地獄で捧げる狂死曲(ラプソディー)~夢見る道化は何度死んだって届けたい、笑顔を君に~

norikurun

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地獄体験~あれ? 思ったよりも~

『彼』のオンステージ 閉幕

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 「これは何事か」と飛び出してきた天幕内の仲間――ちょび髭の小柄な紳士――に首根っこをつかまれて中に引きずり込まれる『彼』。その光景を横目に、ボクはこの場に留まっていた。

 残された時間は少ない――そう直観したからだ。

 今は『彼』の怒られ姿と、その後の満面の笑みを見に行くのではなく、忘れっぽいボクの魂と向き合う時間が必要と思った。

「ほとんどを忘れちゃってたけど、今度こそ――忘れない!」

 覚悟を口にしながら、いま一度、思い出した内容を思い浮かべる。

カラフルな炎の秘密――――‘タネと仕掛け’は『炎色反応』。

 『彼』が操ったのは“火炎”。そして燃やしたのは“塩《えん》”だ。
 色んな酸化物《さん》と塩基物《アルカリ》を“塩《えん》”にしていた。

(……あれは味見してはいけないものばっかりだった)

「途中で異臭騒ぎがあったのも……」

 ついつい触れてはならないことも口をついて出てくる。
(……ボクは楽しめたから、文句はないよ!)

 ベースの色は……“赤”“黄”“紫”“緑”“橙”“紅”“黄緑”。

 かなり複雑な調合を繰り返しながら、
『リアカー・ナキ・ケームラ・ドウリョク・カリルトウ・スルモクレナイ・バリキデイコウ……』と唱えることで、この“塩《えん》”は完成する……。
 そしてその“塩《えん》”を、『めたのーる?』という燃える水に溶かすのだ。

(特に儀式は必要なさそうだったから、ボクもモノさえあれば簡単に――)

――そう思った瞬間、『彼』の世界に燐光が降り注いだ。

どうやら、ボクが思い出せるのはここまでだった。

「できることなら――“炎を大きくしたり、動かしたり、鳥にしたりするところ”まで、おさらいしたかったけど……十分だ!」

――色とりどりの光の粒子は次第に輝きを増し、ボクの体の周りに虹色の幕を作り出す。

「“笑顔”に全力を懸けるね~! 君の想いは“ボク”絶対忘れないから~!」

消えゆく『彼』の世界、ボクは大きな声で決意を叫んだ!
天幕の奥に消えてった『彼』に届くように。
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