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#14 殴り込み
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ネーブルホテルのBAR『ルミエール』についた頃、私たちは完全に出来上がっていた。
暖色系の間接照明が大理石のカウンターを優しく照らし、BGMのジャズピアノが心地よく響いている。
「あ......」
入り口から少し奥を見回すと案の定、田上さんと磯崎美優の姿がカウンター席にあった。二人は何か真剣な表情で話し込んでいる。時折、磯崎美優が軽いボディタッチをしながら微笑していて、苛立ちが募る。
「ビンゴーーー!」
円香が興奮ぎみに私の腕を軽く叩いた。
「本当にいる......」
声が大きくなってしまい、円香が慌てて私の口を塞ぐ。
「美亜、声!」
「らいじょおぶ。あそこの奥のボックス席にいっちゃおう!」
円香を引きずる様に、カウンターから少し離れた薄暗いボックス席に腰を下ろした。
ここからなら二人の様子を見ることができるけれど、こちらの存在には気づかれにくいはずだ。____そう思った。
「何飲む?」
「梅酒ソーダ!強めで!」
「美亜......」
「何?偵察には燃料が必要でしょ?」
円香は苦笑いを浮かべながら同じものを注文した。
運ばれてきた梅酒ソーダを一気に半分ほど喉の奥に流し込むと、体の芯からじんっと熱くなった。アルコールが血管を駆け巡るにつれて、さっきまでの不安や躊躇いが薄れていく。
「で、どんな感じ?あの二人」
身を乗り出してカウンターの方を覗き込む。
田上さんは背筋を伸ばして座り、いつものように真面目な表情で磯崎美優の話を聞いている。一方の磯崎美優は......
「見てよ、あの距離感!完全にパーソナルスペース侵入してるじゃない」
円香の声がまた少し大きくなる。
確かに、磯崎美優は田上さんとの距離を縮めるように身を寄せていた。時折、田上さんの腕に軽く触れるような仕草も見える。
「田上さん狩られそう。」
よく見ると、田上さんの表情は少し硬く、グラスを持つ手も緊張しているように見えるけれど、円香は興奮気味に実況中継する。
「あ!また触った!」
磯崎美優が顔を近づけて、何かを耳元で囁いている。その瞬間、田上さんが明らかに身を引いた。
私はテーブルを軽く叩く。
「美亜、気づかれちゃう......」
「だって、見てよ!」
グラスを傾けながら、私の口調がだんだん激しくなっていく。
「あの子やっぱり!。」
「美亜......」
「一言行ってやんなきゃ!」
アルコールの力で、普段は心の奥に押し込めていた感情が次々と溢れ出してくる。
カウンターでは、磯崎美優が田上さんの手に自分の手を重ねているのが見えた。田上さんは慌てたように手を引こうとしているけれど、磯崎美優は離そうとしない。
「はい、限界!」
円香は勢いよく席から立ち上がった。
「円香?」
「行くよ。」
「え、でも......」
「偶然を装うなんてまどろっこしいことしてる場合じゃない。あの子に田上さんを渡すわけにはいかないじゃん」
大股でカウンターに向かって歩き出す。もう、いつもの臆病な自分はどこかに消えていた。
暖色系の間接照明が大理石のカウンターを優しく照らし、BGMのジャズピアノが心地よく響いている。
「あ......」
入り口から少し奥を見回すと案の定、田上さんと磯崎美優の姿がカウンター席にあった。二人は何か真剣な表情で話し込んでいる。時折、磯崎美優が軽いボディタッチをしながら微笑していて、苛立ちが募る。
「ビンゴーーー!」
円香が興奮ぎみに私の腕を軽く叩いた。
「本当にいる......」
声が大きくなってしまい、円香が慌てて私の口を塞ぐ。
「美亜、声!」
「らいじょおぶ。あそこの奥のボックス席にいっちゃおう!」
円香を引きずる様に、カウンターから少し離れた薄暗いボックス席に腰を下ろした。
ここからなら二人の様子を見ることができるけれど、こちらの存在には気づかれにくいはずだ。____そう思った。
「何飲む?」
「梅酒ソーダ!強めで!」
「美亜......」
「何?偵察には燃料が必要でしょ?」
円香は苦笑いを浮かべながら同じものを注文した。
運ばれてきた梅酒ソーダを一気に半分ほど喉の奥に流し込むと、体の芯からじんっと熱くなった。アルコールが血管を駆け巡るにつれて、さっきまでの不安や躊躇いが薄れていく。
「で、どんな感じ?あの二人」
身を乗り出してカウンターの方を覗き込む。
田上さんは背筋を伸ばして座り、いつものように真面目な表情で磯崎美優の話を聞いている。一方の磯崎美優は......
「見てよ、あの距離感!完全にパーソナルスペース侵入してるじゃない」
円香の声がまた少し大きくなる。
確かに、磯崎美優は田上さんとの距離を縮めるように身を寄せていた。時折、田上さんの腕に軽く触れるような仕草も見える。
「田上さん狩られそう。」
よく見ると、田上さんの表情は少し硬く、グラスを持つ手も緊張しているように見えるけれど、円香は興奮気味に実況中継する。
「あ!また触った!」
磯崎美優が顔を近づけて、何かを耳元で囁いている。その瞬間、田上さんが明らかに身を引いた。
私はテーブルを軽く叩く。
「美亜、気づかれちゃう......」
「だって、見てよ!」
グラスを傾けながら、私の口調がだんだん激しくなっていく。
「あの子やっぱり!。」
「美亜......」
「一言行ってやんなきゃ!」
アルコールの力で、普段は心の奥に押し込めていた感情が次々と溢れ出してくる。
カウンターでは、磯崎美優が田上さんの手に自分の手を重ねているのが見えた。田上さんは慌てたように手を引こうとしているけれど、磯崎美優は離そうとしない。
「はい、限界!」
円香は勢いよく席から立ち上がった。
「円香?」
「行くよ。」
「え、でも......」
「偶然を装うなんてまどろっこしいことしてる場合じゃない。あの子に田上さんを渡すわけにはいかないじゃん」
大股でカウンターに向かって歩き出す。もう、いつもの臆病な自分はどこかに消えていた。
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