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実感が無い
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「ハァハァハァハァ……クソが!! 今日も何も通用しなかった」
「だから言ってるだろ。12歳にやられるかよって!」
レベッタ先生はそう言いながら月明かりに照らされた中で、タバコに火をつける。
俺は体中の打撲が痛すぎて、起き上がる事さえ出来ずにいた。
回復魔法を使って怪我を治していく。
(毎日毎日よく飽きないねユウタも)
「毎日毎日よく飽きないなお前!!」
「先生の顔を見るとさ、今まで殴られたり蹴られたりした分を思い出して、どうしても一発殴りたくなっちゃうんだよ」
「それに付き合わされる私の身にもなれって言うんだよ全く……」
「なあ先生……俺は強くなってるのか? あれから何ヶ月も経つのに一つも強くなってる気がしないんだよ。毎日相手してる先生なら何か分かるだろ?」
「なんだよお前、同級生とかと組手した事ないのか?」
「残念な事に友達が全く居なくてさ俺、先生としか戦った事ないんだよ」
「へぇ~。そいつは少し面白い事聞いたな! ジャン、明日は朝来るなよ。用事が出来た」
「そんな事今までのなかったのに珍しい」
「一応先生なんだ用事ぐらいあるさ。今日はここまでだな。気をつけて帰れよ~」
「おやすみレベッタ先生」
「なあジャン。お前どう思う? 俺って強くなってるのかな?」
(先生の姿見てないの? 毎日余裕で相手してた先生が、最近ユウタとやり合うと汗かくようになってるんだよ)
「えっ!? あの化け物が汗かいてるって!? 本当か!?」
(それに初めて先生の部屋入った日、部屋中にあれだけ酒瓶が散乱してたのに、今日入ったらほとんど酒瓶がなかったでしょ。酒をあまり飲んでないって事だよ)
「あの万年酒臭かったレベッタ先生が酒飲んでないって!? でもそういや最近は酒臭くないな。なんでだ?」
(なんでって酒飲んで相手できる程の余裕が無くなったってことじゃないかな?)
「おいおいおい! つまりそれって俺が相当成長してるんじゃないのか?」
(成長してるんだと思うよ)
「でもさ、また一発すら当てたことないんだぜ。掠った事もないんだぜ。成長してるんかな?」
(多分……)
自分が強くなっているのか分からないまま、肩を落として寮へと戻り眠りについた。
次の日学校へ行き、実技訓練が行われたが、いつもと内容が違った。
「今日はクラス合同で実技訓練をする事になった。SクラスとCクラスの合同だ。Sクラスの生徒はCクラスの生徒と組んで組手を行ってくれ! くれぐれも怪我がないように」
「先生ちょっといいですか?」
「ロベルタか、どうかしたか?」
「この実技訓練の意図が分かりません。SクラスとCクラスではあまりにも実力が違います。Cクラスの皆に怪我をさせてしまう恐れがあり、下手をすると命の危険もあります」
「Sクラスなら上手いこと手加減する事が出来るだろう。クラスが違っても同じ学校に通う者同士、刺激し合ってもらいたいと思っている」
「では、Cクラスの為に私達Sクラスの時間を使えと?」
(おいなんだよ、おっぱいデカ美、凄い反論するじゃん。Sクラスって偉いの?)
(偉いかどうかは分からないけど、Sクラスは特別でエリートなんだよ。実力者しかいないクラスだからね)
(へぇ~……まあそうかもしれないけどさ)
Sクラス連中の目が、俺には気に食わなかった。
「まあそう言わずにロベルタ。これも一つの勉強さ。私達にとっても学ぶべき事もあるよ」
先生とロベルタの間に入る金髪の男が。
ロベルタと先生、あのレベッタ先生でさえも立ち上がって頭を下げている。
「頭を下げるのはやめて下さい……今はただの生徒ですから」
「「はっ」」
(おいなんだよあの金髪貴族は)
(ユウタそれ本人の前で言わないでよ。彼はルイス。この国の王子だよ……)
(王子だって? まあ確かに……王子っぽいな)
(ぽいじゃなくて王子なんだってば)
「私はこの合同訓練は全く意味がないと思うんです。ルイス殿下もそう思いませんか?」
「まあそう熱くならなくても。この提案はレベッタ先生からと聞いたんですけど、そうなんですか?」
「私が提案しました。お互いにいい刺激になると思いまして」
「いい刺激? ある訳がない」
「殿下、この場では先生と生徒という立場です。無礼な言葉遣いを使っても?」
「どうぞレベッタ先生」
「おい! ホーク家のお嬢ちゃん。お前Cクラスの連中には、絶対に負けないと思ってるだろ? それに学ぶ事も一切ないと思ってるだろ?」
「思ってる? 事実でしょう?」
「ハハハハハハ。だから貴族は嫌いだし甘いんだよ! ジャン! こっち来い!」
「ジャン! ジャン!! ジャン!!!」
(おい呼ばれてんぞ)
「あ、え?」
呼ばれている場所へと向かう。
「どうしたんですか?」
「お前このお嬢ちゃんと戦ってみろ!」
「えっ!?」
「だからロベルタと戦ってみろ!」
「何故私がこんな弱い人と戦わないといけないんですか?」
「いいから戦ってみろ。私が審判する」
「分かりました……一瞬で片付けてあげるわ」
(そういやロベルタって強いのか?)
(強いってもんじゃないよ。実技はこの学年でトップだよ)
(そいつは凄いな)
(ホーク家は、誠実さ・情熱さ・強さが家訓の一族で、幼少の頃から剣術と魔法を叩き込まれるんだ。赤い髪と同じ炎の魔法が得意で、両方とも超一流。ロベルタは長女だった事もあって貴族の連中から嫌味を言われていたけど、実力で全てねじ伏せてきた神童だよ)
レベッタ先生が俺に近づいてきて耳打ちしてきた。
「お前が疑問に思っていた事だが、この戦いで分かるよ。全力でいけ。負けんなよ」
(負けんなよって……ジャン勝ったことあるの?)
(ある訳ない。3歳の頃から負けてるよ)
(流石にあの化け物より強いって頃はないだろ? ジャン俺と替われ)
(ロベルタは強い炎魔法も使えるから、下手したらレベッタ先生より強いかもよ?)
「マジで? でも死にはしないだろ」
「では両者武器を持って並べ」
「手加減してあげるから、すぐに負けを認めなさいジャン」
明らかに怠そうに剣を構えるロベルタの姿が、俺の中にあるやる気スイッチを押した。
レベッタ先生が舐めてきたのは分かる。俺が子供だから。でも目の前にいるのは同じ年。それに女だ。その舐めきっている態度に腹が立ち、俺にやる気を出させた。
「お~いジャン。女の子に舐められてるぞ~。いいのか~」
さらにレベッタ先生が俺のことを煽ってきた。
抑えきれなくなった俺は笑った。
「クックック。口数が多いなおっぱいデカ美、どうでもいいから、さっさとかかってこいいよ
クイックイッとかかってこいとジャスチャーをする。
「その呼び方やめろ!!」
「では両者はじめ!!」
レベッタ先生が合図をした瞬間、ロベルタは姿勢を低く保ちながら俺との距離を詰めてくる。
見えにくい角度から木剣を振り上げてきた。
(おっそ)
(遅い……)
俺はその一撃を最小限で避ける。凄い勢いで木剣は風を斬った。
「おい、ロベルタ様の一撃を食らわなかったぞあいつ。避けたのか?」
「いや、全く見えなかったから分からない」
「ロベルタ様がわざと外しただけだろ」
周りの奴らの話す声が聞こえてきた。
バックステップで距離を作ったロベルタは、再び木剣を構え直して俺に斬りかかってくる。
色んなバリエーションで攻撃を繰り出してくるが、俺は全てを躱す。
反撃する隙きはいくらでもあった。しかし、俺は攻撃を繰り出さなかった。
レベッタ先生との戦闘では、隙きだと思った瞬間全てが、罠である事が多かったからだ。
ロベルタの隙きも同様に、罠じゃないのかと勘ぐっていた。
だが、このままだと埒が明かないと思った俺は、直接ではなく隙きがあると思った瞬間に、攻撃によって広がっている髪に対して攻撃を繰り出してみた。
ロベルタは俺のカウンター攻撃に、全く反応出来ていないようだった。
俺は距離を取った。
(あれ? ロベルタってこんなだったかな?)
(ジャン違うんだ。俺達が強いんだよ。なんだよ、ババアが強すぎるだけかよ)
「クックッククックック。なんだよ、なんだよ、そういう事かババア」
俺は二本の短い木剣を持ったまま、両手で白い髪をかき上げた。
「クックック。おいデカ美! お前神童とか言われて調子乗ってるみたいだな! 俺が今ここで神童を超えてやるよ」
ロベルタは両手で木剣を構えたまま動かない。
フラフラよろよろと、隙きだらけの動きで俺はロベルタに近づいていく。
「も~もたろうさん。ももたろうさん。お腰につけたきびだんご、ひとつ私にくださいな」
「や~りましょう。やりましょう。これから鬼の征伐に、ついていくならやりましょう」
俺は反撃に出た。ロベルタが攻撃を繰り出してきても最小限で避けて最小限でカウンターを決めていく。
手の甲、肘の裏側、太もも、アキレス腱、背中、腰、膝の裏側、綺麗に削ぐように木剣を滑らせていく。
ロベルタに傷が出来るような事は一切ない。しかし本物ならすでにロベルタは息絶えている。
(凄い。あのロベルタが何も出来ずにいる)
「い~きましょう。いきましょう。あなたについてどこまでも、家来になっていきましょう」
ロベルタが突然、木剣の切っ先を俺の方へと向けた。
「ファイヤーアロー!!」
そうロベルタが叫ぶと、ロベルタの周りに炎で出来た矢が何十本と現れた。
「へ~凄いな」
(感心してる場合じゃないでしょ!)
(最悪回復魔法があるから平気だろ)
(何を言って――)
その矢が次々と俺に向かって放たれていく。
俺は降り注ぐ炎の矢を掻い潜る。ロベルタは矢と同時に俺に向かって突っ込んできた。
矢と剣を避けた俺は、ロベルタの足を引っ掛けて膝をつけさせた。
背後を取り、首に目掛けて木剣を振り下ろそうとした瞬間だった。
「フレイムシリンダー!!」
地面に手のひらをつけながらロベルタが叫ぶ。
俺はレベッタ先生に何度も殺されそうになったが、その時のようなヤバイという感覚が体中に駆け巡った。
次の瞬間、ロベルタを中心にして空高く円柱型の業火が吹き荒れ、轟いた。
「ヤバかったな今のは……」
俺はすぐに飛んで逃げたが、着ている服は跡形も無くなって焦げていた。
(回復魔法かけながら逃げなかったら死んでたかもね)
「あいつやり過ぎだろ!!」
「両者そこまで!! 終わりにしろ!! ロベルタやり過ぎだぞ!!」
「先生待って下さい。まだ終わってません」
「いや終わりだ。いいなロベルタ」
「……わかりました」
「終わったみたいだね……」
レベッタ先生が近づいてきた。
「良くやったなジャン。どうだった? 成長を実感出来たか?」
「はい先生、僕自身驚いています」
「……お前なんか喋り方が気持ち悪いぞ。まあいいゆっくり休め。だけどお前さっきどさくさに紛れて私の事ババアって呼んだよな? 後で覚えておけよジャン」
「いや~それは……僕じゃなく……」
トボトボと歩いていると王子に話しかけられた。
「久しぶりだねジャン。さっきの戦いだけど……君があのロベルタと互角に渡り合うなんて思わなかったぞ」
(互角?? 何いってんだこの王子。どう見たって俺の勝ちだろ)
「互角なんてまさか……見ての通り僕のほうがボロボロですよ、ルイス殿下」
会話を終え、そのまま生徒達の中に紛れ混んだ。
一日の授業が終わると、赤い髪をなびかせた、Sクラスの神童が何故か目の前に。
「ちょっと来てもらえるかしら?」
「だから言ってるだろ。12歳にやられるかよって!」
レベッタ先生はそう言いながら月明かりに照らされた中で、タバコに火をつける。
俺は体中の打撲が痛すぎて、起き上がる事さえ出来ずにいた。
回復魔法を使って怪我を治していく。
(毎日毎日よく飽きないねユウタも)
「毎日毎日よく飽きないなお前!!」
「先生の顔を見るとさ、今まで殴られたり蹴られたりした分を思い出して、どうしても一発殴りたくなっちゃうんだよ」
「それに付き合わされる私の身にもなれって言うんだよ全く……」
「なあ先生……俺は強くなってるのか? あれから何ヶ月も経つのに一つも強くなってる気がしないんだよ。毎日相手してる先生なら何か分かるだろ?」
「なんだよお前、同級生とかと組手した事ないのか?」
「残念な事に友達が全く居なくてさ俺、先生としか戦った事ないんだよ」
「へぇ~。そいつは少し面白い事聞いたな! ジャン、明日は朝来るなよ。用事が出来た」
「そんな事今までのなかったのに珍しい」
「一応先生なんだ用事ぐらいあるさ。今日はここまでだな。気をつけて帰れよ~」
「おやすみレベッタ先生」
「なあジャン。お前どう思う? 俺って強くなってるのかな?」
(先生の姿見てないの? 毎日余裕で相手してた先生が、最近ユウタとやり合うと汗かくようになってるんだよ)
「えっ!? あの化け物が汗かいてるって!? 本当か!?」
(それに初めて先生の部屋入った日、部屋中にあれだけ酒瓶が散乱してたのに、今日入ったらほとんど酒瓶がなかったでしょ。酒をあまり飲んでないって事だよ)
「あの万年酒臭かったレベッタ先生が酒飲んでないって!? でもそういや最近は酒臭くないな。なんでだ?」
(なんでって酒飲んで相手できる程の余裕が無くなったってことじゃないかな?)
「おいおいおい! つまりそれって俺が相当成長してるんじゃないのか?」
(成長してるんだと思うよ)
「でもさ、また一発すら当てたことないんだぜ。掠った事もないんだぜ。成長してるんかな?」
(多分……)
自分が強くなっているのか分からないまま、肩を落として寮へと戻り眠りについた。
次の日学校へ行き、実技訓練が行われたが、いつもと内容が違った。
「今日はクラス合同で実技訓練をする事になった。SクラスとCクラスの合同だ。Sクラスの生徒はCクラスの生徒と組んで組手を行ってくれ! くれぐれも怪我がないように」
「先生ちょっといいですか?」
「ロベルタか、どうかしたか?」
「この実技訓練の意図が分かりません。SクラスとCクラスではあまりにも実力が違います。Cクラスの皆に怪我をさせてしまう恐れがあり、下手をすると命の危険もあります」
「Sクラスなら上手いこと手加減する事が出来るだろう。クラスが違っても同じ学校に通う者同士、刺激し合ってもらいたいと思っている」
「では、Cクラスの為に私達Sクラスの時間を使えと?」
(おいなんだよ、おっぱいデカ美、凄い反論するじゃん。Sクラスって偉いの?)
(偉いかどうかは分からないけど、Sクラスは特別でエリートなんだよ。実力者しかいないクラスだからね)
(へぇ~……まあそうかもしれないけどさ)
Sクラス連中の目が、俺には気に食わなかった。
「まあそう言わずにロベルタ。これも一つの勉強さ。私達にとっても学ぶべき事もあるよ」
先生とロベルタの間に入る金髪の男が。
ロベルタと先生、あのレベッタ先生でさえも立ち上がって頭を下げている。
「頭を下げるのはやめて下さい……今はただの生徒ですから」
「「はっ」」
(おいなんだよあの金髪貴族は)
(ユウタそれ本人の前で言わないでよ。彼はルイス。この国の王子だよ……)
(王子だって? まあ確かに……王子っぽいな)
(ぽいじゃなくて王子なんだってば)
「私はこの合同訓練は全く意味がないと思うんです。ルイス殿下もそう思いませんか?」
「まあそう熱くならなくても。この提案はレベッタ先生からと聞いたんですけど、そうなんですか?」
「私が提案しました。お互いにいい刺激になると思いまして」
「いい刺激? ある訳がない」
「殿下、この場では先生と生徒という立場です。無礼な言葉遣いを使っても?」
「どうぞレベッタ先生」
「おい! ホーク家のお嬢ちゃん。お前Cクラスの連中には、絶対に負けないと思ってるだろ? それに学ぶ事も一切ないと思ってるだろ?」
「思ってる? 事実でしょう?」
「ハハハハハハ。だから貴族は嫌いだし甘いんだよ! ジャン! こっち来い!」
「ジャン! ジャン!! ジャン!!!」
(おい呼ばれてんぞ)
「あ、え?」
呼ばれている場所へと向かう。
「どうしたんですか?」
「お前このお嬢ちゃんと戦ってみろ!」
「えっ!?」
「だからロベルタと戦ってみろ!」
「何故私がこんな弱い人と戦わないといけないんですか?」
「いいから戦ってみろ。私が審判する」
「分かりました……一瞬で片付けてあげるわ」
(そういやロベルタって強いのか?)
(強いってもんじゃないよ。実技はこの学年でトップだよ)
(そいつは凄いな)
(ホーク家は、誠実さ・情熱さ・強さが家訓の一族で、幼少の頃から剣術と魔法を叩き込まれるんだ。赤い髪と同じ炎の魔法が得意で、両方とも超一流。ロベルタは長女だった事もあって貴族の連中から嫌味を言われていたけど、実力で全てねじ伏せてきた神童だよ)
レベッタ先生が俺に近づいてきて耳打ちしてきた。
「お前が疑問に思っていた事だが、この戦いで分かるよ。全力でいけ。負けんなよ」
(負けんなよって……ジャン勝ったことあるの?)
(ある訳ない。3歳の頃から負けてるよ)
(流石にあの化け物より強いって頃はないだろ? ジャン俺と替われ)
(ロベルタは強い炎魔法も使えるから、下手したらレベッタ先生より強いかもよ?)
「マジで? でも死にはしないだろ」
「では両者武器を持って並べ」
「手加減してあげるから、すぐに負けを認めなさいジャン」
明らかに怠そうに剣を構えるロベルタの姿が、俺の中にあるやる気スイッチを押した。
レベッタ先生が舐めてきたのは分かる。俺が子供だから。でも目の前にいるのは同じ年。それに女だ。その舐めきっている態度に腹が立ち、俺にやる気を出させた。
「お~いジャン。女の子に舐められてるぞ~。いいのか~」
さらにレベッタ先生が俺のことを煽ってきた。
抑えきれなくなった俺は笑った。
「クックック。口数が多いなおっぱいデカ美、どうでもいいから、さっさとかかってこいいよ
クイックイッとかかってこいとジャスチャーをする。
「その呼び方やめろ!!」
「では両者はじめ!!」
レベッタ先生が合図をした瞬間、ロベルタは姿勢を低く保ちながら俺との距離を詰めてくる。
見えにくい角度から木剣を振り上げてきた。
(おっそ)
(遅い……)
俺はその一撃を最小限で避ける。凄い勢いで木剣は風を斬った。
「おい、ロベルタ様の一撃を食らわなかったぞあいつ。避けたのか?」
「いや、全く見えなかったから分からない」
「ロベルタ様がわざと外しただけだろ」
周りの奴らの話す声が聞こえてきた。
バックステップで距離を作ったロベルタは、再び木剣を構え直して俺に斬りかかってくる。
色んなバリエーションで攻撃を繰り出してくるが、俺は全てを躱す。
反撃する隙きはいくらでもあった。しかし、俺は攻撃を繰り出さなかった。
レベッタ先生との戦闘では、隙きだと思った瞬間全てが、罠である事が多かったからだ。
ロベルタの隙きも同様に、罠じゃないのかと勘ぐっていた。
だが、このままだと埒が明かないと思った俺は、直接ではなく隙きがあると思った瞬間に、攻撃によって広がっている髪に対して攻撃を繰り出してみた。
ロベルタは俺のカウンター攻撃に、全く反応出来ていないようだった。
俺は距離を取った。
(あれ? ロベルタってこんなだったかな?)
(ジャン違うんだ。俺達が強いんだよ。なんだよ、ババアが強すぎるだけかよ)
「クックッククックック。なんだよ、なんだよ、そういう事かババア」
俺は二本の短い木剣を持ったまま、両手で白い髪をかき上げた。
「クックック。おいデカ美! お前神童とか言われて調子乗ってるみたいだな! 俺が今ここで神童を超えてやるよ」
ロベルタは両手で木剣を構えたまま動かない。
フラフラよろよろと、隙きだらけの動きで俺はロベルタに近づいていく。
「も~もたろうさん。ももたろうさん。お腰につけたきびだんご、ひとつ私にくださいな」
「や~りましょう。やりましょう。これから鬼の征伐に、ついていくならやりましょう」
俺は反撃に出た。ロベルタが攻撃を繰り出してきても最小限で避けて最小限でカウンターを決めていく。
手の甲、肘の裏側、太もも、アキレス腱、背中、腰、膝の裏側、綺麗に削ぐように木剣を滑らせていく。
ロベルタに傷が出来るような事は一切ない。しかし本物ならすでにロベルタは息絶えている。
(凄い。あのロベルタが何も出来ずにいる)
「い~きましょう。いきましょう。あなたについてどこまでも、家来になっていきましょう」
ロベルタが突然、木剣の切っ先を俺の方へと向けた。
「ファイヤーアロー!!」
そうロベルタが叫ぶと、ロベルタの周りに炎で出来た矢が何十本と現れた。
「へ~凄いな」
(感心してる場合じゃないでしょ!)
(最悪回復魔法があるから平気だろ)
(何を言って――)
その矢が次々と俺に向かって放たれていく。
俺は降り注ぐ炎の矢を掻い潜る。ロベルタは矢と同時に俺に向かって突っ込んできた。
矢と剣を避けた俺は、ロベルタの足を引っ掛けて膝をつけさせた。
背後を取り、首に目掛けて木剣を振り下ろそうとした瞬間だった。
「フレイムシリンダー!!」
地面に手のひらをつけながらロベルタが叫ぶ。
俺はレベッタ先生に何度も殺されそうになったが、その時のようなヤバイという感覚が体中に駆け巡った。
次の瞬間、ロベルタを中心にして空高く円柱型の業火が吹き荒れ、轟いた。
「ヤバかったな今のは……」
俺はすぐに飛んで逃げたが、着ている服は跡形も無くなって焦げていた。
(回復魔法かけながら逃げなかったら死んでたかもね)
「あいつやり過ぎだろ!!」
「両者そこまで!! 終わりにしろ!! ロベルタやり過ぎだぞ!!」
「先生待って下さい。まだ終わってません」
「いや終わりだ。いいなロベルタ」
「……わかりました」
「終わったみたいだね……」
レベッタ先生が近づいてきた。
「良くやったなジャン。どうだった? 成長を実感出来たか?」
「はい先生、僕自身驚いています」
「……お前なんか喋り方が気持ち悪いぞ。まあいいゆっくり休め。だけどお前さっきどさくさに紛れて私の事ババアって呼んだよな? 後で覚えておけよジャン」
「いや~それは……僕じゃなく……」
トボトボと歩いていると王子に話しかけられた。
「久しぶりだねジャン。さっきの戦いだけど……君があのロベルタと互角に渡り合うなんて思わなかったぞ」
(互角?? 何いってんだこの王子。どう見たって俺の勝ちだろ)
「互角なんてまさか……見ての通り僕のほうがボロボロですよ、ルイス殿下」
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