蒼穹のイカロス

レイチェル

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バケモノとは?

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と、ケレンは連れてきた子供たちに、コンコンと背中を叩かれた。

「なぁ、ケレン。オオカミはもう倒しちゃったみたいだけどさ」
「俺たちが最初に見た、あの大きいオオカミみたいなバケモノがいないじゃん」
「俺たち、オオカミには追いかけれてきたけど……アレにビビッて逃げてきたんだぜ」
「あっ」

確かに、どこにもいなかった。
アレは別次元の生き物。確かに、形はオオカミとは似ていたが、その存在感は他と一線を画す。オオカミと混じって、討伐されているようなこともなさそうだった。

もしあれがまだどこかに潜んでいるかと思えば、身体の身震いが止まれなくなる。

「なぁなぁ、ケレン。あのラムザって、いかにも強そうな人に言ったほうがよくない?」
「カイトって奴はなんだか頼りなそうじゃん」
「あのバケモノのことはちゃんと言ったほうがいいし」
「うん、そうかも」

確かに、ラムザに相談するべきだ。
こんな隊長に、ケレンたちが最初に会った、ケモノについて説明しても時間の無駄だろう。何も分からず、ただ突っ立っているだけに違いない。

ケレンは、頼りがいのある背中に向かって、声を掛けた。

「あの……僕たち、森でバケモノに出会って……」
「ん、急に何ですか? バケモノ?」

最初に見たとき、アレをこの世の生き物とは思えなかった。優雅ながらも恐ろしいその立ち姿に、別の世界での生き物をすぐに連想してしまう。

——バケモノ。
そんな言葉がピッタリと当てはまってしまう。それほどにアレは普通とはかけ離れていて、気づいたときには分け目も振らずにアレから必死に逃げていた。それほどまでに別格だった。
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