中学生の童貞男子『おっぱい』見るために全国大会目指します!

yuraaaaaaa

文字の大きさ
4 / 29

パイオツの現実は厳しい!

しおりを挟む
 それから毎日走り込んだ。毎日。毎日。毎日。
 全身が筋肉痛でバキバキになりながらも走っていた。交代要員も居ないのだから、一人がバテてしまったらその時点でチームとして弱点になってしまう。まず体力がないと戦う土俵にすら立てない。一番の課題だった。

 そんな俺達は、今日も学校の周り800メートルある外周を、一人ずつ決められた秒数以内に入る事がノルマとして課され、ストップウォッチを持って走っていた。
 「はぁ。はぁ。はぁ。はぁ」
 ストップウォッチの記録を見て、タイムがオーバーしている事を確認した俺は、ゆっくりと歩きながら呼吸を整えていく。

「レロレロレロレロー」
「レロレロレロレロー」
 他の4人が、木の幹に手を置いて吐いていた。俺は焦って近寄って行く。

「おい! 大丈夫かよ……おいって!」
 どうやら返事も出来ない様子で、手だけ上げて反応していた。俺はダンカンの背中をさすった。
「ダンカン平気か?」
「レロレロレロレロー」
 涙を流し、鼻水も垂らして口から吐いていた。

「手塚、部長。こんな事までしないと僕達は、見る事が出来ないの? 今日、同じクラスのサッカー部の三橋が、あの子とやったんだぜ。とか、年上の高校生とやっちゃったとか自慢していたんだよ……。別にムカつくとかじゃないんだ。だけど、だけど僕らって、見るだけでこんな苦労しなきゃいけないの? レロレロレロレロー」
 ダンカンが、呼吸を乱しながら吐き出した言葉だった。

 言いたい事は分かる。こんなしんどい思いをしてまでする必要があるのか? と。

「今までに、水に対して心から感謝した事があるか? 俺はない!」
 俺の言葉に、皆が少し顔を上げた。

「喉が渇いている時に飲んだら美味しいとは感じるけど、心から感謝なんかしないだろ? だけど、砂漠で遭難して、死にそうになった時に飲む水って、クソ美味くて、本当に心から水ありがとう! 生きてる! って実感出来そうじゃないか? 三橋が感じてるのは潤った状態で飲んでる水みたいなもんなんだよ。だけど俺達は違う。カラッカラになった状態で、最高の水を飲もうとしているんだよ……一生の感動になりそうだと思わないか?」

 自分で何を言っているのか、自分でも分からなかったが、何故かそんな言葉が出て来た。

「皆、落ち着いたら今日は帰っていいよ。俺はもうちょっと走っていく」
 そんな事を言ったはいいが、自分の発言が急に恥ずかしくなってしまった。その場に居たたまれなくなった俺は、走り出し、荷物を持つとそのまま帰った。

 家に到着してからも後悔していた。疲れて頭が働いていなかったからなのか、本心なのかは定かではないが、俺にとっての一つの黒歴史になったのは間違いない。それを聞いていたのがバスケ部の奴等だけで助かった。

 身体が疲れているのにかかわらず、寝る事が出来なかった。これも不思議な感覚でしかなかった。あまりにも疲れ過ぎていると眠る事が出来ないのだとこの時知った。
 眠る事が出来ないまま時間だけが過ぎていき、時計を見ると午前3時を過ぎていた。

 俺は起き上がって着替えるとバスケットボールを持って外へと出る。誰も居ない静かで暗い中、街の外れにあるストリートのバスケゴールがある場所へと向かった。
 こんな時間では散歩している人すらいない中で、後ろの遠くから走る音が聞こえて来た。どんどんそれはこっちに向かってくるので、俺は振り向いた。

「おい。HPじゃないかよ! ビックリさせるなよ」
「手塚部長!」
「何してるんだよ……」
「それはこっちのセリフだって」
「まあ見ての通り走ってた。……手塚部長どこ行くの?」
「ストリートのゴールでシュート練習でもしようかと」
「じゃあ一緒に行こうじゃん」

「俺が作戦とかメニューとか考えたじゃん? なのに本人が一番出来ないって駄目だろ? それに、一番体力もセンスもないのは俺じゃん……本気で全国目指したら足手まといになるのは俺だろ?」
「そんな事ないだろ? まだ時間があるんだし焦るなって」
「いや、いいって。俺自身が一番分かってるじゃん。大事な試合や場面で、足手まといにはなりたくないじゃん」
 真剣な顔でHPは、そう話す。

「ハハハ。流石HP。そこまでして見たいんだな!」
「まあな」
 HPはニヤッと下卑た笑いを浮かべた。

 ダンッ。ダンッ。ダンッ。
 目的の場所に近付くにつれて、ドリブルをする音が聞こえた。
 先客か? こんな早い時間に?

 少し緊張しながらストリートコートに向かっていくと、そこでバスケをしていたのは見知った顔ぶれだった。
「おいおい。なんで皆こんな所にいるんだよ」
「あっれー。手塚部長とHP」
「おはよう」
「おはようございます」
 篠山先生とダンカン。そして斎藤プロが居た。

「部活終わって家に帰ってもやる事ないしさ、早く寝るんだけど、早く起きちゃうしさ。でもやることないから、ここに来て練習でもしようとかなと」
「なんか、考える事は皆同じなんだな。ハハハ」
「どうやらそうみたいですね」
「じゃあ皆でさぁ、練習しようよ」
「だな」
 そうして俺達はストリートのコートで、時間ギリギリまでみっちりとシュート練習をやった。

 ほとんど寝ずに学校へと行った俺は、勿論授業では眠くなり、爆睡した。
 放課後になってやっと目が覚めた俺は、外ではなく、体育館へと向かう。平日の一日だけは、女子バスケ部とコートを半分にして体育館を使える。それが今日だった。

 いつもなら適当に遊んで終わるが、真剣にシュート練習していく。シュートを放って成功率を記録していく。どの場所が得意でどこが苦手なのか。明確にしていく為だ。
 普通の練習ならば、苦手な場所を克服していくものが、そんな時間がない俺達は、得意な位置を見つけたら、その位置からのシュート成功率を徹底的に上げていくというやり方をしていく。

 そして今日、顧問になってから初めて西野先生が俺達の練習を見ていた。何か指示を出す訳でもなく、ただ俺達のやっているシュート練習を眺めていた。

「集合しろ!」
 突然の声に俺は驚いた。
「集合だって言ってるだろ」
 困惑しながら、西野先生のもとへと集合した。

「お前等のシュート見てたけど、とにかく全部が硬い。全員ゴール下でリバウンドしろ。私がシュートを打つから、拾ったらそのまま私にパスくれ。見本を見せてやるから、よく見ておけよ」
 西野先生がそう言うと、3ポイントラインの0度の位置に立った。ジェスチャーでボールを寄こせとやってきたのでパスをする。

 流れるような動きで、西野先生はワンハンドシュートで打った。
 綺麗な放物線を描いて、ゴールに吸い込まれていく。

「ヘイ!」
 先生は位置を変えてボールを要求する。それも見事に決めた。また位置を変える。反対の0度の位置まで同じようにシュートを放ち、全て沈めた。

「私は女だぞ? お前達よりも圧倒的に筋力はないよ。それでも身体を上手く使えば、楽に3ポイント打てるんだよ。でもお前等は、力んだり体勢が前かがみになったりして、上手く力をボールに伝えられてない。無駄な力が入り過ぎなんだよ」
 西野先生は、今度はツーハンドでシュート打ち、同じようにゴールを決めていく。

「どうしても力むならツーハンドで打て。流石にツーハンドなら力まずに打てるだろ?」
「先生、ツーハンドって……男で使う人いないですよね?」
「基本はな。そもそもツーハンドだって使っているのは、日本人だけだぞ? 世界選手権とか見たら、女性でも全員ワンハンドだぞ」

「男がツーハンド……馬鹿にされて、笑われませんか?」
「お前は馬鹿か手塚。たった数カ月で全中目指すんだろ? 勝つ為なら、なんでもいいだろ? プロを相手にするならツーハンドじゃあ通用しない。けど相手は中学生だ。ツーハンドでも問題ない。ツーハンドの方が、成功率高いならツーハンドを使え」

 ボールを持っていた俺は、3ポイントラインから3メートル程離れた所からツーハンドでシュートを放ったら、ゴールに入った。

「ナイスシュ! そういう事だよ手塚。他の奴等も使えると思ったら何でも使え。常識とかに捉われるなよ。普通にやったって時間ない事位、分かるだろ?」

「「「「「はい」」」」」
「でも斎藤だけは、ワンハンドシュートだけを使え。貴重なサウスポーだからな」
「分かりましたよ」

初めて助言らしい助言をしてくれた西野先生。俺達の実力でも、この人はバスケが上手いんだとすぐに分かるほど、シュートフェームが洗練されていた。


「よし! シュート練習を続けろ!!」
「「「はい」」」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...