恋が温まるまで

yuzu

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#13 すれ違う二人

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「……何を信じたらいいんですか?」

 視線も合わせずに吐いた言葉は、田上さんを困らせるには十分だった。

 恋をしなければ、こんなに傷つかずに済むし、傷つけずに済んだんだ。

「……もしかして、給湯室で話していたことを聞いてた?」
 
 答えずにいると、田上さんは空を仰いでため息をついた。
 
「俺と、磯崎さんの関係は……」
「ごめんなさい。」
「え、美亜?」

 その先は聞きたくなくて、田上さんの言葉を遮った。

「お試し期間……終わりにしてください」
「ちょっとまって」
「よく考えたら、お試しって不健全ですよね。それに私、恋愛に向いてないんです。」
「美亜……」
「それに、社内恋愛禁止ですよ?だから私たちの関係は、無かったことに。」

 捲し立てる様にそう伝え終わると、田上さんの返答を待たずに頭を下げた。

「では。仕事の時間なので、これで。」

 私たちはそもそも、恋人同士じゃない。

 『お試し』でそばにいただけの関係。

 だから、田上さんが誰と会おうと、誰とデートしようと、私が口を出すことじゃない。

 それでも——胸の奥は苦しかった。

 磯崎美優と田上さんがデートをする。それを止める権利なんて私にはない。

 けれど、中途半端に側にいて傷つくなら、私から離れようと思った。

 本当は"私を選んで"って言いたかった。けれど、選ばれる自信なんて少しも無い。

(本当の恋人だったら、こんなに不安にならなくてよかったのかな。)

 
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