〜鉄塊〜

yuraaaaaaa

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第二章

〜仲間の敵〜

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 大佐に言われた日からすぐに経った一週間。変異種を討伐する殲滅作戦の日が訪れた。
 他の一年生は普通に授業を受けている中,俺達は駐騎場へと向かう。
 今日は俺達にとって大一番になるかもしれないと思った。

 三年生のメンバーと俺達しか居ないからだろうか? 並々ならぬ緊張感があった。
 大佐が壇上に立ち,今日の作戦の説明をする。

 「今日攻めるAntsybalの巣はレベル2の変異種がいる所だ。話しは多少聞いてると思うが,今回行く所はこういった形をしている」
 見せられた地図を見ると,前回俺達のレベル3がいた巣のような入り組んだ迷路のような作りになっていた。 

 ただ俺達が行ったのは地下の方へと伸びていた,かなりの規模で,最後まで到達するまで大変だったが,今回はそこまでではない。
 だが,各場所場所で強いAntsybalがいるそうだ。レベル2ないしレベル3が必ずいると予想されているようだ。

 「今回の殲滅作戦に関してだが,変異種を全チームで叩こうというような作戦は取れない。偶然鉢合わせしたチームが討伐してくれ。他のチームは他のチームでAntsybalを対応しているだろうから,救援したりフォローしたりなどは難しいだろう」

 「Antsybalの巣が迷路のようになっているから,各チームがそれぞれ違う場所を探索し,そこで鉢合わせたAntsybalを殲滅してくれ!」

 「運が悪いチームか運が良いチームなのか? どうか分からないが,変異種に遭遇したチームが倒して良いぞ!!」
 「では健闘を祈る!」

 大佐の話が終わると三年生達はすぐに出発する準備を始める。
 俺達も鉄騎に乗り込み準備をする。

 いつものように,恭子から今日の作戦の詳しい詳細や作戦の話を聞く。
 恵が珍しく恭子に質問をする。

 「おい恭子!! 今日の作戦はつまり,見つけたもん勝ちって事だよな??? 一番に変異種見つけたら,ぶっ飛ばしていいって事だよなぁ!?!?」
 「そういう事ではあるね恵ちゃん」

 「じゃあ私達が一番に見つけよう! そうすればあいつと戦えるだろ?」
 「ええ! でも何処に居るか分からない」

 「いいんだよそんなの恭子! 全て早くぶっ殺していけばいいんだよ! 関係ねぇ~!!」
 「恵さんそんな事言って,勝手に暴走しないでくださいね?」

 「あぁー!? なんだようるせーな彩乃!! いつ私が暴走したんだよ!」
 「いっつもしてんだろ??」
 雷斗がすかさずツッコむ。

 「うるせーうるせーどいつもコイツも!! 変異種と戦いたくないのかよ!?」
 「そりゃあ戦いだろ! 全員戦いたいと思って,いままでやってきたんだから! でも出くわしたチームが戦うって作戦だんだ。運だろ!?」

 「雄二,てめー探知とか出来ないのかよ!」
 「そんな急に言われて,はい! 出来ますってなるわけないだろ?」
 「んだよ! 使えねーな!」

 恵は絶好調に饒舌だった。
 「話しはその辺にして?? そろそろ巣が見えてくるわよ?? 準備して!」
 恭子に言われ前の方に目をやるとそこには山が見てきた。

 伝えられた巣は,山をトンネルのように穴があいていて,奥まで続いた入り組んだ作りになっているという。
 先導していた三年のチームが止まる。まだ巣までは距離があるのが,何かあるのか??

 「見て!!! あそこ!!!」
 恭子に言われ見ると巣の入り口に俺達にとっては見覚えのある姿が見えた。

 「あれって変異種じゃないのか?」
 「そうよねやっぱり!」
 全部隊が止まってるのに一体の鉄騎が飛び出した。

 「あの馬鹿!!!」
 雷斗が言う。恵が勝手に飛び出した。

 「ぶっ飛ばしてやるあのヤローー!!」
 三年生からの指示も本部からの指示を待たずに,勝手に突っ走る。
 恵一人にする事は出来ないので,俺達チームは全員恵の後を追った。

 「おいおいおい! 今回だけはマジで洒落になってないぞ恵の野郎!」
 「あまりにも今回のは自分勝手に動いちゃって色々と問題だわ!」

 「とにかく恵の後を追おう!!」
 俺達はそのまま山のトンネルの中へと入った。

 「待てや!!!!クソ野郎!!!!」
 いつもように言っているが,恵はキレてるのかもしれない。

 どんどん奥へと向かっていく。すると開けた場所に到達した。
 そこには変異種と周りにはレベル0がいるだけだった。
 変異種と俺達五人だけが実質いるだけだった。

 そこには俺達があの時出会った変異種がいた。しかし,その時よりふたまわり以上も図体が大きくなっていた。そして光沢を纏った外皮と赤いと言うよりドス黒い赤色をさせて,羽で宙に浮いている。
 脱皮を繰り返したのだろうか? あの時より確実に強いと思わせるには十分な情報だった。

 表情なんかないが,何故か変異種が余裕を持って笑っているかのように感じた。
 「あのヤロー!! ぶっ殺してやる!!」
 「恵ちゃん!!!!! 警戒して!!!!! 注意して!!!!」

 「んな事分かってんだよ恭子!!」

 「これが言っていた変異種何ですね! 恭子さんどうすればいいですか?」
 「前回は一瞬でやられたからね……恵ちゃんと彩乃ちゃんはかなり警戒しつつ,攻撃を繰り返してみて,雄二くんは何があっても対応出来る準備を! 雷斗くんはいつもように射撃をお願い」

 「「「了解」」」
 「んな事はしらねーんだよ!!」

 早速恵が変異種に攻撃を繰り出す。彩乃も同時に攻撃のチャンスがあれば,攻撃に参加するが,変異種は軽々と二人の攻撃を避ける。あまりにも速すぎて攻撃を食らう食らわないという次元じゃない気がした。

 拳か蹴りで元気なハエに攻撃を当てるより難しいと思う。
 「クソ野郎!!」

 恵が攻撃を繰り出すが,全て変異種は避けているようだった。
 傍から見たら,恵の攻撃はスピードと動き,そして手数が凄い。だが一度もまだ当てられていないようだった。

 彩乃は恵が攻撃した後にチャンスだと思った瞬間瞬間に攻撃を繰り出そうが,死角から繰り出そうが,タイミングを外そうが変異種に当たらない。
 
 雷斗は攻撃を当ててはいるが,全くダメージがないかのようにしている。
 それでも雷斗は攻撃し続けている。

 不気味なのは,それだけ避けているのにもかかわらず,攻撃をまだ繰り出してこない変異種。
 俺達の事を観察してるかのようで,俺は不気味で怖かった。

 突然変異種が動き出した。最初に攻撃をした相手は意外にも恭子にだった。
 一番近くにいた恵や彩乃ではなく,一番影が薄い恭子にだった。
 このチームのリーダーが恭子である事を理解しているのだろうか?

 まさか恭子から攻撃されるとは思わなかった俺は,ワンテンポフォローが遅れたせいで,恭子の鉄騎を負傷させてしまった。

 「恭子大丈夫か??」
 「ええ! 大丈夫よ」
 「コイツ何考えてるのかわからね~」

 「キッキッキッキッキ」
 変異種が笑っているかのような鳴き声が聞こえた。戦いを楽しんでいるかのようだ。

 「いまこの野郎絶対笑ったな!! 殺す」
 恵が全開で変異種に攻撃を仕掛ける。空中で繰り広げられる攻防。

 雷斗は集中して,着実に弾を打ち続けている様子だった。
 変異種はとにかく恵の攻撃を避けている。さっきまで全く避けてさえいなかった雷斗の攻撃をも避け始めている。


 「この変異種成長してるわ! 成長というより戦って学んでる感じがするわ! 時間をかければかける程不利になりそう!」
 恭子が言う。

 「でもどうすりゃいい?」

 「攻撃が当たらないならそもそも話にならないだろ??」
 「雷斗くんどう?? どうにかなりそう??」

 「いや! 無理だな多分。あいつの動きを止めるには俺の弾じゃあ時間がかかる」
 「分かったわ! 雄二くんあいつの羽どうにか出来ない? 飛んでるのが相当面倒くさいから! 地面に落としたら有利にはなると思うの」

 「え!? 俺が!?」
 「雄二くん以外難しいでしょ??」
 
 「分かった……なんとかしてみるよ!」
 俺は重大な事を任された。

 「今から雄二くんが飛んでる変異種をどうにかしてくれるから皆上手く気を逸らして!」
 「「「了解」」」

 俺はあいつの羽をもぎ取る為にまずは透明化になった。
 でも剣を扱える訳でもないし,どうするか迷っていると,
 「とにかく触れれば爆発で,どうにかなるでしょ??」

 「どうにかなりそうだけども!」
 「頼んだわよ!」
 そう言われてもとんでもないスピードで動いているアイツに触れるという事自体が難しい。
 
 徐々に奇妙な動きを始めた変異種。さっきまで直線的だった動きが,ゆらゆらと掴みどころがないような動きに変わってきている。ゆっくりになっている訳ではなく,スピードを保ったままゆらゆらとしている。

 あれ? ここで初めて俺は自分で自覚したのだが,いつから変異種と恵の動きを追えるようになったのか? そんな事はどうでもいい。今は変異種の動きを止める事が先決だ。

 師匠がそういえば,言っていたっけな??
 「こんなにスローモーションの動きに意味ないと思っているかもしれないけど,全て追えるようになったら,どれだけ速い動きにも対応出来るようになります」

 師匠が言っていた事は本当だったみたいだ。

 ゆらゆらと動く変異種と攻防を繰り広げている恵をよそに,俺はやつの背後に回る。
 恵が攻撃をして意識が恵に向いている。俺はそっとやつの羽に触れた。

 俺はかなりの火力で爆発させた。変異種の背中から煙が上がりながら羽が取れて,地面へと落ちていく。
 その瞬間に恵と彩乃が畳み掛ける。

 すぐに変異種は起き上がるが,彩乃と恵の攻撃を避けられない。攻撃を初めて食らう。
 これでもかと恵と彩乃は攻撃をしている。ボクシングでガードしか出来ない状態みたいな事になっている変異種。

 足を使って距離を取ろうとするが,恵と彩乃,雷斗がそれを許さない。
 俺もフォローに入る。恭子もチャンスだと思っているのか射撃でフォローに入る。

 「オラオラ!! 死ねこのやろう!!」
 絶対に逃さない恵と彩乃。

 相当攻撃を食らわしているのに関わらず,倒れるような素振りが見えない。
 外皮の表面が切られている様子は見て取れるが,腕が切れたりはしていない。

 想像以上に硬いという事なんだと思う。

 ただ完全に押しているのは俺達で,変異種は何も出来ていない。だけど,何故か血の気が引くような嫌な予感がしている。何か事故に遭う時のような危険な時に遭う瞬間のような,一瞬でヤバいと思う感じによく似ていた。
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