聖女の御旗に集え!! ~ こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!

犬猫パンダマン

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第29話 副長に褒められた!

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「さて、全員集合したね」

 傭兵団の操者が揃った事を確認すると、団長は決戦についての説明を始めた。

「おやっさんたちが機人の背部に照明器具を取り付けたのは見てたね。あれは作戦時での自分たちの担当するエリアを表している。色によって違うから、万が一、仲間とはぐれた場合には、自分と同じ色の奴らと一緒に行動するんだよ」

 前回の決戦があったのは今から十四年前、団長が二十一歳の頃だという。
 団長はその時には、既に傭兵を引退していたけど、復帰して戦っていたらしい。
 副長ですら十一歳の子供だったし、リンダたちに至っては物心ついてるかどうかってくらい。

 彼らは、真剣な表情で話している団長とは反対に、リラックスしているように見える。団長は前回を経験している分、怖さを理解しているのだろう。

 でも団長は注意したりはしない。
 実際にその場にいなければ分からないだろうし、勢いってのは若者の特権だから。

 俺はどうだろうか。
 緊張もあるけど、不思議と落ち着いてる感じだ。

「剣星、ボケっとしてるんじゃないよ」
「……すみません」

 リンダとルシオは俺のほうを見ながら、笑いを我慢してる。

「それじゃあ、今から作戦を伝えるよ。目的はラヴェルサの地下プラントに、聖女様の乗った聖王機と、ラグナリィシールドを中心とした護衛部隊を送り込むこと。私達はそこまでの道を確保して、聖女様が戦うことなく、奥まで進めるようにするんだ」

 副長が一歩前に出る。

「まず最初に帝都を出発する部隊が、担当エリアの敵の掃討を行う。終わり次第、左右二列に分かれて、後続のための進路を確保する。これにより後続は安全な道を通って自分の担当エリアまで行く事が出来る。担当エリアの敵を掃討し左右に分かれて道を作る。基本はこれの繰り返しだ」

 なるほどな。

 飛行機の滑走路のように光で道を作るってことか。奥地に行くほど敵が強くなるんだから、なるべく戦力を温存しようって考えだろう。

 この方法なら霧で遠くの光が見えなくても、だいたいの進行方向は分かる。最近の出撃で照明器具を地面に埋め込んでいたのもその一環だろうけど、色が少し違うのは、地面が削られる可能性を考慮して、保険の意味合いが強いのかも。

「全軍は戦闘力などによって、十の部隊に分けられ、各地に配備される。本決まりではないが、我々は第八エリアになるとの話があった」

 副長の言葉にリンダたちはざわつき始めた。

「なんか俺達って結構期待されてない?」
「もっと楽なとこが良かったな~」
「そんなこと言わずに頑張ろうよ」

「我が傭兵団は少数ではあるが、精鋭部隊と判断されたということだ。他の部隊に比べて実戦の機会が多かったことも考慮されたのだろう」

 ルシオとフォルカが頭に疑問符をつけている。
 同時にリンダが俺の事を指さした。

「あんたたちは別だったから知らないだろうけど、剣星が来てからは、殆ど毎回戦闘があったの。その分、ボーナス沢山もらえたからいいんだけどね」
「ずっりいな、もっと早く組みたかったぜ」
「きっと、普段の行いの違いね」

 騒がしくなったところで、団長が表情を強張らせているのに気づいた。
 みんなも、そうだったんだろう。
 途端に静かになる。

「どのエリアも重要だが、第八エリアの防衛には特別な意味がある。ここには最後の補給基地が設置される予定だ。これは絶対に死守しなくてはならない。我々は少数故の機動性を活かしてエリア内を駆けまわり、中央通路への侵入を阻止するのだ」

 過去の記録から、決戦時の戦闘は長時間に及ぶと予想されている。装甲機人の稼働時間に限界はないと言っていいけど、だからといって無限に戦い続けるのは、操者の体力的に不可能だろう。

 それに敵機の数を考えれば、回避できずに防御を選択することも多くなる。普段よりもダメージを受けるだろうから、コーティングする必要も出てくる。そうしなければ、ラヴェルサの影響の強い霧を吸収して、装甲機人が思うように動かなくなってしまうからだ。

 だけど、戦場でコックピットを開けて作業するなんてのは現実的じゃない。そのため、コーティング剤を噴射する装置を装備した補給部隊も配置されているらしい。彼らは補給基地を拠点に活動するから、継戦能力の維持のためにも絶対に基地を失ってはならない。

 仮に破壊されたとすれば、新たに帝都から物資を運んで補給基地を再構築することになる。戦闘時間が増え、作戦はさらに困難になるだろう。

 作戦の説明が一段落した所で、俺は疑問に思っていたことを口にした。あれ以来ずっと気になっていたんだ。

「あの、リグド・テランの動きはどうなんでしょう。あれから動きは見えないけど、ラヴェルサとの戦いの時に介入してくるってことはないんですか?」

 俺の問いに答えたのはカラルド副長だ。
 教会にいる友人の話、と前置きして語り始めた。

「リグド・テランは確かに無人機であるラヴェルサと同盟しているような動きをする。それは歴史を見ても明らかだろう。だが、これまで一度も決戦に介入した事は無い。その可能性は低いと見ている」

 これまではない、ってそれは保険にはならないだろう。
 今回は違うかもとか考えないのか?

「その要因は大きく分けて二つある。第一にラヴェルサが狂暴化するためだ。普段襲われることのない彼らであるが、この時期だけは被害を受けてしまうことが判明している。そのため彼らは戦力を西側に移動させているんだ。彼らにしてみれば、ラヴェルサが我々の戦力を削ってくれる状況だ。それを敢えて邪魔する理由はあるまい」

 なるほど、聞けば確かに納得できる。
 最近は今までよりも攻撃性が増していると実感してるし。

「二つ目、それは我々教会勢力がラヴェルサに勝った事はないが、一時的に沈静化させることは必ず成功させているからだ。聖女が諸悪の根源であるラヴェルサの地下プラントを破壊できればベストだが、これまでも成功していない。だが聖女が近づくことで、ラヴェルサを沈静化させることができる。沈静化したラヴェルサは地下プラント付近に戦力を集中させ、その他の地域に出現する事は一切なくなる」

 仮に俺達が勝利に近づいたとすれば、介入してくる可能性もあるのだろうか。
 ひょっとしたら、リグド・テランはどこかで様子を窺っているのかも。
 介入がないってことは、そこまで辿り着けてないのがこれまでの戦いなんだろう。

「沈静化させた後、仮に我々の戦力が残っていたとしたら、地下プラントの破壊のために、東側諸国は西進することだろう。それはリグド・テランにとって許容できることではない。だからラヴェルサのいなくなった地域をリグド・テランが防衛するんだ」

 つまり、この作戦は地下プラントを完全に破壊する大勝利は難しく、ラヴェルサを沈静化させるだけでも勝利に値するということだ。俺にとっては納得できないことだけど、この世界の人たちにとっては、それでも泣くほど嬉しい勝利ってことなのかもしれない。

「はーい、それだったら、わざわざ防衛するんじゃなくて侵攻してきてもいいんじゃないですか? こっちの戦力は激減してるだろうし」

 リンダの言う事は尤もだ。一度で全ての国を倒せなくても戦力を減らせれば、次回以降の戦いで有利になるはずだ。

「では、仮にリグド・テランが教会勢力を呑み込んだと考えよう。彼らは広大な地域を手に入れた。ただし内部にはラヴェルサという爆弾を抱え込んで、ということになる。周りに敵のいなくなったラヴェルサはどう動くのか分からない。そのまま放っておくという選択肢はないはずだ。となると、防衛に多大な労力と予算が必要になる。そしてそれを維持するには彼らは敵を作り過ぎたんだ。もちろん教会勢力を打倒した後に、ラヴェルサを討伐するという選択肢がない訳ではないが、その可能性も低いだろう」

「なんかあいつら西の方でも戦争してたって教会で習った記憶があるな」

「その通りだ。だったらラヴェルサの相手は我々教会勢力に任せて、自分たちは最低限の労力で済ませようというのがリグド・テランの戦略だと推測されている。西側はこちらより霧が薄く、装甲機人もほとんどないと聞いているが、その分、異なる発展を遂げているらしい。彼らにしても我々に戦力を集中できない理由があるということだ」

 そうか、俺は自分たちの都合だけで考えていたけど、相手にだって都合があるんだよな。

「……だったら、リグド・テランは国境侵犯なんてしてきたんでしょう?」

 彼らに余裕がないなら、わざわざ教会勢力を挑発するようなことをするはずがない。マグレイアとかいうアスラレイドは確かに怒りに満ちていたけど、作戦自体はちゃんとあったみたいだし、何か理由があるはずだ。

「それは彼らに聞くしかないな。ただ、これは噂なんだが、上層部の方でなんらかの政治取引があったのではないか、とは言われている。大事を前にして余計なものを抱え込みたくはないのだろう」

 一瞬、副長の鋭い視線を感じた気がする。
 作戦以外のことを聞くなってことなのか?

「さ、そろそろお終いにしな。私たちは傭兵だ。どんな状況だろうと戦うだけさ。でもそのためには無理にでも休んで明日に備えるんだよ」

 団長の言葉で解散となった。
 今日も出動と機人のチェックで皆、疲れた表情。
 戦闘に影響していないのは、しっかりと休んで体力を回復させているからだ。
 いつもより身体に負担がかかっているのは間違いない。
 俺も部屋に戻って休むか。


 ————————————————


「それでその作戦ってのはいつ始まるのよ」

 部屋に戻るなり、レトにミーティングでの出来事を伝えることになった。
 レトは戦闘時には一緒にいるけど、長話になりそうだと面倒なので逃げて行く。
 それなのに内容は聞きたがる。
 俺にとっても理解度を深める作業になってる感じかな。

「さあな。いつでもいいけど、俺としては雨とか嵐の後がいいかな」
「そうなの?」
「地面が濡れてたら滑りやすくなるけどさ。それよりも霧の中からいきなり攻撃される方が嫌かなって」

 攻撃タイミングは教会の偉い人が見計らっているんだろうけど、どっちにしろアルフィナたちの準備が整ってからだろうな。ベッドに寝転がりながら、レトと話しているとドアをノックする音が聞こえてきた。

「(ちょっと静かにしてろよ)」
「(仕方ないわね~)」

 少しだるい体を起こして、玄関に向かう。
 そこにいたのは副長のカラルドさんだった。

「と、とりあえず、ここじゃなんですし、中にどうぞ」

 意外な人物の登場だ。
 普段はほとんど話さない。

 けど無口ってわけじゃなく、さっきみたいに必要があれば普通に話すし、ここに来たばかりの頃から剣術や体力作りに付き合ってくれた。

 俺が実戦に出るようになってからは、活動時間がずれてしまったけど、世話になった人物だ。いったい何の用だろうか。

「いや、すぐに終わる。ここで構わない」
「はぁ……」
「少し助言をと思ってな。剣星、お前は強くなった」

 ……やばい。

 胸がドキドキしてる。
 この間はおやっさんにも成長を認められたし、今度は副長から。
 すげー嬉しい。

 初めは俺自身に判断基準が無かったら、副長の強さが全然分からなかった。
 けど、教会の演習場に行くようになってから、すぐに理解したんだ。
 この人、とんでもない強さだって。
 生身でも機人に乗っても。

 今までは別のチームだったから分からなかったけど、強さだけなら団長よりも間違いなく上だ。

 色々事情はあるのかもだけど、教会に残っていたとしても最上位に位置するんじゃないかってくらい。

 正直、何で傭兵やってるのか疑問だ。
 そんな人に褒められるなんて思っても見なかった。

「だが、視野が狭すぎる。目に頼り過ぎるな。五感を研ぎ澄ませて敵味方を感じるんだ。そして自分すら客観視できるようになれ」
「それってどういう――――」
「話は以上だ」

 副長は俺の疑問を聞くことすらなく去っていった。
 呆然としている俺の肩にレトが降りてくる。

「(行っちゃったね。今のってどういう意味なのかな)」
「(どうって、どうなんだろうな)」

 目に頼るなって言われてもな。
 そういえばずっと前にイオリと聖王機に乗った時にも言われたっけ。
 見るんじゃなくて感じろって。

 俺から見て達人レベルの二人が口をそろえての助言。
 俺にできるんだろうか。
 最近は演習場に行ってないから、イオリとは随分会ってない。

 元気にしてるかなぁ……。
 って、想像してたら興奮してきちゃった。
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