上司が猫を脱いだなら。

yuzu

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メロい上司の秘密を知ってしまった瞬間

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 タイルカーペット敷きの廊下を静かに……けれど小走りで資料室に向かっていた。
 暖房の消された廊下はまだすこし暖気が残っている。けれど、薄着では身震いしてしまうくらいの寒さだった。
 突き当りの資料室まであと数メートルのところで、ふと足を止めた。

 会議室から、誰かの不穏な声が聞こえてきたからだ。

「ああ、大丈夫だ。一人問題児がいるが……企画営業部から外して第5倉庫係窓際業務に回す予定だ。あ?移動時期ではない?……んなもん、なんとでもなるだろ。使えない人間は、企画営業課には必要ない。もっとやる気のある人間を回してくれ。」

 心臓に悪い話をうっかり聞いてしまった。
 (企画営業課で問題児……?……使えない、人間?)

 誉……は、口は悪いけれど成績優秀。
 澤部……は、入社3か月で提案した企画が商品化。期待されている存在。
 同僚はみんないい人ばかりで、仕事ができる人ばかり。
 
 企画営業部は花形部署で、優秀な人間しかいない。
 
 ……私を覗いては。

 入社してすぐの新人社内コンペで入賞したのはまぐれだって噂は、本人である私の耳にも入ってる。

 あの時商品化したのは「くまさんちのごちそう ホテルメイドのbarecurry」。

 材料コストの面から商品化まではいかなかったけれど、上層部の一部から高評価だったと、賞をいただいた。

 わかってる。あれはまぐれだった。入社から3年がたつけれど、いまだなんの成果も上げてない。
それに、営業だって他社に負けてばかりで、新規の契約も取ってこれない。

 営業企画課には、いらない人間なのかもしれない。

 でも……

 「あの……、今の話。私の事ですか?」

 思い切って会議室の扉を開けた瞬間、絶句した。

 「……は?あー……聞かれたか。」

 その声の主は、私のよく知っている人。

 「聞かれたなら話は早い。企画営業課から移動になるから。」

 その声の主は、優しくて人当たりもよくて……

 「おい、聞いてる?」

 私の推し、王子みたいな容姿で癒し系ショタ男子。

 「黒木係長……今の話は……というか、今話していたのは本当に」

 首を傾げて見せたのは、いつもの優しく微笑む彼なんかじゃない。
 悪魔みたいに冷たい目をした男。

 「本当に、あなたは黒木係長ですか?」





 
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