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15.頬へのキス
しおりを挟む(なんだってこうも王宮に出向かないといけないことが多いんだ)
現在カイは数週間ぶりの王宮に来ていた。
今日は、来月に控える隣国との交流晩餐会に向けて、王都に集められた各家の代表たちの顔合わせ会。
外交の顔となるのは、基本的に領主かその嫡子。両親が国外を飛び回っているリヒテンベルク家では、カイが当然その役目を担うことになる。
外交関係の仕事をしている両親のために、当日の晩餐会で少しでも有益な情報を得られれば良いが──
こういうのは大体、見栄の張り合いや腹の探り合いで表面だけの、何の生産性のないものに終わることが多い。
(どうせ形ばかりの挨拶で終わるなら、書類の一つでもまとめていた方が有意義なんだけどな……)
ぶつぶつ心の中で文句を言いながらも、顔合わせ会を終えたカイは王宮内を歩いていた。
そんな彼に、ひときわ明るい声がかけられる。
「カイ、あの時のパーティーぶりだね」
にこやかにカイに近づくのは、第1王子・シグヴァルトだ。
ちなみにゼクスも一緒に来ているが、彼は彼で王宮の近衛騎士団長に呼び出しをくらっているためここにはいない。
最後まで呼び出しに応じるのを嫌がっていたが、王宮内には至る所に護衛もいて、危険なことなどないからとようやく説得したのが数刻前のこと。
そして今カイの前には通りがかった第1王子がいた。
金糸の髪にサファイア色の瞳。王国一の美貌と名高いシグヴァルト王子は、今日も人懐っこい笑みを浮かべていた。
(……なんか、距離近くない?)
カイは少し後ずさろうとしたが、その前にシグヴァルトが軽やかに指先でカイの顎を持ち上げた。
「かわいいね、カイ」
「はっ……!?」
そのまま、頬に軽くキスが落とされた。
(お、おおお王子様、今、ほっぺに……!?)
カイは頭が真っ白になり、その場でフリーズした。
「カイ……」
そして今度は、シグヴァルトの唇がカイの唇に近づく。
(だ、だめ…!)
カイは素早く手のひらをシグヴァルトに向けるようにバツの形に重ねて口を隠した。
動揺しまくるカイを見てシグヴァルトは楽しげに微笑むと、唇の代わりに手のひらにキスを落とす。
そして——王子はすぐに離れることなく、カイの耳元に唇を寄せてささやいた。
「……ほんとうに、会うたびに綺麗になるね。困ったな、欲が増していく」
「っ……」
カイはびくりと肩を震わせ、無意識に数歩後ずさる。
だが、それすらも面白がるように、シグヴァルトはゆっくりと間を詰める。
「立場上、人から警戒されるのも、距離を取られるのにも慣れてる。でもカイが俺を見て動揺するのは……なんか、そそられるな」
その声音には冗談めいた軽さがあるのに、瞳の奥はぞっとするほど真剣だった。
「ま、今日はこのくらいにしておくよ。逃げられても困るし」
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