聖女の御旗に集え!! ~ こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!

犬猫パンダマン

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第34話 俺がぶっ壊してやるよ!!

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「すげぇ、これを俺達、いや剣星がやったのかよ」

 辺り一面には動かなくなったラヴェルサの残骸が転がっている。
 これで補給地に向けて進軍していたラヴェルサの多くを討伐できたと思う。
 ただ、その代償は少なくなかった。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 完全にスタミナ切れだ。
 それにKカスタムにも山ほどの傷が見える。
 それでも一度も背後から衝撃を受けたことはなかった。
 皆が守ってくれたおかげだ。

「団長、フォルカと副長の機人が見えないよ!」
「なんだって! 確かに姿は見えない、が、我々はこれから補給基地に向かう」
「団長!」
「あいつらが簡単に死ぬと思ってるのかい? 私より強いカラルドはもちろん、フォルカだって幼い頃から手塩に掛けて育てたんだ。この程度で死ぬはずがないさ」

 その言葉に納得したのか、俺達四人は補給基地に向かうことになった。
 はぐれた場合には、近くの部隊に合流させてもらうことは決まっている。
 きっと二人は別の部隊に拾われているはずだ。そう信じるほかない。

 先程大規模な敵襲があった影響だろうか、補給基地までの道のりでラヴェルサと出会うことはなかった。護衛部隊もいるし、少しだけ休ませてもらうことにする。

「すごい傷跡ですね」
「…………」

 正直答える体力すら惜しい。
 物資を受け取り、少しでも回復を試みる。

 補給部隊が順番にコーティングをしてくれているけど、その間にも遠くからは銃撃音が聞こえてくる。あれは確かラヴェルサ十二型。マシンガンを装備した機人だ。
 
 霧の薄い場所なら問題なく対処できたけど、今の環境では大きな脅威となるだろう。横に並ばれて一斉に発射されたら、弾幕の中を突破するのは至難の業だ。

 一応、周囲を囲ってあるので、ここには届かないけど、緊張感がある。


「剣星!!」


 突如として、イオリの声が聞こえてきた。
 無線からだけど、気力が回復していくのを実感する。
 自分の単純さが今は有り難い。

「イオリか、どうしたんだ?」

 いよいよだろうか、そう思って辺りを見渡すが聖王機の姿は無い。

 基地にいるのは補給部隊の他には俺達と、たった今到着したばかりのラグナリィシールドだけだ。もしかしてを考えてしまう。

「アルフィナ様は私を置いて行ってしまった。剣星、私と共に来てくれ!」
「ちょっと待て。じゃあ聖王機には誰が乗ってるんだ」
「アルフィナ様だけだ!」

 なんてこった。まさかこんなことになるとは。
 
 アルフィナから見ても、イオリは戦える状態じゃないと思ったのかもしれない。
 イオリに死んでほしくなかったのかもしれない。
 いずれにしても、アルフィナにとって、イオリは大切なんだ。
 

 少し考えてると、不審に思ったのか、リンダとルシオが近づいてきていた。こちらの様子を見に来たのだろうか。

「一緒に行ってあげなさいよ」
「そうそう、ここは俺達だけで大丈夫だからさ」

 もちろん、そのつもりだ。
 あの夜の言葉に嘘はない。

 でもルシオの言葉は強がりかもしれない。
 それだけさっきの戦いはぎりぎりだった。
 二人もそれは分かっているだろう。

 それでもルシオとリンダは、俺の背中を押してくれているんだ。
 俺は皆を見捨てて出て行くつもりだったのに。

「いいですよね、団長?」
「……剣星、あんたの意志はどうなんだい? そのボロボロの機人で行く覚悟はあるのかい?」
「行きます! 行かせてください!!」

 俺が団長の立場なら、認めなかったかもしれない。

 ここに来る途中、倒れている機人を沢山みた。
 動きがフラフラの機人もあった。
 それだけこのエリアもボロボロなんだ。

 今にも涙が溢れてしまいそうだ。
 本当なら裏切者と罵られてもおかしくなかった。
 こんな形で見送られるなんて思いもしなかった。

「背中を向けな。あんたはこれから持ち場を離れて命令違反をするんだ。照明は切っておくからね」

 団長はKカスタムの背部についている照明器具を切断した。

「さあ、騎士様がお待ちだよ。しっかりやってきな」
「うす。行って来ます! イオリ待たせたな」
「時間がない。アルフィナ様はだいぶ前を進んでいるはずだ」

 イオリが機人を走らせ、俺はそれに付いて行く。

「(よくわかんないけど、なんかいいね)」
「(ああ、最高だよ)」

 心が軽くなっていくのを感じる。


 でもそれとは逆に不安も大きくなっていく。


 志半ばで倒れた装甲機人を横目で見ながら戦場を駆け抜ける。

 このエリアに配備された連中は、腕も相当だろう。
 だけど腕に見合った性能の機人かと問われれば、首を縦に振ることはできない。
 それは機人の性能が赤光晶の量に依存しているからだ。

 ラグナリィシールドだって、性能が悪い機人じゃない。
 俺のKカスタムより、ずっと性能は上だろう。
 でもそれは聖王機と比べられるものじゃないんだ。

 本来であれば、聖王機に乗ったイオリと肩を並べて戦う予定だった。
 一機増えたからといって、数で埋められるような差じゃない。


 レトレーダーに前方からの反応が示された。
 考え事をしている場合じゃない。

「イオリ、前から来るぞ!」

 イオリの操るラグナリィシールドは軽やかだ。
 スピードをほとんど落とさず、すれ違いざまに一撃をいれる。

 真後ろから見てるとよく分かる。
 その姿は演習場で見た時と変わりない。

 俺が憧れたイオリの動き、そのものだ。

「これで不調なのかよ……」

 もしかしたら、アルフィナのことで頭が真っ白になっているのかもしれない。
 考える余裕がないから、体が勝手に動いているのかもしれない。

 イオリはできるだけ戦闘を避けるように進んでいく。
 聖王機が進んだということは、第九エリアも解放されたということ。
 
 それなのに、こんなに敵が出るのは、かなりやばい状況だ。
 どこかで防衛網が破られているのかもしれない。

 俺は聖王機から少しだけ距離を取った。

 イオリの戦い方は聖王機での戦い方だ。
 頑強な装甲を信頼し、盾を背中に装着させたままに剣を振る。
 味方すら巻き込みかねない必殺の一撃を繰り返す。
 圧倒的な性能で敵を屠る戦い方なんだ。

 でも今乗っているのは聖王機じゃない。
 連携なんて考えずに、敵に対応している。
 まるで周りにいるのは全て敵であるかのようだ。

 だから俺は攻撃範囲内に入って刺激しないよう注意しながら、イオリがラヴェルサの挟み撃ちを受けないようにフォローに専念する。

 たった二機でここまで戦えているのは奇跡的だ。

 それでも進軍ペースが落ちてしまうほど、敵の軍勢は増えている。
 迂回しようにも、隙間すら見当たらない。

「(ケンセー、後ろから誰か近づいてきてる!)」

 レトに言われて慌てて確認する。
 前方に……いや、イオリに気を取られ過ぎてて気づかなかったみたいだ。

 後方から近づく三つの光点。
 援軍を期待して思わず振り返る。
 見えてきたのは、リンクスのシルエットだった。

「副長! それに団長とフォルカも!」

 姿を発見したのとほぼ同時に、無線が飛んできた。
 だけど霧のせいで、とぎれとぎれで団長が何を言ってるのか理解できない。

 分かるのは必死に叫んでいることだけだ。

 機人が近づいてくるに従って、無線も少しづつクリアになっていく。


「カラルドに気を付けろ!」


 その言葉を聞いた一瞬後、目の前に副長の剣が迫ってきていた。
 
 俺は横に倒れ込むようにして回避。
 
 それでも、かなり装甲を削られたような感覚に襲われる。

「副長!」

 副長は俺に構わず、さらに前進。
 その先にはイオリがいる。


「イオリ、後ろだ!!」


 マイクに向かって叫びながら、体勢を整えてイオリの元に急ぐ。
 イオリは俺の声に気づいていないのか、ラヴェルサと戦い続けている。


 動きに変化があったのは、副長が剣を振り始めた瞬間だった。


 イオリは振り向きざま、迷いなく一閃。
 副長の右手首を切断した。


 だけど副長の動きは止まらない。


 イオリの切り返しよりも早く懐に入って、剣を持つ手を肘で挟んでロックする。
 倒れ込むようにイオリを投げ、その勢いを利用して空いた左手で剣を奪いとった。


 その場でラヴェルサを攻撃し、反転。
 イオリの元に近寄る俺に向かってくる。


 イオリの機人は倒れたまま、微塵も動かない。
 機人に外傷はないけど、頭を打って気絶している可能性がある。


「くそっ! なんだってんだよ!!」


 俺は剣を立てて、防御を選択。
 迫りくる剣に備えていた。


 その瞬間、微かに違和感を覚えた。


 副長の剣の腕はイオリと同等以上だろう。
 なのに、全く当たる気がしないからだ。


 それは当然だった。


 副長の狙いは俺ではなく、助けに来た団長だったんだから。


 コックピットは横から潰され、血だらけの団長の姿が僅かに見えた。


「母さん!!!!」
「団長ぉぉ!!」


 俺はフォルカの叫びに驚きながらも、副長にタックルして団長から引き離す。

 Kカスタムは蹴り飛ばされ、間髪入れずにフォルカが副長に迫っていった。

 副長は低い体勢のままで、剣を水平に振ってフォルカ機の両脚を切断。
 すぐさま俺と対峙する。

 フォルカの機人は完全に使い物にならない。
 俺は嗚咽するフォルカに指示を飛ばした。

「団長の応急処置だ! 急げ!」
「う、うぅ。は、はい」

 二人の事も気になるけど、今はそんな余裕はない。

 辺りを見ると、何故だかラヴェルサの動きがおかしい。
 俺達に興味を失ったかのように離れて行く。
 副長はそれを見て、動きを止めた。

「団長、情に流されたのは残念です。あなたはもっと大局を見れると思っていた」
「残念なのはこっちだ。なんで俺達を裏切った?」

「これは作戦行動のうちだ。作戦を成功させるために不穏分子を排除しているに過ぎない。それに裏切者は、剣星、お前のほうだ。持ち場を離れ、仲間の元を離れて、お前は何をやっている?」


 くそっ、図星を付かれて熱くなるな。
 今は時間を稼ぐんだ。


 団長の出血を止めるには時間がかかるし、もしかしたらイオリが目覚める可能性もある。

「確かに俺は仲間から離れた。でもそれはアルフィナを救うためだ。作戦の大枠から外れてないはずだ」

「詭弁だな。……まあいい。末端の兵が知ることではないが、そもそも、この作戦で聖女様が死ぬことは決して無い。お前が助ける必要なんてないんだ」

 アルフィナが死なない?
 いったい何を言ってるんだ。
 それに何故、副長は俺にこんな事を話す?

 さっきまで問答無用だったのに。
 これは、あれか。
 どうせ、この後殺すから冥土の土産ってか。

「ラヴェルサは成長なされた聖女様を求め、教会はそれを差し出す。だから、聖女様は戦で死なないというのだ」

「……それでアルフィナはどうなるんだよ」

「ただ静かに暮らすだけだ。ラヴェルサに囲まれて、ということになるがな。今の状況を見てみろ」

 そういってラヴェルサの群れを指さす。
 その姿はどんどん霧に消えていき、俺たちのことなんて完全に眼中にない。

「奴らは聖女様を守るため、そして逃がさぬよう地下プラントに篭もる。そして世界に平和が訪れるんだ。聖女様は全てを理解している。だからこそ、従者を連れて行かなかったのだろう。助けに行くのは聖女様の献身を踏みにじる行為に他ならないと知れ」


 副長が嘘を言っているようには思えない。


 イオリはこのことを知らなかったのだろうか。
 教会をやめた副長だって知っている事なのに。
 もしかしたら、アルフィナ自身が口止めしていたのかもしれない。


 ……やっぱりアルフィナは子供だよ。
 

 普通とはちょっと違うだけの子供だ。
 イオリがそんなこと許すはずはない。
 短い付き合いの俺だって分かることだ。


 でも、良かった。
 アルフィナは心から望んでいるんじゃない。


 世界のために我慢してるんだ。それなら……


「仮に聖女様を取り返せても、奴らは怒り狂って取り戻そうとするだろう。その狂暴さは今までの比ではないはずだ。世界はさらなる悲しみに包まれることになる。分かるか? こうする事でしか世界は守れないんだ」


「そんなことは知らねえよ」
「なに?」

 
 俺は世界のために戦っているわけじゃない。


「俺はイオリの笑顔が見たいんだ。
 ただイオリに笑っていてほしい。
 そのためにアルフィナを助けるんだ」

 
 俺は絶対に認めない。


「お前はこの世界がどうなってもいいというのか!」


「それはイオリが笑える世界じゃない。心から笑えるわけがねえ」



 そんな世界は認められねぇよ。だから……



「こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!」
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