創リ世ノ記(ツクリヨノシルシ)

右藤秕 ウトウシイナ

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01 序章

序章02

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◆太陽系創世
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【神は、混沌から夜と昼を創った】
―― 創世記ヘシュリエ・アムネ――


 全てが滅び去ったこの世界で、灰村夕凪ハイムラユウナギは新たな神となった。一時期絶望に囚われた彼だったが、なんとか回復し正常な判断力を取り戻していた。

 とはいえ、問題が万事解決したわけではない。特に、何もやることがないのが彼にとって最大の苦痛だった。この場所には大地も海も果てもなく、まだ名前さえも無い。天上を覆う星空と、足元の遥か下に広がるもやがあるのみだ。
 仕方がないので、彼は大人しく神としての仕事をすることにした。最初の仕事は、太陽系を作る事だった。

「では、この棒をお使い下さいグズヤロウ」

 合成天使のナナが形ばかりの微笑みを浮かべて、ユウナギに長い棒状の道具を手渡した。その動作は優雅で一切の無駄がなく、人間的ですら無かった。

「これは?」
「この棒で、分子雲をかき混ぜるのです」

 彼らの足元に小さな池が広がった。池にはこの場所の下方に広がる、元太陽系だった分子雲が縮小して映しだされていた。
 言われるまま、ユウナギは池に棒を突っ込んで軽くかき回した。すると、池の画像と連動して、実際の分子雲がゆっくりと回転を始めた。

「……これは、天の沼矛アメノヌボコか」

 イザナギ・イザナミの神が国生みの際に天の沼矛を使って大地をかき混ぜた、という記述が古事記に見られる。全く同じものかどうか知るすべは彼には無かったが、どうやらこの棒には同等の機能があるらしい。

「はい、ご苦労様でした」
「もういいのか?」
「ええ。あとは待つだけですケガラワシイ」

 分子雲に含まれるガスや宇宙塵が寄り集まって収縮し、やがて太陽や惑星を形作る。原始太陽が輝き始めるまで、約2億年ほどかかるという。

「2億年……」

 その間、ユウナギはこの場所で待たなくてはならない。しかもそれで終わりではなく、まだ続きがあるのだ。彼は深く考えないようにした。またあの絶望のループに落ち込むのは願い下げだった。

 後にユウナギはこの年を、【創世歴1年】とした。


**********


「それにしても……神って一体なんなんだ?」
「一度説明したはずですバカナノ?」
「そうなんだけど、イマイチぴんと来ないというか、覚えてないというか」
「神とは、不老不死不滅不敗です」

 事務的にナナが答える。

「まほうとか使えるのか?」
「魔法は無理ですが、創世神としての力『神威アプリオリ』が使えます」
「アプリオリ」
「神の使う力の総称です。あなたの神威は創世力。あらゆる無生物を生み出す力。長期に渡る修業と、素材リソースが必要ですが」
「ふーん」

 分かったような分からないような顔をして、ユウナギは頷いた。

「って言うか、地球再生なんて大仕事を、たった一人に任せていいもんなのか? もっとこう、エライ政治家や学者を集めて議会でも作って任せたほうが……」
「同感です。無能な個人に任せると、取り返しのつかないことになるかもしれませんし」

 一般論としてのユウナギの疑問と、ある個人を想定してのナナの感想には多少ニュアンスの違いがあったが、「ある個人」本人は気づかなかった。

「……ま、いいか。なんとかなるだろ」


―――――――――――――――――――
◆暇と修業
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 用事がない時、合成天使ナナはひっそりと椅子に座って目をつぶっていた。特に何をするでもなく、スイッチを切られた家電のようにピクリとも動かなかった。
 そんな彼女の安息の時間を、アルジの叫び声が阻害する。

「うわあぁぁ! 暇だー!!」

 太陽系再生の第一歩を踏み出したユウナギだったが、その後特にやることもなく、暇を持て余していた。時間の牢獄に対する絶望を乗り越えたとはいえ、暇なものは暇なのだ。

「作業開始からまだ3日も経っておりませんキモイ」
「だってさ、こんな何もない場所でナナと2人っきりで特にやることも話すこともなく……」

 女子と2人きりという、ユウナギにとって夢の様なシチュエーションでありながら、しかし、楽しそうなイベントが起こる気配は微塵も感じられなかった。

「私にはエンターテインメント機能は搭載されておりません。あなたを楽しませるような事は何もできません」

 口元に微笑みを浮かべてナナは言ったが、閉じかけの瞳は細胞の一片たりとも笑ってはいなかった。

「つか今更だが、そもそもあんたは何者だ? 確か、合成天使とか言ってたな?」
「ええ。私は新たな神をサポートするために生み出された合成天使。人間でも生物でもありませんシネバイイノニ」

 天使といえど翼も輪っかもなく、ナナの見た目は人間そのものだ。外見からは分からないが、その成り立ちは生物よりも機械やプログラムの方が近いという。

「とにかく、この暇な時間をなんとかしてくれ。このままじゃまたおかしくなりそうだ」
「もう少し待てば新たな生命が誕生するはずです。そうすれば」
「もう少しって、あとどれくらいだ?」
「そうですね。知的生命体が生まれるまで、ざっと40億年でしょうか」

 ユウナギが抗議のダダをこね、床を転げまわった。

「……仕方ありませんね」

 ナナが細い指を弾いた。すると彼らの目の前に小さな部屋と、テレビ、パソコン、ゲーム、食事にお菓子、様々な娯楽アイテムが出現した。

「おお、すげえ!! 何だいまの、魔法か!? いや、このまえ言ってた『神威アプリオリ』ってやつか!?」
「これは『天眷アポステリオリ』。合成天使である私や、神使ジンシの使う力です。神威アプリオリに似ていますが、少し違います」
「アポステリオリ……言いにくいな」

 部屋を見渡す。彼の好きな娯楽はほとんど揃っていた。とりあえずの暇つぶしはなんとかなりそうだ。

「食事まである! そういや、ここへ来て何年も経つけど、飯食ってないな」
「神になったことであなたの体も変化しています。食事をしなくても死ぬことはありませんが、どうしますか?」
「え!? 飯食えるの!?」
「はいケガラワシイ」
「それならそうと、早く言ってくれよ」
「聞かれなかったので」

 ユウナギは恨みがましい視線をナナに向けたが、彼女は気にも止めなかった。

 ゲームとPCと食べ物。これがあれば、何年でも過ごせる自信が彼にはあった。久方ぶりの食事にかぶりついたユウナギの顔は、だらしなく全体がゆるんでいた。

「6億年スイッチよりはマシか」


**********


 それから暫くは、平穏で変化のない日々が続いた。太陽が輝き始めるまで約2億年、知的生命体が生まれるまでおよそ40億年かかる予定だ。未だかつてそれほどの年月を生きた人間はいない。

 話し相手は1人しかいなかったし、時間の流れは遅々として蝸牛の如し。出かけようにも、行く先がまだ存在しない。暇こそがユウナギにとって大敵であった。

 とはいえ、やることが全くないわけではない。神としての仕事もあるし、神威アプリオリを体得するための修業もしなければならない。ただ、この時点では仕事は少なく、修業も毎日ではない。畢竟、彼の日課はほぼゲーム一色となっていた。

 ナナの天眷アポステリオリのおかげで、旧世界のちょっとしたアイテムは召喚が可能だった。素材リソースが必要なのであまり大きなものは無理だが、高性能なPCぐらいは問題ない。

 書庫アカシックレコードに保存されたアーカイヴに接続することでインターネットも使用可能だ。もちろん、メールのやり取りをする相手は存在しない。ウェブサイトやSNSなどが更新されることは今後一切ありえない。ただ、PCゲームをダウンロードすることはできた。オンラインゲームですら(人はいないが)プレイすることが不可能ではなかった。

 殆どの暇な時間を、ユウナギはゲームをして過ごした。
 オープンワールドRPG「スカイムリ」のプレイ時間カウンタがカンストするのにそれほどかからなかった。全てのクエストを消化し、あらゆるMODを試した。また、サンドボックスゲーム「メインクラフト」では巨大都市が生み出され、PCの性能が許す限り拡張された。家庭用ゲーム機も同様だ。

 ユウナギは「神威」のお陰で全地球言語をマスターしていた。世界中のありとあらゆるゲームをクリアするのに、一体どれほどの時が無駄に費やされたことだろうか。
 それほどの無駄を費やしてなお、億単位の年月はそう簡単には過ぎてはいかなかった。


**********


「それではそろそろ、本格的な『神威』の修業を開始しましょうか」

 ある日ナナが言った。
 ゲームにも飽き始めていたユウナギは素直に従った。これほどまでに暇だと、学校の授業ですら積極的に受けたいと思うようになっていた。

「これから、あなたには3億年の修業をしてもらいます」
「は!? いや、いくらなんでもそれは」
「大丈夫です。10日のうち1日だけ修業です。それを約30億年つづければ、だいたい3億年分になります」
「あー。意外とゆるいな。それぐらいなら、なんとか」

 その日から、9日休んで1日修業という、旧世界の企業戦士たちをバカにしたような生活が始まった。しかもこの修業は時間の融通が自由だった。例えば、年のはじめに1年分、36~7日連続で修業すれば、あとはずっと休みにしてもよい。具体的な修業の内容はそれほど重要ではないので、ここでは省略する。


―――――――――――――――――――
◆神の仕事
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【創世歴1億年】

 分子雲をかき混ぜてから、ほぼ1億年が経過した。ユウナギはほとんど遊んでばかりだったが、例のペースで修業した結果、この時点で約1千万年分の修業をしたことになっていた。

「……もう1億年経ったのか」
「はい。ナンデイキテルノ」

 この1億年で、この場所もかなり変化していた。そもそもここは現実世界ではない。神のために用意された亜空間のような世界で、神威アプリオリの力により自由に作り変えることが出来る。

 暇を持て余したユウナギは、力を使って大体1km四方の島を作り、その上に神の居城「天上の城」を建設した。おとぎ話の中に出てくるような中世ヨーロッパ風の雰囲気を残しつつも、どこかSF的な白亜の城だ。

「よし、この世界を『カクリヨ』と名付けよう」

 カクリヨは後に、かなり大きな世界になるのだが、この時点ではこれが限界だった。1千万年程度の修業では、神威の力もそこそこでしか無いのだ。そもそも素材リソースとなる彼の精神力が足りない。

 天上の城には、大広間、娯楽室、ゲーム室、パソコン室、食堂等、様々な娯楽施設が作られた。もちろん、神の仕事をするための執務室も設けられていた。

 それに伴い、彼は施設を管理するためのNPノンプレイヤー天使を創りだした。性能はナナより遥かに劣るロボットのようなもので、あまり複雑なことは出来ない。見た目はSF風メイドといった出で立ちだ。ただ、施設の華やかさは幾分アップした。


**********


「そろそろお仕事のお時間ですキモオタクズ」

 またある日、ナナがユウナギに言った。

「仕事っていっても、最初にかき混ぜただけだよな」
「ええ。新しい地球が安定して、生命が生まれるまでは、基本たいしてやることはありません。今日は、新地球の成分調整と軌道の修正をやっていただきます」

 ナナが手をかざすと、執務室中央の池に生まれかけの太陽系が映しだされた。視点を移動したり拡大したりして、新しい地球を中心に持ってくる。

「この第4惑星が、新しい地球(予定)です。現状だと軌道もやや内側よりで、質量も少し不足しています。このままでは旧金星のようになってしまう可能性があります」
「何かまずいのか?」
「このままでは、人間どころか生命が発生しないかもしれません」
「それはヤバイな。で、どうすんの?」
「近くにある第5惑星を引っ張ってきて、第4惑星にぶつけます」
「まじでか」
「これをこうしてこう……うまい具合にぶつければ――」

 ナナが水面にポインターを向け、動きを指示する。第4惑星を追跡するように公転する第5惑星を、一旦第4惑星の軌道上に移動させる。その後第4惑星を軌道の外側に押し出すように第5惑星をぶつけるのだ。

「――生命にとって最適な位置、生命居住可能領域ハビタブルゾーンにくるように、移動出来るはずです」

 ナナの指示にしたがって、ユウナギは例の棒を取り出し池に突っ込んだ。慎重に狙いを定め、原始第5惑星を軽くつっつく。第5惑星はゆっくりと軌道を変え、原始第4惑星に向かって突き進んだ。数十日後、第5惑星は見事第4惑星に命中。目もくらむ大爆発が起こり、2つの惑星はドロドロに融け合った。

「おおお。いいのか!? ひどいことになってるぞ」

 冷や汗混じりにユウナギが問う。問題ない、とナナが返す。

「おや?」

 面白そうに、ナナが少しだけ身を乗り出した。ユウナギが池を覗き込むと、ぶつかって溶け合った2つの星が再び分裂する所だった。2つの星はゆっくりと離れていったが、完全に遠ざかることは無く、互いに互いのまわりを周回し始めた。

「旧地球はここで月と地球に別れたのですが、これは」
「二連星……!!」
「それは恒星に適用される言葉です。惑星の場合は二重惑星と言います」

 今回の調整で、2つの惑星は、旧地球とほぼ同じ軌道、質量となった。これにより、生命誕生の確率がかなり上昇したと言ってよい。2つはそれぞれ性質の似通った双子惑星となった。

 そうして更に1億年が過ぎ、【創世歴1億9720万年】旧世界滅亡から約2億年。ついに太陽が輝き始めた。


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◆新地球誕生
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【創世歴8億年】

 小惑星の衝突も減り、第4惑星の温度が下がっていく。マグマの海が冷えて固まり始め、大地が生まれる。冷えた大気に含まれる水分が凝結して酸性の雨が降る。雨はさらに地表を冷やし、それがまた雨を呼ぶ。大量の雨はやがて、地表に巨大な海を誕生させた。

 双子星の片割れ、第5惑星もほぼ同じ道をたどっていた。

「行ってみますか?」
「もういいのか!? もちろん行くともさ!!」

 ナナの誘いにユウナギは飛びついた。
 この時点で、神威の修業は例のペースで8億年、実質8千万年になる。レベルの数値はスゴイことになっていた。

「生身で大気圏突入するのも、なかなかだな」
「まだ大気はほとんど二酸化炭素ですね」

 空を飛んだり、酸素のない大気でも普通でいられるのは神威と不老不死不滅不敗の能力のおかげだ。

 ユウナギとナナは冷えたばかりの第4惑星の赤黒い大地に降り立った。近くに海が見える。降りしきる酸性雨が頬を打つ。イカヅチが空を駆け巡り、火山が火を吹く。それでも、8億年ぶりの本物の大地は、彼の心のなかで特別な思いを喚起していた。
 時折オレンジ色の空が顔を見せ、思い出したように隕石が落ちてくる。

「見てください」

 ナナが試験管に海水をすくって持って来た。

「新しい生命の元です」

 試験管の中には太古の生命の欠片が漂っていた。ここに、新たな知的生命体誕生の第一歩が記されたのだ。
 途方も無く時間の進み方は遅かったが、それでも着実に前へと進んでいる。ユウナギにも少しだけそれが実感できた。

「あ」
「なんだ?」

 ナナの声で振り向いたユウナギの顔面に、直径30cm程度の隕石が直撃した。
 隕石の衝突は減ったとはいえ、旧世界の21世紀と比べると危険極まりない状態だ。人間に直撃するのはよっぽどの事だったが。

「危ないですよ」
「……ご忠告どうも」

 遅すぎたナナの忠告に、「感謝」を込めてユウナギは答えた。言うまでもないが、神の身でなければ彼は砕け散っていただろう。額から流れた血を拭き取ると、すぐに傷は回復した。


**********


 その後も順調に、新しい地球は成長を続けた。
 極めてゆっくりと、時が流れていく。

【創世歴10億年】原始生命体誕生。
【創世歴13億年】原核生物誕生。
【創世歴19億年】藍藻が大量発生。酸素の供給量増。

 ユウナギは神として、生命を絶やさぬために新たな地球を見守り続けた。記録し、育て、時にトラブルを解決する。
 また、惑星の環境を整えるために、惑星中に広がる環境管理システムを構築した。

【創世歴34億年】多細胞生物誕生。
【創世歴36億年】旧世界の古生代に相当。多様な生命の登場。

 それまでの第4惑星は概ね旧世界と同じような進化の道程をたどっていた。……いたのだが、この頃ささやかな変化が起こった。

「何でしょうこれは。DNAに珍しい特徴があります」

 ナナの分析によると、新世界の一部の生命体には、旧世界のものとは異なる部分があった。旧世界のDNAはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の四種類の塩基からなるが、この世界では第5、第6の塩基があったのだ。その割合は極端に低くDNA全体の0.001%程度でしかなかったが。

【創世歴37億年】
 この頃、ちょっとしたトラブルが発生していた。事件に巻き込まれたユウナギが、約1億年分の記憶をなくしてしまったのだ。

「記憶喪失!? 僕が?」

 ある日、目覚めたユウナギにナナが告げた。

「一体何が……」
「今から約1億年前、正体不明の敵が現れたのですシネバイイノニ」

 いつもの微笑で言って、ナナは続けた。

「戦いは約6千万年に渡って続きました。結果、なんとか敵を封印することは出来ましたが、あなたも大ダメージを負い記憶を失ったのです。シネバヨカッタノニ」

 本人には全く自覚は無かった。しかし、カレンダーを見ると億の単位が1つ加算されている。
 一緒に戦ったというナナも、記憶が不完全だと言う。

「……敵ってどんなヤツだ?」
「見た目は人型ですが、詳細は不明です。しかも、第5惑星の中心部に封印してしまったので、尋問も不可能です」

 第4惑星の地表にもいくらかダメージが残っていた。幾つか消えた陸地もあったようだ。生態系に致命的な影響がなかったのは幸運だった。

 ユウナギはその後しばらく「何者か」について調べたが、結局大した情報は得られなかった。真相は闇の中だ。しかし、その後何も起きなかったので、いつしかユウナギは事件があったことさえ思い出さなくなっていた。

【創世歴38億年】恐竜によく似た種族誕生。魔獣の誕生。
【創世歴40億年】
 液状亜人エミルスラ族誕生。
 群虫亜人グバ族誕生。
 竜亜人ノグアード族誕生。
 天の川銀河とアンドロメダ銀河の衝突。

 この頃、スライムから進化したエミルスラ族、小昆虫が群体となって1体の生物となるグバ族等、相次いで知性体が誕生したが、どれも文明と呼べるものは作り出せず、歴史に埋もれていった。

 そんな中、小型の恐竜から人型に進化したノグアード族は、巨石文明を築くに至った。ユウナギは大いに期待したものだったが、彼らは大暴走した挙句、世界を焼きつくして自滅した。そのせいで恐竜は絶滅し、その他の生物も大打撃を受け、ノグアードも滅亡に片足を突っ込んだ。原因は、ユウナギが彼らに不用意に知識を与えたためだった。

 彼は海外SFドラマの設定を思い出していた。

「未熟な文明に、不用意に干渉してはならない……」

 それからしばらく、ユウナギは城に引きこもったという。

 また、この時期と前後して、ユウナギはカクリヨの一部を切り離し、「冥府」を創りだした。死んだ生物の魂が集まる安息の地。いわゆる「あの世」だ。
 冥府に来た魂達は暫くの間この地に留まり、輪廻転生の準備が整い次第、順次新たな生命となって生まれ変わる。

 そんな中、輪廻のサイクルに乗らない者たちもあった。彼らは後に、精霊や死霊と呼ばれるようになる。

 さらにそれとは別に、ユウナギの干渉によってサイクルから外れる者もあった。彼は、エミルスラ、グバ、ノグアードの死者の中から優秀な者たちを選び、神の使いとして手元に置いた。彼らのことを神使ジンシと呼ぶ。
 彼らの仕事は神の手伝いをすることだ。地上のデータ収集。各種雑用。カクリヨの拡張。冥府の管理も彼らの仕事となった。

 かくして、カクリヨ、冥府を含めた天界の様相は、このように定まった。


―――――――――――――――――――
◆人類の出現
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【創世歴42億7521万年】
【人類歴1年】

 後にヒスローノと呼ばれる大陸の片隅で、それは始まった。樹上生活を送っていた猿に似た霊長類の一部が、魔獣によって草原に追いやられた。草原で生き抜くため、遠方の敵を警戒するため、彼らは直立することを覚えた。
 旧世界のアルディピテクスに近い最初のヒト族である。

「おお、すげぇ!! 二足歩行してる!! 見た目はまだサルだけど」

 報告を聞いたユウナギは、早速地上に降りてしばらく帰ってこなかった。それほどまでに待ち焦がれていたのだろう。

 そしてさらに時が流れ……

【創世歴42億7705万】
【人類歴184万年】

 ホモ・ヘルメイに相当する旧人から古代型アールヴ族が、遅れること約1万年後に古代型レアムローン族が生まれた。解剖学的には、旧世界の人類に極めて近い、新たな人類の誕生であった。


【続く】

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