もち子2号

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「夢の世界で、僕は」

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⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。

 ぼくゆめていた。
それは、現実げんじつなのか、まぼろしなのか、からないくらいの白昼夢はくちゅうむ

ぼくゆめていた。
ながながゆめを。

⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚

「朝だよ!!起きて!」
聞き覚えのない声に目をしばしばとする僕。
「……君、誰?」
しばらくの沈黙、
「……は?」
ウサギの様に長い耳と、狼のようにフサフサとした尻尾を生やした、猫の様に背中を丸めたその生き物は、不思議そうに顔を歪める。
本当に初めて会ったのだから、そんな顔をされても…
「と、に、か、く!!悪い冗談はやめて、さっさと着替えてよね!!"ソニア"!!」
「えっ…?」
チワワ位の大きさのソイツは、聞き覚えのない名前を口に出した。
「えっ…?じゃないでしょ!!早く!!」
「ま、待って!!」
僕がそう叫ぶと変な顔をしてこっちを見る。
「ぼ、僕…、ソニアじゃ、ない…」
小さく、だが、否定をする。
「……」
少しの間しかめっ面をするその生き物は、はぁ…とため息をついたかと思うと、
「はいはい、なんだかよくわかんないけど、早く支度しなよ~」
と、言って前足?で器用にドアを開けて出ていってしまった。
「……な、なんなんだ…?」
現状に理解が追いつかない僕はただただ困惑するだけだった。
(とりあえず、まずは…)
周りの様子を見てみようと、目をドアから離した瞬間だった、"ソレ"が目に入ったのは
「真っ白い…机…」
現状を把握する為にも、他のものも見なければ行けないのに、"ソレ"から目が全く離せない。
ただの真っ白な机と椅子、ペン立てや、本なども置いていない。ただただ真っ白な机だ。
先程あの変な生き物と喋っていた時に気づいたが、真っ白なただの机よりも、赤と青の不思議な壁紙や、見たことがない文字がびっしり書いてある本が詰まっている本棚、ベッドから起きた時に目に入ったはずのゴージャスな電球、現実味がないソレに普通なら興味を示すだろう。
(ダメだ…目が離せない…)
他のものに興味を示さなければいけないのに、頭では分かっているのにも関わらず、目が動こうとしない。
(あぁ…どうして…)
ギシッと音がしてベッドから足を下ろした僕は、気づいたらその机に触れようとしていた。
(僕は…)
人差し指が机に触れようとした瞬間唐突な眠気に襲われた。
「あ…?」
間抜けな声を出して、僕は深い闇に包まれた。

『君の名前は』

夢の中で誰かに聞かれた気がした。

⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚

「……ふぁ…」
2度目に起きたのはベッドではなく布団の中だった。
ちゅんちゅんと雀の声が聞こえてくるのを感じて、今は朝なんだと分かった。
「さっきのは…」
ムクっと起き上がり、少し周りを見てみる。
白い壁、フローリングの床、漫画がバラバラに並んでいる本棚、液晶テレビ、窓、カーテン…etc...
見覚えのあるその景色に先程のことは夢だったのだと理解する。
(まぁ…そうだよね、よく考えたら、あんな生き物いるわけないもんね…)
少し残念だと思いながらも、ほっとしている自分がいた。
(そうえば、今日は何日だっけ。)
ふと、カレンダーに目を向けた。
その瞬間だった、違和感を感じたのは。
(8月12日…、)
カレンダーの今日の日付はそうなっていた。
なんら変わらない、普通の一般的なカレンダーに違和感を感じてしまっていた。
(8月…)
夏休みだからだろうか…、違和感を感じているのは…。
日めくりカレンダーを使っていた、だから1日早くめくってしまったんじゃないか。
夏休み、生活習慣が狂ったんだろう。
そう思い、枕元のケータイを手に取ろうとした時だった。
「…アレ…ない…?」
いつもあるはずのケータイがそこになかった。
「え、な、え??」
焦って変な声が出た。
もしかしたら真夜中寝ぼけてトイレに持っていったのかもしれないと、立ち上がり、廊下に繋がるドアを開けようと、ドアノブに手をかけた、その時だった。
「ふ、ふぁああ~」
不意に出たあくび、唐突にきた眠気。
ドアノブから手を離し、布団に戻る。
(…また、起きてからでもいいか…)
アレほど気になっていたカレンダーの日付や、ケータイの事が全部どうでも良くなってしまった。

『生まれた日は』

どこからか聞こえてきた声を不思議に思いながらも、襲いくる眠気に身を任せ、また、闇に包まれていった。

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「ん"っ"!!!!!!」
次に起きたのは、目覚ましがうるさく鳴り響く部屋だった。
「うるさい!!」
バシン、と、目覚ましを止める音が部屋に響く。
もぞもぞと動くベッドの上のソレに声をかける
「お嬢様、朝でございます。」
「んん~っ!!!!ねむぃいい~…」
布団から出ようとしない彼女に、
「お嬢様!いい加減にしてください!」
少し大きめの声で怒った。
「嫌ァ~!!」
駄々をこねるその子に対して、
「あぁ~…今日は私特性のパンケーキでしたのに…!」
と、わざとらしく首を振りながら部屋をあとにしようとする。
「ま、待って!!起きたわ!!今起きた!」
可愛らしい腰あたりまである金髪の少女は急いで飛び上がった。
「それは良かったです、それじゃあ行きましょうか…。」
それを見る第三者の僕。

『覚えていますか』
 
まだ仕事が残っているのに、と、謎の罪悪感を抱きながら、眠気に襲われ、闇に包まれた。

⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。˚✩⋆。

次に目が覚めたのは、真っ暗な闇の世界だった
『思い出したかい』
目の前にいる、白い人の形をしたソイツは
『いくつか質問をしてもいいかい?』
問いかけてきた。
「…待って…君は誰…?」
質問をしたいのは僕の方だ。
『質問してもいいかい?』
「その前に、君は誰なの?」
『質問してもいいかい?』
「君が誰か教えてくれたら良いよ」
『質問してもいいかい?』
「っ~!!!!」
同じ言葉を繰り返すソイツに苛立ちを感じ、
「あっそう!!!!じゃあ僕も答えないよ!!」
と、怒りの言葉を返した。
『それは残念だね。』
そう寂しそうに返すソレに対して
「…違う言葉も…喋れるんじゃないか…」
少しの驚きを感じた。
『本当に質問しちゃダメなのかい?』
先程とは違う問いかけに、僕は、
「……少しだけなら…」
気を許してしまった。
『本当!!?』
嬉しそうに声をワントーン高くあげた。
『じゃあ、君の名前は?』
「……高橋たかはし鹿目かなめ…」
『じゃあ、君の学年は?』
「2年…、2年D組…」
『じゃあ、君の家族は?』
「お母さん、お父さん、弟、僕の四人家族、」
『……本当に?』
スムーズな会話は止まった。
「……本当はまだいたよ。」
『君の家族は?』
「……ウサギのアロマ、ネコのルビー、チワワのトニー」
『今は何処にいるの?』
「…いないよ、ここにはいない。」
スっと口に出した。
『そっか。じゃあ次の質問ね。』
何事もなかったようにまた質問をしだす、年齢、好きな物、夢、職業、友達がいたかどうか。
「……ねぇ、」
『じゃあ、次の質問ね。』
「ねぇ、」
『君の…』
「ねぇ!!!!」
流石に疲れてきたのだろう、少しだけだと言ったのに、ソイツは沢山質問をしてくる。
その感情がソイツにも伝わったのだろう。
『これで最後の質問だよ。』
怒らないで、とでも言うように優しい口調で言う。
「…最後なら…まぁ…」
『君の』
好きな人は?

その言葉を聞いた瞬間、突然光に包まれた。

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目覚めたのは、真っ白い病室だった。
「朝ですよ~」
目を開けると、すぐ隣には綺麗な看護師さんが立っていた。
ウィーンという音と共に起き上がる身体。
だがしかし、それは自分の力で起き上がったものではなかった。
「朝食、今お持ちしますね。」
看護師が立ち去り、ふと横を見ると。
「おはようございます。」
『あぁ…おはよう。』
愛しい彼女は口を開いて言った。
「今日は何の日か分かりますか?」
『あぁ…分かるよ…』
少し驚いた顔をしたあとに、ふふっ、と上品に笑った彼女は、しわしわの手を握って、優しい声で言った。
「貴方が生まれてきて、貴方と出会えて、本当に良かった。」

蝉の声がうるさく鳴り響く夏の日。

「…おめでとう…僕の愛しい人、」

その日、僕はまた夢を見た。
暗い闇ではなく、白い光に包まれて。

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「バカねぇ……、最後の最後で私を思い出すなんて…。」

そう言って、幸せそうに微笑んだおばあちゃんは、金髪の髪に黒い服を着て、静かに微笑んだ。

彼女は、ソニア=マッカートニー=レイ
彼が死ぬほど愛した令嬢だ。


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 ぼくゆめていた。
それは、現実げんじつなのか、まぼろしなのか、からないくらいの白昼夢はくちゅうむ

ぼくゆめていた。
ながながゆめを。

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