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引退、そして……

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(星奈ー!!かわいいよー!!!!)

 ライブ会場にて、ど真ん中の一番前という素晴らしい席で推しのダンスを見る。

 すごい!!かわいすぎる!!!
 俺の推しが日本一なんだ!!!!

 さっきから何度も目も合うし最高!
 やっぱりまだ俺のこと覚えてくれてたりするのかな?

「みなさん、今日は大事な話があります」

 ん?どうしたんだ?

 星奈ちゃんに会場の視線が集まる。

「私たちシューティングスターは今日をもって引退します!」

『ええぇぇぇぇっ!!??』

 会場が喧騒に包まれる。
 俺もその中の一人だ。

「急な報告ですみません。アイドル活動はとても楽しいですし、みなさんとライブをするのも本当に楽しいです。ですが、私には新しい夢ができたんです。そして、この夢はとても大切なものだから、結果的に引退という形になりました」

 そうか……。

 チラ。

 ……さっきからやけに星奈ちゃんと目が合うな。
 嬉しいんだけど、ここまで目が合うと疑問を感じるんだよな。俺の顔今日変?
 星奈ちゃんを目に焼き付けるために前髪上げてるけど変だったかな?恥ずかしいんだけど。

「今まで応援ありがとうございました!
 最後に聞いて下さい――」


◆◇◆◇◆◇


 あれからどうやって家に帰ったのか分からない。

 夢だと思ったけど、ニュースにもなってるし嫌でも現実を突きつけられる。

 あぁ、俺の推し活が……。

 何となくで推し始めたけど、だんだんと星奈ちゃんの良いところとかが見えてきて本当にファンになってたんだよな。
 人一倍努力しているところとか、誰にでも笑顔を向けるところとか。

 確か星奈ちゃんは確か俺と同い年だったよな。
 そうだよな。星奈ちゃんにも夢の一つや二つできてもおかしくないよな。
 それを俺が否定するのは違うな。

 頑張ってね星奈ちゃん。どんな夢なのかは分からないけど応援してるよ。


◇◆◇◆◇◆


 学校でもやはりシューティングスター引退の話で盛り上がっていた。

「お、おはよう。全員席につけぇ」

 扉から担任が入って……

「高ちゃんどうしたのその格好?」

 高ちゃんとは、担任の名前が高峰だからそう呼んでいる。主に陽キャが。

 いや、そんなことはどうでも良くて。あの高峰先生がスーツを着ているだと?!
 いつも気だるげな高峰先生はジャージなはずなのに。
 今日何かあったっけ?

「み、みんなも驚くとからな。今廊下に転入生がいる」

 うおぉぉぉぉぉぉ!と教室が盛り上がる。

「はい!女?男?」

 陽キャが尋ねる。

「入ってもらったほうが早い。は、入ってください」

 あの高峰先生が丁寧語を使ったぞ!生徒を相手に!
 なんなんだよ!めちゃくちゃ気になるなおい。

「はい」

 透き通るソプラノ声。
 高いけど耳障りではなく頭に染み込む感じの声。

 ……うそだろ?

 いや、聞き間違えるはずがない。
 何度も何度も聞いてきた。

 扉から入って来たのは、

「如月星奈です」

 俺の元・推しだった。

 教室が静まりかえる。
 衝撃的すぎて状況を飲み込めないのだろう。俺もだ。
 数人倒れてるし。

「っ!!」

 星奈ちゃんが俺の視線を捉える。

 たまたまとかじゃない。
 1秒、2秒と交わった視線はいつまで経っても離れないから。

 俺を見て星奈ちゃんは微笑んだ。

「ここでしか叶えられない夢を叶えに来ました」

 
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