3 / 3
攻略対象者達をざまぁしまして、(蛇足です。注意)
―――ああ、最悪。
それが彼女の“わたくし”としての最初の感情だった。
転生、なんていう口にすると痛々しい目で見られるものをご存じだろうか。
知ってる知らないはどうでもいいとして、これは彼女の現在の状況を指すには打ってつけの言葉だといえるだろう。
彼女はゲーマーである。何でもいいから四六時中ゲームをやってたいと公言する彼女には、一番のお気に入りがあった。それは乙女ゲーム『施錠のルピナス』だ。
平民出のヒロインが持つ鍵前に差し入れることができるのは鍵を持つ運命の相手であり、女神からの言葉でヒロインは鍵を持つ相手を探しに学園へ入ってくる。
そこで5人の青年達と出逢う。彼らは皆一様に暗い闇を抱えており、それをヒロインが接したことで晴らされ、青年達―――攻略対象者達はヒロインに恋をするのだ。
彼らといるうちに、鍵の持ち主が明らかになるのだが、それを知ったヒロインが選ぶのは……という内容だ。
攻略対象者全員を攻略すると、ハーレムエンドが見れるようになる。
結構な人気で、彼女にもこの作品について語る友人もいたものだ。
しかし、大好きな作品に転生できた彼女は全く嬉しくなかった。
何故なら、彼女の現在の名は『アリエス・エンシェリー』。攻略対象者である第一王子の婚約者にして意地悪な公爵令嬢。
所謂『悪役令嬢』だったからだ。
「エンシェリー公爵令嬢を公の場で、根拠もない悪事を働いたとの暴言の数々、令嬢への暴力行為。王族としてこれを許すわけにはいかん」
「―――よって、リヴァン・アース・ストレーゼを廃嫡とする。エンシェリー公爵令嬢との婚約も撤回しよう。今日よりストレーゼの名を棄て、平民として我国へと尽力せよ。他の者達も同様の処罰とする」
国王陛下のこの言葉を聞いた時、エンシェリー公爵令嬢―――否、前世の記憶を持つ彼女は漸く安堵することができた。
乙女ゲームにおけるエンシェリー公爵令嬢の最後は『死刑』『幽閉』『島流し』の三つのどれかと決まっている。元一般人として、人として、これほど重たい処罰はないだろう。
エンシェリー公爵令嬢として、前世の記憶を持つ者として、我が身のためにどうしても回避したかった。
それが、この結果。
画面の向こうに輝いていた攻略対象者達は、憧れたヒロインは。あの輝きの欠片もなく、間抜けで、滑稽で、醜くて。
胸が軋むような感覚を圧し殺しながら、彼女は冷めた目で元貴族達を見つめた。
……最後に、一番大好きだったメインヒーローが謁見の場から去ろうとしている。
エンシェリー公爵令嬢は無意識にも寄りそうな眉に力をいれ、顔から表情を消した。
「―――リヴァン様」
大好きだった彼が、エンシェリー公爵令嬢を睨む。憎悪しか感じられないその瞳に、彼女は逃げようとする足を無理矢理引き止めた。
―――睨まないで欲しい、その顔で。どうやったって嫌いになれない、リヴァンには。
「ずっと貴方が好きではなかった。貴方の婚約者であるのが辛かった」
大好きだった彼が、眉を寄せる。
いつもなら、呆けた顔をする大好きだった彼が。
エンシェリー公爵令嬢は唇を吊り上げた。
「あの馬鹿な女性と、末永くお幸せに」
門が、閉まっていく。
―――ガタリ。
最後に彼と、目があった気がした。
合っていたと思っていたい。
「本当にすまない、エンシェリー公爵令嬢」
「いえ……」
国王陛下の声が、全ての声が、ぼんやりと頭に浮かんでは消えていく。
―――本当は最初から、気付いていたのかもしれない。
例えば、一瞬だけ浮かんだ表情とか。
あまりにも馬鹿らしい日々の中、彼だけは嫌いになれなかったこととか。
彼女は、彼は、漸く気づいたのだ。もっと早くに知るべきだったのだ。
そうしたら、何か変われたかもしれないのに。
(いや、変わらなかった。きっと何もかも)
だって大好きだった彼は―――きっと、とても頭が良くて計画的。
(………さようなら。全く知らない、嫌いになれなかった〝リヴァン様〟)
鉄の塊だけが、彼女の意識の中で無機質に浮かび続けている。向こうは見えないのに、長年の付き合いだからだろうか。何故か何が起こっているか分かるような気がした。
世の中とは、儘ならないものである。似た者同士のことさえ、他人だからか分からない。
やっと分かれたと思えば、これだ。
けれど、案外間違っていないのかもしれない。
あの件から一ヶ月たって、ルピナス王国はさらに発展した。
婚約した第二王子との仲も良好。
唯一、元第一王子の動向だけが分かっていないけれど、きっと彼も何とかしているだろう。
何故なら、彼も彼女と同じ。何とかやれているはずだ。
そんなこと、自分勝手の彼女にとって知ったことではないが。
結局のところ、彼も彼女も、我が身第一なのだ。
エンシェリー公爵令嬢は学園の廊下を緩やかな笑みを浮かべて歩いた。
###
そっと続きを出させてもらいました。
エンシェリー公爵令嬢のお話です。
書きかけのやつを何とか仕上げたので雑なのはご愛嬌ということにしてください。
宣伝になりますが、近況ボードの方に地味に彼らの情報をのせました。ほんとにちょっとしかないです。もしよければ、お時間のある時にでも。
それが彼女の“わたくし”としての最初の感情だった。
転生、なんていう口にすると痛々しい目で見られるものをご存じだろうか。
知ってる知らないはどうでもいいとして、これは彼女の現在の状況を指すには打ってつけの言葉だといえるだろう。
彼女はゲーマーである。何でもいいから四六時中ゲームをやってたいと公言する彼女には、一番のお気に入りがあった。それは乙女ゲーム『施錠のルピナス』だ。
平民出のヒロインが持つ鍵前に差し入れることができるのは鍵を持つ運命の相手であり、女神からの言葉でヒロインは鍵を持つ相手を探しに学園へ入ってくる。
そこで5人の青年達と出逢う。彼らは皆一様に暗い闇を抱えており、それをヒロインが接したことで晴らされ、青年達―――攻略対象者達はヒロインに恋をするのだ。
彼らといるうちに、鍵の持ち主が明らかになるのだが、それを知ったヒロインが選ぶのは……という内容だ。
攻略対象者全員を攻略すると、ハーレムエンドが見れるようになる。
結構な人気で、彼女にもこの作品について語る友人もいたものだ。
しかし、大好きな作品に転生できた彼女は全く嬉しくなかった。
何故なら、彼女の現在の名は『アリエス・エンシェリー』。攻略対象者である第一王子の婚約者にして意地悪な公爵令嬢。
所謂『悪役令嬢』だったからだ。
「エンシェリー公爵令嬢を公の場で、根拠もない悪事を働いたとの暴言の数々、令嬢への暴力行為。王族としてこれを許すわけにはいかん」
「―――よって、リヴァン・アース・ストレーゼを廃嫡とする。エンシェリー公爵令嬢との婚約も撤回しよう。今日よりストレーゼの名を棄て、平民として我国へと尽力せよ。他の者達も同様の処罰とする」
国王陛下のこの言葉を聞いた時、エンシェリー公爵令嬢―――否、前世の記憶を持つ彼女は漸く安堵することができた。
乙女ゲームにおけるエンシェリー公爵令嬢の最後は『死刑』『幽閉』『島流し』の三つのどれかと決まっている。元一般人として、人として、これほど重たい処罰はないだろう。
エンシェリー公爵令嬢として、前世の記憶を持つ者として、我が身のためにどうしても回避したかった。
それが、この結果。
画面の向こうに輝いていた攻略対象者達は、憧れたヒロインは。あの輝きの欠片もなく、間抜けで、滑稽で、醜くて。
胸が軋むような感覚を圧し殺しながら、彼女は冷めた目で元貴族達を見つめた。
……最後に、一番大好きだったメインヒーローが謁見の場から去ろうとしている。
エンシェリー公爵令嬢は無意識にも寄りそうな眉に力をいれ、顔から表情を消した。
「―――リヴァン様」
大好きだった彼が、エンシェリー公爵令嬢を睨む。憎悪しか感じられないその瞳に、彼女は逃げようとする足を無理矢理引き止めた。
―――睨まないで欲しい、その顔で。どうやったって嫌いになれない、リヴァンには。
「ずっと貴方が好きではなかった。貴方の婚約者であるのが辛かった」
大好きだった彼が、眉を寄せる。
いつもなら、呆けた顔をする大好きだった彼が。
エンシェリー公爵令嬢は唇を吊り上げた。
「あの馬鹿な女性と、末永くお幸せに」
門が、閉まっていく。
―――ガタリ。
最後に彼と、目があった気がした。
合っていたと思っていたい。
「本当にすまない、エンシェリー公爵令嬢」
「いえ……」
国王陛下の声が、全ての声が、ぼんやりと頭に浮かんでは消えていく。
―――本当は最初から、気付いていたのかもしれない。
例えば、一瞬だけ浮かんだ表情とか。
あまりにも馬鹿らしい日々の中、彼だけは嫌いになれなかったこととか。
彼女は、彼は、漸く気づいたのだ。もっと早くに知るべきだったのだ。
そうしたら、何か変われたかもしれないのに。
(いや、変わらなかった。きっと何もかも)
だって大好きだった彼は―――きっと、とても頭が良くて計画的。
(………さようなら。全く知らない、嫌いになれなかった〝リヴァン様〟)
鉄の塊だけが、彼女の意識の中で無機質に浮かび続けている。向こうは見えないのに、長年の付き合いだからだろうか。何故か何が起こっているか分かるような気がした。
世の中とは、儘ならないものである。似た者同士のことさえ、他人だからか分からない。
やっと分かれたと思えば、これだ。
けれど、案外間違っていないのかもしれない。
あの件から一ヶ月たって、ルピナス王国はさらに発展した。
婚約した第二王子との仲も良好。
唯一、元第一王子の動向だけが分かっていないけれど、きっと彼も何とかしているだろう。
何故なら、彼も彼女と同じ。何とかやれているはずだ。
そんなこと、自分勝手の彼女にとって知ったことではないが。
結局のところ、彼も彼女も、我が身第一なのだ。
エンシェリー公爵令嬢は学園の廊下を緩やかな笑みを浮かべて歩いた。
###
そっと続きを出させてもらいました。
エンシェリー公爵令嬢のお話です。
書きかけのやつを何とか仕上げたので雑なのはご愛嬌ということにしてください。
宣伝になりますが、近況ボードの方に地味に彼らの情報をのせました。ほんとにちょっとしかないです。もしよければ、お時間のある時にでも。
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
砂の揺籠
哀川アルマ
ファンタジー
ハーブロート公爵家の愛人の子、レイラ・ハーブロート公爵令嬢は、典型的な我儘令嬢でどうしようもないと噂される。
義母も相当な放蕩な女で、苦労している姉のシローヌ・ハーブロート公爵令嬢に同情の声が寄せられ、ハーブロート公爵の名声は地に落ちつつあった。
王太子妃の開いたお茶会でも暴れるレイラだが…?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
初の投稿です。
楽しんでいただければ幸いです。
婚約者に毒を盛られて追放された第一王子ですが、王妃になった元婚約者の王国を滅ぼしました
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
第一王子だった俺は婚約者の公爵令嬢に毒を盛られ追放された。彼女は第二王子と結ばれ王妃になろうとしたのだ。だが王家の秘密が暴かれ王国は混乱。そして十数年後――王妃となった元婚約者の前に俺は軍を率いて現れる。これは、毒を盛られた王子が王国を滅ぼすまでの物語。
本作は「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です」シリーズの外伝的な短編作品です。
なろうでも公開している作品です。
婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
ある幸運な伯爵夫人の話
オレンジ方解石
ファンタジー
ブランシュの従姉は物語のような婚約破棄、そして魅力的な貴公子からの求婚を受けて、幸せな結婚をした。
社交界で誰からも「幸せな伯爵夫人」と讃えられる従姉。
「物語のような出来事が本当に起きると、ローズは信じてしまったのよ。愚かなことに」
その従姉が、ブランシュにだけ話した寝物語とは――――
悪役令嬢ですか?……フフフ♪わたくし、そんなモノではございませんわ(笑)
ラララキヲ
ファンタジー
学園の卒業パーティーで王太子は男爵令嬢と側近たちを引き連れて自分の婚約者を睨みつける。
「悪役令嬢 ルカリファス・ゴルデゥーサ。
私は貴様との婚約破棄をここに宣言する!」
「……フフフ」
王太子たちが愛するヒロインに対峙するのは悪役令嬢に決まっている!
しかし、相手は本当に『悪役』令嬢なんですか……?
ルカリファスは楽しそうに笑う。
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
元王子は何で捜されてたんですか?
|ω・)続きないの?(´・ω・`)
続きは今のところない予定です
でも、プロットもいつの間にか出来てましたし……もしかしたらだすかもしれないです。
その時はどうぞよろしくお願いします(*^▽^*)
感想ありがとうございました!
面白い!ざまぁされた王子様ってのが凄い!しかも計画的だし(^ ^)ええ~ショート辞めて続きお願いします!長編にしても大丈夫!
そういっていただけると嬉しいです(*^▽^*)
悪役令嬢がざまぁするまで、とかしたあとに、というのはよくあるのに、された側の話ってあんまりないなと思ってこれを書きました。
元々は連載にしよう! と意気込んでたんですけど、やりきれる自信が全くなく笑
今のところ連載はあまり予定してはいないのですが、投稿しますので、よければ見てください
感想ありがとうございました!