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第二章

襲え、奪え、燃やしちまえ

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 「ジャン様、ジャン様」
 名前を呼ぶ声で目が覚める。

 「ジェイドか……今はどの位の時間だ?」
 「もう夕刻になります。ロベルタ様達も今日の一戦を終えて帰ってきました。ジャン様を呼んでくるように言われて今起こしにきました」
 「分かった。すぐに行こう」

 ジャンは起き上がり、まだ眠い目を擦りながらロベルタが待つテントへと向かう。
 向かっている途中で見るロベルタ軍の兵士達は、どこか元気がなく疲弊していた。

 (元気ないな)
 「バルナ様がいない中で戦っているからだろう。兵士達もロベルタ様だって不安なんだよ。それに負けたら終わりの戦いなんだ。今までとは比べ物にならない程の緊張感のせいで体力を消耗しているんだと思う。早く手を打たないとまずそうだね」
 ジャンがロベルタのテントに到着する。

 「ロベルタ様! ジャンです。中へ入ってもよろしいでしょうか?」
 「入っていいわよ」

 「待っていたわよジャン。それで? 食料庫を見つけてきたのよね? どうするつもりなの」
 「今夜、その食料庫を襲撃しようと考えています」

 「今夜!? ちゃんとやれるの!?」
 「ジャン・アウルにお任せ下さい」

 「ジャン、あなた本当に見違えたわね……」
 「それはどういう意味で?」

 「今のあなたを見て、過去に学園でいじめられていた子だったと周りに言っても、誰も信じてくれない程にあなたが成長したという事よ。腹立たしいわね!」
 「ロベルタ様にそう思われてるなら光栄です」
 
 「本当にムカつくわね!」
 「明日からアウル軍も参戦します。ロベルタ様! 攻めに転じますよ!」

 「なに勝手に仕切ろうとしてるのよ! そんな事言われなくたっていつでも攻める準備は出来てるわよ!」
 「ハハハ。昨日よりなんか元気になったようだね! ロベルタ様に元気がなくなると周りにも伝わります! 兵士達の士気を上げる事が出来るのはロベルタ様だけですよ」

 ジャンがそう言うと、ズカズカとジャンに近寄ってきた。
 「ムカつくけど、あんたが言っている事は正しいわ。本当に腹が立つけどね!」
 ロベルタがジャンのお腹にパンチを繰り出した。

 「ぐへっ!」
 お腹を抱えるジャン。
 その姿を見てロベルタは笑った。

 「頼りにしてるわジャン」
 「お任せ下さい」
 ジャンはロベルタのテントを出ると、分隊長達を集める。

 「残念な知らせだけど、今夜から僕らは戦いに出る!」
 「ジャン様、それは奇襲をするという事でしょうか?」

 「奇襲と言えば奇襲かな。でも今回は人を襲う訳じゃない! 相手であるダル公国の兵糧を襲う。食料庫を襲いに行く」

 「へぇ~食料か! そいつはいいですなドクター! 奪ってきてもいいんですかい?」
 「いいぞ。でも持っていけない他は処分しろエルガルド」
 「分かってますぜドクター」

 「ドクター! オイラは~? オイラは~? なっにするの~?」
 「テディはエルガルドと一緒に行動してくれ。エルガルドの言うことを聞くように」
 「分ったよ~ん! エルガルドは美味しい料理くれるから言う事聞くよ~」

 「それじゃあ詳しく説明する」
 ジャンはテーブルに地図を広げた。

 「今分かっている食料庫は三ヶ所。テディとエルガルドの部隊はこの場所に。俺とリリア達で反対のこの場所を襲う。そしてジェイドの部隊はここを頼む! 食料庫はそれぞれの場所の地下に隠されている。昨日見に行った時は特に見張りなど居なかったけど、地下には居るかもしれないから気をつけて。もし何か不穏な事があればすぐに逃げていいから!」

 ジャンは皆を見渡す。
 「何か質問ある?」

 「大丈夫です!」
 「行きましょう主様」
 「さっさとやっちまいやしょう」
 「ゴリゴリごりご~る!」

 「よし! じゃあ行くぞ!」
 ジャン達アウル軍は、軍全体が休憩し食事を終えて寝静まる頃に出発した。

 馬を走らせ、森の入口に到着すると馬から降りた。
 森の中へは歩いて入り込んでいく。
 昨日最初に探索した滝の場所へと向かい、到着する。

 「主様? こんな場所にあるのですか?」
 「しっ! 誰か居る」
 木々に隠れて覗き込むと、ダル公国の兵士達が武器を持って滝の前に何十人立っていて、辺りをキョロキョロしていた。

 「敵が……いますね」
 「あの滝の裏に食料庫が隠されているんだ。ちょっと様子を見よう」

 (あの位の人数なら殺《や》れるだろ? 面倒だしやっちまおうぜ)
 (ユウタ少しだけ様子を見よう……)

 (チッ! めんどくせぇ! 替われ!)
 (いや! 待てってユウタ!)
 「おいリリア! 行くぞ! あいつら全員やっちまうぞ」
 
 「主様? はっ! かしこまりました」
 俺とリリア、そしてリリアの部隊が武器を抜く。

 (ユウタやめなって……何があるか分からないぞ!)
 「うるせー」

 俺はダガーを地面にガリガリと引きずりながら滝へと向かう。
 「も~もたろうさん。ももたろうさん。お腰につけたきびだんご、ひとつ私にくださいな」
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