俺だけ魔力が買えるので、投資したらチートモードに突入しました

白河リオン

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楽園の夢編

楽園の夢編 プロローグ

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 白い砂浜に、波が優しく寄せては返していた。

 ロピカルハ王国――香料諸島を中心に構成された常夏の国。海はどこまでも澄んだ青で、香辛料の甘い香りが潮風に混じって漂う。俺は、南国の陽光に目を細めながら足元の砂を踏みしめた。ふわりと沈む感触が心地いい。

「アル兄ー! 見てー!」

 真っ先に砂浜を駆け回っていたのは長期休暇中のリーリアだった。オレンジ色の髪が太陽にきらめき、緑の瞳が輝いている。

「貝殻、こんなに拾えた! ロピカルハの海、本当に綺麗だね!」

「はしゃぎすぎると転ぶぞ……」

「大丈夫だよー!」

 そう言いながら、リーリアは元気に砂浜を蹴った。

 リーリアを見届けて、砂浜中央のパラソルに目を向ける。

 アイラがバスタオルを胸もとに押し当ててモジモジしていた。顔は真っ赤だ。

「ア、アルさん……こ、これ……本当に、着ないと……だめ、なんですか……?」

 ロピカルハ式の水着は、日本でいうビキニだった。肩紐のない、胸元の布地がぎりぎり支えているタイプ。普段は控えめなアイラが、これを着るのは……まあ、ハードルが高いだろう。

「嫌なら無理しなくてもいいぞ」

「い、いや……アルさんが、その……似合う、って……言ってくれたら……」

 小さく震えた声のあと、アイラはぎこちなくタオルを外した。

 見とれてしまいそうになるが、平静を装う。

「……似合ってる」

「~~~~っ!」

 アイラは顔を真っ赤にして両手で頬を覆った。

 その様子を、少し離れた日陰からフィリアが涼しい顔で見ていた。

「全く、アイラは初々しすぎますわ。ロピカルハの水着は、そういうものと相場が決まっていますのに」

 フィリア自身は、金髪をサイドに流し、紫の瞳をキラキラさせながら堂々としたビキニ姿――、本人は全く羞恥心がないらしい。

「アルヴィオ、どうかしら? この国の貴族様方が着るデザインを参考に選んでみましたの」

「まあ……似合ってるな」

「当然ですわ!」

 フィリアは胸を張って笑った。

 フィリアの後ろには、エルヴィナがショールを羽織りながら控えている。

「お嬢様、日差しが強いので、あまり無茶をなさらないように」

「エルヴィナも、泳いだらどうだ?」

「アルヴィオ様。私が海に入ったら誰が皆様をお守りするのですか」

「……ここ、完全にリゾート地なんだが」

 エルヴィナは周囲を警戒し続けていて、どこか緊張感が抜けない。

 その近くでは、ヒカリが控えめに水着をつまんでいた。

「わ、私……こういうの、日本でも着たこと……なくて……でも、ここの海……綺麗ですね……!」

「あんまり日焼けするなよ。後で痛くなるぞ」

「ありがとうございます。気を付けますね」

 ヒカリが笑顔を見せたところで、視線を砂浜の岩場へ移す。

 そこではティタニアが岩にもたれ、強い日差しをものともせずに立っていた。

「アルヴィオ、こんな格好……どう? 悪くないでしょ?」

 軽やかに髪を揺らし、陽光の下で白い肌を光らせている。銀の髪が風に揺れ、瞳はどこか挑発的な輝きを帯びていた。

「……何でそんな自信満々なんだ」

「だって、こういうのって、見せつけるためにあるんじゃない?」

「お前な……」

 ティタニアらしいというか、なんというか。

 その後ろでは、ラウラが、ティタニアを不安げに見ている。

「ティタニア様……本当に無茶はしないでくださいね……」

 その二人を横目に、さらに奥の静かな場所ではイオナが貝殻を拾い上げていた。白いパレオを巻き、珍しく素足を波に浸している。

「……やはり、ロピカルハの生態系は興味深いね」

「イオナ、研究か?」

「少しだけね。海由来の魔素結晶……観察しておきたかったんだ」

 イオナの表情は柔らかく、研究者としての好奇心に満ちていた。

 そして、リゾートの端、パラソルの下には――余裕に満ちた大人組が揃っていた。

 レイラは長椅子に腰を下ろし、海風を楽しむように目を細めている。

「やっぱりここの海はいいねぇ、少年」

 クロエは黒いサングラスをかけ、妙に似合う姿で飲み物を傾けていた。

「アル、紫外線は強いのよ。日焼け止め塗りなさいって言ったでしょ?」

「ほら、やっぱり」

 ミラは狼耳をぴくりと揺らしながら、のんびりとビーチチェアに寝転んでいる。

「まあ、たまにはこういう日も悪くないさ。日差しも……ん、眺めも悪くない」

 三人とも、妙に絵になる姿だった。

 そんな中――。

「アルヴィオ君ー! 海! 海入ろー!」

「ティナ、日焼けするから帽子はかぶってろよ」

「うん!」

 ティナは海へ一直線に走っていった。

――本当に、平和な時間だ。

 波の音と、仲間たちの笑い声だけが混ざり合う。

 俺はふと視線を島の中心部へ向け――そこで違和感に気づいた。

「あれ、なんだ……?」

 山の稜線に、黒い細長い柱のようなものがいくつも立っている。

 ついさっきまでその存在にまったく気づかなかった。

 だが、陽光に照らされたは、確かにそこにあった。

 説明できない違和感だけが、胸の奥に残った。

――まあ、気のせいか。

 俺はその感覚を振り払い、再び波の方へ歩き出した。

 楽園での時間は、まだ始まったばかりだ。
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