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第6話 これが俺の生き様だ!
しおりを挟むロイドさんとは少ししか交流はなかったけど、仲間意識だってあった。
だからロイド機が崩れ落ちた時、悲しみがあった。
でも、それは最初に思ったことじゃない。
――――――― 俺じゃなくてよかった ―――――――
最初の攻撃が俺に向いていたら、無残に殺されていたことだろう。
ロイドさんが少しだけ粘ってくれたおかげで、グルディアスの動きについていけてるのは間違いない。
それでも、悲しむ前に自分じゃなくて良かったと思うなんて、俺はどんだけ酷い奴なんだと感じてしまう。
確かに戦場では切替も重要だろう。
悲しみに暮れていたら、あっさり殺されていたかもしれない。
俺が今生き延びているのは、感受性が低いからなんだ。
ああ、俺は酷い奴だ。認めるよ。
他人よりも自分の事が、ずっとずっと大切なんだよ。
この先の人生もこんな感じなのかもな。
でも違う未来を見てみたいとも、ちょっとだけ思ったりするんだ。
誰かの為に生きる。
別にそんな姿に憧れてるわけじゃない。
今の自分からは全然想像できないよな。
むしろ笑っちゃうよ。
俺はこれからも、みっともなく我儘に生きていくんだろう。
でも絶対に生き抜くんだ。
自分のために、自分らしく。
――――――――――――――――――――――――
「これで終わりだ!!」
剣が無くては攻撃を防ぐ手段はない。
でもまだ死にたくねえ。
コックピットだけでも守らなきゃ。
腕を使って防御する。
「この野郎! なんて装甲だ!」
グルディアスはロイド機を破壊した時と同じように、斜めに攻撃してきた。
だけど、何故か俺の機人に大鎌は刺さらない。
グルディアスは警戒したのか、一旦後方に跳躍する。
「イステル・アルファはただの量産機のはずだ。だったら、おかしいのは乗ってる奴か。おい、お前。名前はなんだ!」
「いう訳ねーだろ、馬鹿」
ここで助かっても、指名手配になるかもしれないんだからな。
俺に戦士の誇りとか期待すんなよ。
「言わねえつもりか。まあいい。どうせ、もうすぐ死ぬんだからな」
グルディアス機は再び大鎌を振るってきた。
さっきと同じように攻撃は通じない。
理由は分からないけど、これなら勝機はある。
ただ気になるのは、さっきと違って大振りじゃないことだ。
何か狙いが……
「って、やべえ。肩装甲が外された?!」
元々自分たちの装甲機人なだけあって、構造を理解してるってか。
確かに装甲を傷つけることはできなかったからな。
攻め方を変えてきやがった。
「そらっ、もういっちょ!」
狙いは胴体との接合部か?
俺は機人を横でも後ろでもなく、前に進めた。
距離を詰めれば、相手は窮屈になるだろってことだ。
俺の選択は予想外だったのか、激しい衝撃音を鳴らし、両機はぶつかりあった。
そのおかげか、まだ切断されていない。
「この野郎! 離れろ!」
「ぜってぇ嫌だ!!」
俺は左腕をグルディアス機の腰にまわして掴んだ。
超近距離で腕をロックさせれば、大鎌は性能を発揮できないはずだ。
「くそ、離れねえ。量産機でこのパワー、なんて奴だ。てめーはここで潰す!!」
「うおぉぉ!!」
「けど、やっぱ甘めーよ」
グルディアスは急に落ち着き払った声になった。
思わず冷や汗が流れ落ちる。
なんだか左肩の辺りから、ガリガリ音が聞こえてきた。
視線を左に向けると、赤く光る楕円形が見えた。
一度は止めた大鎌の刃が、その場でチェーンソーみたいに高速で回転してるんだ。
このまま削り取るつもりかよ。
「バラバラに刻んでやるよ!!」
それは困る。
回転する大鎌はコックピット目がけて、左鎖骨の辺りから斜めに侵入をしようとしてくる。
操者に対してのダイレクトアタック!
でも、今の状況は俺にとっても悪くないんだ。
何故だか知らないけど、俺のイステル・アルファは凄く硬い。
削りとられるまで、少しだけ時間があるはずだ。
俺は機人の右腕を真横に伸ばした。
その先にある物を掴むために。
「ははっ、仲間が積み込んでなくて助かったぜ」
「そ、それは!!」
「そうさ、これは俺たちが発見した赤光晶の塊りだよ。当然知ってるよな。純度の高い赤光晶は、合金に混ぜたものより遥かに硬いことをさ」
機人を通して触れた赤光晶は、眩い輝きを放つ。
俺は尖った先端部分を、グルディアス機のコックピットに向けた。
グルディアスも、それを防ごうとする。
「コイツ、これで俺を!!」
互いの武器が互いのコックピットを狙い、防ごうとする。
千日手ってやつだよ。
このままなら、決着はいつまで経ってもつかないだろう。
パワーが互角ならな!
「うおぉぉ!!」
敵の大鎌が迫ってくる中、恐怖を押し殺して意識を両腕に集中した。
ここを逃したら、俺に勝機はなくなるだろう。
コイツは警戒を深めてくるに違いないから。
左腕は暴れる敵機を必死に掴む。
絶対に離してたまるか。
「くそっ! 俺が、アスラレイドの俺がこんな奴に!!」
「知らねえよ! 自慢するならあの世でやりな!!」
赤光晶がグルディアス機の胴体を刺さっていく。
直後、聞こえてくる断末魔。
機人は光を失い、同時に動力源を失った。
「やった……のか?」
あっぶねー、つい生存フラグを言うところだったぜ。
強引にコックピットを開いて、中を確認する。
血塗れになってダランとしてる男の姿が見える。
どうやら完全に決着はついたようだ。
でも、嬉しい気持ちなんて、ちっとも沸いてこない。
俺は生き残り、初めての戦闘に勝利した。
同時に初めて人を殺した。
以前の俺だったら、良心の呵責に苛まれていたかもしれない。
でもここは異世界で、こうしなければ自分が死んでいたんだ。
鉱山でも仲間たちが死んでいく姿を見た。
ロイドさんも目の前で殺された。
この世界に馴染んてきてるのを実感する。
そうじゃなきゃ、俺が死んでいたと思う。
それでも罪の意識はあるんだぜ?
なんだかんだいって、まだ半年くらいだしな。
グルディアス……恨むなよ、なんて言わねえよ。
お前がどんな奴かなんて知らねえけど、恨んでくれて構わない。
好きに思っててくれ。
そうじゃなきゃ、やってらんねえだろ。
知ったこっちゃないけどな。
「さあて、皆を追わなくちゃな、って嘘だろ?! 全然動かねえ」
限界を超えて無茶をさせてしまったのだろうか。
機人はまだ輝いてるけど、コックピット周りだけだ。
搭乗したのも初めてだし、原因なんて考えても分かるはずない。
でも、ここがどこだか分からない以上、徒歩での移動なんてありえない。
一番近くの街でもどれだけ時間が必要か分からないんだから。
「それなら、あっちに移ればいいんじゃない?」
「そうだよな、グルディアスの機人しかないけど、動くかぁ?」
……って、ちょっと待て。今の声はなんだ?
無線じゃなかったし、近くに誰かいるのか?
コックピットから身を乗り出して、あちこちに目を向ける。
でも、声の主は見つからない。
「そっちじゃないよ、こっちだよ」
なんだか馬鹿にしてるような、
それでいて楽しんでいるかのように声が弾んでいる気がする。
うん、こういう時はアレだ。
「聞かなかったことにしよう。さて、向こうに移るかな」
「むっかー! ちょ~と待ちなさいよ、このアンポンタン! こんなにプリチーでキュートな私を無視するんじゃないわよ!」
「俺の心は色々あってショート寸前なんだよ。軽いノリで突っかかってくるな。あと用があるなら姿を見せろ」
「わがままな男ね~」
直後、俺の目の前が光りだし、声の主が姿を現した。
人間の身体に蝶々のような羽、身長は5cmくらいだろうか。かなり小さい。
まるでおとぎ話の妖精みたいだ。
でも、妖精にあたるこっちの単語なんて、俺は聞いた事がない。
どう表現したらいいんだろうか。
なんとか知ってる言葉で試みる。
「なんか、元イモムシって感じだな」
「い、いじめっ子だわ! 好きな女の子をいじめようとするアレだわ。でもごめんなさい。あなたの事、タイプじゃないので」
「微妙にポジティブな返しだな、おい。まあいい、俺は今、長話をしている時間がない。話があるならちょっと待っててくれ」
「は~い。それでね~」
話が通じていないのか、妖精もどきは俺の周りを器用に飛びながら話しかけてくる。俺はそれを無視してグルディアス機に移って、動くかどうかの確認することにした。
つーか、コックピットが血だらけで、ホント嫌なんだけど。
もう一機はロイドさんが派手に壊したから、調べるまでもない。
しゃーない、背に腹は代えられないよな。
グルディアスの固定具を外すと、目を瞑って放り投げた。
「細かいとこは違うけど、だいたい同じだし、問題なさそうだな。さて動くかどうか。頼むぜ」
赤光晶の球体に触れると、機人に赤い線が広がっていった。
どうやらまだ生きているようだ。
それにしても、イステル・アルファより静かなのにパワーを感じる。
アスラレイドのグルディアス。
ひょっとしたら、ホントに有名な奴で、この機人は専用機とか指揮官機なのかもな。
「今は考えてる場合じゃねえか。動くんならさっさと荷物を移さなきゃ」
この機人は外から来たからな。ひょっとしたら応援を呼んでいたかもしれない。
まあ、荷物といっても大したものはない。
俺の機人から水と食料を移すくらいだ。
コイツの無線機は、一応外しておくか。
技術水準は分からないけど、センサーとかで追跡されたら困るしな。
「それとアレも持っていく方がいいよなぁ」
トドメに使った赤光晶の塊り。
この場に残して、リグド・テランの連中に使われるのは危険な気がする。
ところが、辺りを見渡しても見つからない。
俺の機人が握っていたはずなのに、どこへ消えてしまったというのか。
だけど悠長に探している時間はない。
「仕方ない、諦めて行くとするか」
目的地は自由都市同盟ロジスタルス。
進路は車の轍が教えてくれる。
「ええ、出発しましょ!」
「付いてくるのかよ!」
「なんだか、あなたと一緒にいなきゃいけない気がするの。で、でも勘違いしないでよね! あなたのことなんか好きじゃないんだからね!」
「うぜぇ……」
よく分からん経緯を経て、よく分からん生物と同行する事になった。
まあ、いいさ。今は騒がしいくらいの方が心が落ち着くから。
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