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三人目:魔王の娘ヘルクレア

別次元の私15

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「この家の材料で作れそうなものは・・・この料理だな・・」
ザク、ザク、ザク、ザクと たまねぎを切る
たまねぎを切っていると、視界がしだいにぼやけてきた。
「なんだ・・・? くっ・・・前が・・」
涙が勝手に出てきて 前がよくみえない
「っ!!!」
よく見えないまま野菜を切っていると、自分の指を切ってしまったらしい
割と深めに切れた指は プシュッっと少し血が吹き出て刻んだ野菜に降りかかった
血のついた野菜は水分を吸収するように血を浸透させていく。
切れた指は一分たたず血は止まり、傷は塞がった。
「私は・・・なんなのだろうな・・・」
そう思いながらも、血のついた食材を水でさっと洗った。

数分後

「で、できた・・・」

少し焦げ付いたけど、やきそばが完成した。

やきそばが完成する頃には外はすっかり真っ暗になっていた。
「私もそろそろ家に帰らないと・・終夜が心配してしまうな」
そう言ってフリルは滝谷の家を出た。

フリルが家を出てから数分後に滝谷が目を覚ました。

「ん・・・・・ここは・・・」

起き上がるとそこは自分の家だった。
「あれ・・・僕は・・・学校に居たはず・・」

色々ぼやける思考をまとめてる時に、視界に料理が目に入る
「こ、これは・・・!」
少し焦げてる所が多いが やきそばだとすぐにわかった。
「一体だれが・・・ん?」

よく見るとテーブルの上に一本の髪の毛が落ちていた。

「ピンクの髪の毛・・・あっ・・!」
全部思い出した。
きっとここに運んでくれたのもフリルさんなんだ。

「ということは・・・これは・・・ごくり」

憧れのフリルさんの手料理・・・!
それだけで心躍った。
僕は箸を手に取り、一口食べた
「う・・・ま・・・まずい・・」

おせじにもおいしいとは思えない味付けだった。
むしろどうやったらこんな味が出せるのか
調味料を丸々一本使ったかのような味付けだったのだ。
「フリルさんには悪いけど・・これはゴミ箱行きかな・・・・・」
滝谷がゴミ箱に捨てようと2,3歩あるいた時だった

「ア・・・アッ・・ゴッ・・ガッ・・・アッ”」

ドクンッ・・・・
むせ返るような何かが押し寄せてくる
ガシャンッ!!と 料理の入ったお皿が床に落ちて割れる。
「なん・・・・あ・・・っ・・がはっ!!!!」

ベシャッッッ!!!!

大量の血を吐血した。

床に真っ赤な血だまりができていた。

「わ・・・わああ・・・ワアアアアア!!!!」

腰が抜けてその場に崩れ落ちた

両手が真っ赤になっていた。

再度、声をあげようとしたとき

まばたきをすると、そこに血など一切なく 血だまりも消えていた。

「はぁ・・・・はぁ・・・はぁ・・・い、いまのは・・」

「どうやら・・まだ昼間の後遺症が残ってるのかもしれないな・・・今日は早く寝よう・・」
そう自分に言い聞かせて、地面に割れて落ちている料理を片付けた。
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