彼との三年よりも、僕との一生を選んでください!

キドぴゅ~★

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彼との三年よりも、僕との一生を選んでください!

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彼女は背が高くスタイルもそこそこ、
胸がぜんっぜんないのが難点w 顔もいけてる。

その女性と逢ったのは、
とある広告代理店に入社したときだった。

性格も明るくて積極的。
非の打ち所があるとすれば、彼氏がいることぐらか。

僕の対人対女性恐怖症を緩和してくれたことでも
彼女の功績は大きいw


同い年ではあるが、
上司となった彼女は仕事上で
全幅の信頼を僕に寄せてくれた。
制作スタッフは僕と彼女しかいないので、
日中、営業が外に出てしまうと、事務所は、
二人だけの世界に(ドキドキ)
男女が二人っきりで一つの部屋にいる。しかもオフィス。

思わず妄想が頭をかけずり回るが、
そこはそれ、恐怖症だから・・・・・
ところが、彼女が突然、机を挟んだ向こう側から
手を伸ばしニッコリ笑ってくる。

「?」っとか思っていると、
「ほんとに鈍いな~」とある意味きつい一言。
何かの話で僕は
「据え膳を食わない人」だという話はしていたので、
出た言葉だ。

それからは、彼女が手を出せば
その手を握り返すことはするようになったのだが、
なにしろ殆どさわったことのない女性の手である。
その柔らかさのなんともかんとも(//~//)
僕の恋心は急速にヒートアップ!

・・・・・・でもやっぱり、恐怖症(w

それからというもの彼女に誘われるまま、
映画に行ったりプラネタリュームに行ったり、
買い物に行ったり・・・・。
なぜか、茶道・花道の先生のところに、
紹介されたりw
毎日のように電話がくるようになったり。 

奥手なので、こちらからかけたことはないけど。
もうメロメロに好きになってしまった僕であった。


もともと好かれると
簡単に好きになってしまう性格(免疫がないともいう)
ではあるが、
ある日、彼女が電話で、
僕のことを「好きです」と言ってきた。

胸中は複雑である。
なにしろ彼女には三年もつきあった彼がいる。
もちろん深い仲だ。
その会社に就職してすぐのころ、
彼女から、彼のことについて、
彼の冷たさを聞かされていた。
当然、その時点では、分かれてしまえとか言えるわけもなく、
殆どその話題は聞き流していた。
僕と遊んでいるのも、
最初のうちは、彼と遊べない時間を
僕で紛らわしているんだろうと、
気持ち的には少し距離を置くことで、
なんとか自制心を保っていた。

しかし、「好きです」と言う言葉で、
僕の中のストッパーがはずれた。
「だったら、彼と別れて、僕と付き合ってください。
 僕もあなたのことが好きです。」
自分でも難しいことを言っているのは解っていたし、
この言葉で彼女が苦しむかも知れないことも想像できた。
しかし、止められなかった。
「でも、三年も付き合ってるんだよ。」
彼女は涙声だった。

「彼との三年よりも、僕との一生を選んでください!」

いくら勢いから出たとはいえ、
突飛で重すぎな要求である。
しかも僕の口からよくそんなセリフが
出てくるな~とか思った。

彼女は電話の向こうで泣きじゃくりはじめ、
「凄くうれしいよ、でもやっぱりムリだよ。」
と声にならない声を出している。

ムリなら初めから好きだなんて言ってくれなきゃいいのに、
矛の納めようがない心境と、
女の人を泣かせたのは生まれて初めてだったから、
泣きじゃくる声にもう、何も言えなくなってしまう。
彼女の方が「ごめんね」と言いながら電話を切った。

しかも次の日は会社で逢うわけだが、
どんな顔をしたらいいのか、複雑な心境でいると、
彼女もバツが悪そうにしている。

僕の方から、
「昨日は電話でムリ言ってすみませんでした」と謝った。

でも、やっぱり心の矛は納められていない。
「でも、諦めたわけじゃないですから。
 本気で好きですから。」


彼女が、僕が好きで時々買っていた科学雑誌「ニュートン」を
自費で年間定期購読を申し込んだ。
それは困ると言ったのだが、
「仕事の資料にもなるから、いいの」と言って、
すでに申し込んだ後だった。
他にも、これまでイラストを発表する機会の無かった僕に、
知り合いに頼んで、同好会の展覧会に
作品を出展するチャンスをくれた。
出展には、彼女がサークルで書いた小説をテーマにしたものを
一点も含めてこっそり描いて展示した。
展示が終わったときが丁度、彼女の誕生日だったので、
その時にプレゼントした。
そして、運命の時。


会社の慰安旅行で、会社が保有する別荘に
一泊することになった。

料理は、営業の数人と、彼女が作ったが、
初めて彼女の手料理を食べて、わりと美味かったのに感動。

深夜まで、みんなで騒いで、就寝となった。

女性は彼女だけだったので、2階にある寝室の一部屋を
彼女一人が寝るようにみんなで申し合わせていたのだが、
その部屋に酔っぱらった上司が
先に上がり込んでグッスリ眠りこんでしまった。

で、仕方なく男性陣が雑魚寝する部屋で彼女も寝ることに。
自然に僕の隣で寝る流れになる。
ほとんど拷問であるw

すぐそばに結婚したいほど好きな女性が寝ているのだ。
しかし、すぐ反対側には営業の方たちが寝ている。
悶々と眠れぬ夜が明けて、気付いて見たら疲れ果てたのか、
僕も寝ていた。
みんなが起きたのも気付かなかったほどだ。


朝、他のみんなが一階で、朝の談笑にふけっているときに、
ごそごそと起きあがり、僕も一階に下りようとしたら、
彼女が上がって来て、
僕を一人で寝るはずだった部屋に連れて行く。

「よく眠れた?」
「ん~、まあまあ・・・」

興奮して眠れませんでしたなんて言えるはずがない。

ふと外が気になったので窓の外に目をやると、
いきなり彼女が「何何?」といいながら、
一緒に窓の外をみる。
しかも狭い窓でもないのに、
僕に体をすり寄せるようにして。

女性の手、以外に触れるのは多分幼稚園の時以来である。
心臓が飛び出しそうになった。

もう頭の中は真っ白である。
そんな僕の胸中を知ってか知らずか、

・・・いや、彼女は解っていたと思う。
こちらの心臓の鼓動が伝わるほど、
彼女は私に体を寄せていたのだから。

これはサインだ!

直感した。

ハグするチャンス。

いや、それどころかキスだってしちゃっていいかも!


映画で寅さんの言ったセリフが思い出される。

『男は本当に愛していたらヤラねぇんだ。』

ハグくらい、いいじゃん。キスだって許してよ。
心は葛藤の渦。
男です。
美人を前にして、いやしかも、
据え膳食わぬは武士の恥(武士じゃないけど)
やりたくないわけがない。


でもできなかったです・・・・。
何も・・・・。

僕は本当にこの人を幸せにできるのか?
この人を苦しめるのではないか?
我が実家の特殊性(クリスチャンだってこと)を
理解してくれるだろうか?
この人との子供ができた場合、
ちゃんと育てる自信はあるのか?

今考えれば、ほんとどうでもいいようなことを、
考えまくって、
「好きです」と石橋を叩いておいて、
やっぱり怖くて渡れない・・・・。

そのうち、下にいた営業が上がって来る気配がしたので、
彼女はさっと身を離して、部屋を出て行った。
顔は見えなかった。

僕はもしかしたら、
とんでもない恥を彼女にかかせたのではないか?
瞬間に不安が頭をよぎった。

僕は自分の都合を優先して、彼女を傷つけたのか!?


下に降りてみると、彼女は炊事場で朝食の準備をしていた。
僕に顔を合わせてくれない。

不安は的中した。

以後、会社でも彼女は人が変わったように、
僕を無視するようになった。

あまりの変わりように、為す術もない。

それほどに彼女を傷つけたのか・・・・


彼女の態度が仕事にまで影響し始めたことを感じた僕は、
その会社を退職することにした。


僕の送別会。

彼女は来ないかと思ったが、来てくれた。
少し、優しさが戻っているようにも見えた。

しかし、僕の気持ちは重いまま、みんなと別れた。


一年後、彼女はその三年付き合ったという彼氏と結婚した。

僕は結局遊び相手でしかなかったのか・・・。
心をもてあそばれただけなのか・・・・。


その、二年後、僕は彼女がいなくなった会社の上司に、
戻って来てくれないかと誘われて、再入社した。
歓迎会の席、上司から彼女の胸中を聞かされた。

心は決めていたのだと。

僕が積極的に彼女をリードしていれば、
彼と別れて、僕との結婚を考えていたのだと。


彼女は結婚後、収入の少ない彼との生活のために、
寮でしばらく生活し、
今は小さな居酒屋を夫婦で経営しているのだと。


後日その店に訪ねてみた。

当時のままの明るい彼女がそこにいた。

僕はなぜか、ホッとした・・・。
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