きアタックしに行った時に、わざとらしく面倒くさそうな態度取るくせに耳は真っ赤なんです! そこも可愛くて~」
好き好きアタック……!
そんなことまでしてるのか盛福ちゃんは。
恵理ちゃんといい盛福ちゃんといい、自分の気持ちを恥ずかしがらずに表に出せるのが凄いなと思う。女の私から見ても、そうやって素直な女の子は可愛いし素敵だ。
そうか、でも好き好きアタックって……。
「はいはい、私の話は終わり! 次は玉珠だよ!」
「わ、私……?」
ぽっと頬を染めた玉珠ちゃんが熱海で被っていた布団をぎゅっと握りしめる。
「いるでしょ? 好きな人の一人や二人くらい~」
「二人いちゃ駄目だろ」
「瑞祥さんこまかーい! で、どうなの!?」
うう、と言葉を詰まらせた玉珠ちゃんは小さく首を振った。
「私は別に、神修で推しカプを推せるだけで満足だから……」
「え!? 神修内にカップルがいるのか!?」
そうなの!?と私も目を丸くする。
学生の人数が少ない神修では、他学年の学生も何となく把握している。誰と誰が付き合っているのかという情報はかなり気になる話題だ。
「はい。泰慶が尊くて……」
タイケイ?
聞きなれない単語に皆が首を傾げた。
「あっ……泰慶というのは、泰紀さんと慶賀さんカップルでのことす」
数十秒の沈黙の後「ええ!?」という声が揃う。
「た、泰紀くんと慶賀くん? 私のクラスメイトの?」
「そうです。あそこを見てるだけで私は幸せで……」
恍惚とした表情でうっとり息を吐いた玉珠ちゃん。すっかり取り残されている私たちは困惑気味に顔を見合わせた。
「あのさ玉珠、あいつら男だよな?」
「です」
「付き合ってもないよな」
「……私はちゃんと分かっているんです」
何が、というツッコミが見事にそろう。
玉珠ちゃんは長いまつ毛を伏せて、憂いを帯びた表情で布団のしわを見つめた。
「こんな狭い界隈で、しかも考え方の古い人が多い中じゃ自由に恋愛なんてできません。だから二人はこっそり影でお付き合いをされているんです。誰にも話せず受け入れてもらえない中、二人はひっそりと愛を育んでいるんです」
愛を育む……?
どうしよう頭が混乱してきた。
「知ってますか……?あの二人、食堂で座る時は必ず隣同士に座るんです。泰紀さんは左側に、慶賀さんは右側に」
それは別にわざわざ隣同士で座っているのではなく、何となく私たちの中で座る位置が固定されているからだよ。
一応そう訂正を入れれば玉珠ちゃんは微笑みながら小さく首を振り、「私には分かるんです」。
いや何も分かっていないというか、とんでもない勘違いをしているのでは。
「それに泰紀さん、よく慶賀さんの頭を撫でているんです。それはそれは愛おしそうな顔で。いえ……本当は私からはいつもお顔は見えていないのですがきっとそういう顔をしています」
「いや、それは撫でてるんじゃなくて叩かれて────」
「私には分かるんです」
いや絶対分かってないよね玉珠ちゃん。
「あの二人には私たちには介入できない絆があります。特別な、特別な絆が……」
拡大解釈すればそれは間違いないのでもう言うのをやめた。
「玉珠は腐女子ってやつだったんだな! 確かにあそこ仲良いもんな~」
「泰慶ってことは泰紀さんが攻めなのー?」
すっかり面白がった二人が玉珠ちゃんに話を合わせて盛り上がり始める。
中学時代の友達にボーイズラブが好きな友達はいたし話も聞いていたのでなんとも思わないけれど、それはあくまで二次元の話だった。
まさか身近な人物でそのカップリングとやらに当てはめる人がいるとは。
流石にクラスメイトなので次に顔を合わす時が気まずい。この話題が終わるまでは口を閉じておくことにした。
「で、で! 瑞祥さんはどーなんですか!」
「え、あたしぃ?」
「そうですよ! 後輩たちに喋らせといて自分だけ逃げるなんてズルいです!」
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「そういうのいいです。やめてください。私たちの巫寿ちゃんに好きな男なんていません」
玉珠ちゃんまで真剣な顔でうんうん頷いている。
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顔を真っ赤にした瑞祥さんがそう噛み付いた。
「あんなによりどりみどりなのになぁ。鶴吉さんは性格も明るいし顔だって整ってるし。聖仁さんだってなかなか好物件じゃないですか?」
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むぅ、と唇を尖らせて枕に顎を乗せた瑞祥さんを見る。
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神修では全員がほぼ顔見知りで幼い頃からの知り合いが多いからか多くの男子学生は見慣れているのだろうけれど、一歩外に出れば間違いなくモテる部類の女の子だ。
「……私だって、人並みに恋愛したい気持ちはあるけどさ。なんかそんな機会がないんだよなぁ」
そうぼやいたのが聞こえて、私は心の中でああなるほどなと理解した。
間違いなくその隣に最強の番犬が控えているから、瑞祥さんはモテるはずなのにモテないし彼氏も好きな人も出来ないんだろう。
二学期、瑞祥さんが倒れて必死に祝詞を奏上していた聖仁さんの背中を思い出す。あんなに必死になってまで守ってきた女の子だ。そう簡単に取られちゃ堪らないだろう。
にやにやしそうになるのを必死でこらえて枕に顔半分を埋める。
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