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第一章 覚 醒
十三 新たな流れ
ファルクの魔術授業も始まり、忙しくなってきたけれどこれで魔法がと思うと楽しい。そして、他の授業も頑張るようになった。そもそも、リルアは大人しく真面目な子だったしね。慌ただしく数日が経った。
今日は歴史に語学でお兄様と一緒に勉強をする。お兄様の方の話も聞きながら自分の課題もこなした。午前の授業も終わり、お兄様はお父様の執務のお手伝いに私は図書室で調べものをと思っていたら、学習室を出たところで、
「王女様! 一日で脱落とは情けない。それでも王族としての気概が見られませんね」
ふんぞり返るマドラが待ち構えていて、アナベルとバルドに庇われるように後ろに下がらされた。お兄様は呆れたような声を出した。
「マドラ、リルアは神殿の司祭長から特別講師を派遣してくれたと言っただろう」
「聞いておりましたが、どこの馬の骨とも分からぬ者が王女様のご指導など、どうかしております! やはり我々がご指導を」
――どうかしてるのはそっちよ。あなたのお父様は王宮の筆頭魔術師かもしれませんけど、あなたには何もないのよ? あなたに言われる筋合いはないと思う。
「ファルクは優秀だ。マドラが侮る人物ではない」
お兄様がはっきりと言い切った。
――あれ? もしかしたらもう調査結果がお兄様には知らされているのかもしれませんね。
「王子様まで、あのような者に惑わされておられるとは、やはり神殿は何か良からぬことを企んでいるに違いありません。司祭が魔術を教えるなど」
「あら、光と水の癒しは神殿のものではありませんか」
「王女様、何を仰るのですか? 司祭は神事と癒しだけしていればいいのです」
――現にファルクからは強い水の匂いがする。水の癒しを使う司祭だからかもしれない。これも魔力感知のお陰ね。逆にマドラからはあまり感じられないけど。
「マドラ、いい加減にしろ。私達は忙しいのだ。そのような言いがかりに付き合っている暇はない」
悔しそうに私達を眺めているマドラを置いて私もお兄様と一緒に行くことにした。一人になるとマドラがついてきそうで嫌だった。
「……マドラにも困ったものだ。将来は私の右腕と思っていたんだがな」
「……」
バルドとアナベルらも黙ってついてくる。
「そうそう、リルアの護衛予定の者も騎士団長らが許可して、近々王宮に面会に来る予定になっている」
「まあ、許可が下りたのですね。そうですか、あの、アスラン様ですか」
「まるで英雄か何かの言い方だよね。リルアは何処で彼のことを知ったのかい?」
「どこ、だったでしょうか。きっと侍女達の噂話で……」
――く、苦しい言い訳にしかならない。でもこれであとはフリーニャと出会えればメイン三人と出会ったことになる。ゲームのパッケージイラストで武器を構えている三人組。中央がフォルティスお兄様、右隣がエードラム皇帝、左がフリーニャ、そして少し後ろで描かれているのが、私と……。
そこへ、ガラハド卿がやって来た。
「王子様。護衛希望者が面会に参ったようです」
「そうか――、早かったな」
午後からの予定は変更してアスラン様との面談となった。王城の執務区間にある客間までガラハド卿らと向かう。既にアスラン様は座って待っていたが私達が入ると立ち上がって胸に手を当てるというエイリー・グレーネ方式の礼をする。
「アスラン、よく来てくれた」
「お呼びにより参りました」
「うむ。大儀であった。では早速……」
ガラハド卿が私の護衛役での待遇などの話をする。
「それで、アスラン殿は砂漠国ジプラの出だとお聞きしたが」
「ええ、ジプラ連邦国の下位貴族の出身です。冒険者として各地を転々としておりましたから、ここ数年は戻っておりませんが、何せここからだと遠いです。やはりエイリー・グレーネの西の樹海が冒険者としては活動しやすい」
アスラン様はとても落ち着いた雰囲気で話された。その様子はとても下位貴族とは思えなかった。
「あら、魔道船を使えば早いのでは……」
そのとき私以外の者がぎょっとした様子で私を見た。
――あれ? エードラム魔道帝国の専売特許の超早い船あったよね。魔道石で動くやつ。そのうち浮遊できように開発して、最終決戦場に乗り込むことができるようになるの。あれがないとラスボス倒せないのよ。
「小さなレディはどこまでご存じなのか」
ぽつりとアスランが呟いた。
「リルア、魔道船とは? そんなものは聞いたことはないよ」
「あ、あれそうだったかしら? おほほほ。何かの本で読んだのかもしれませんわ」
慌てて言い繕うと逆に部屋の温度が凍りつくように下がってしまった。
「本ですか……、それはとても興味深いですね。それで私の護衛役は先に申した通り次の方が見つかるまでと言うことでよろしいか?」
「ああ、よろしく頼むよ。アスラン殿。ではいつから来てくれるのか?」
「身軽いもので何時からでも、なんなら今からでも大丈夫です」
「おお、それはこちらも話が早くて助かる。では早速契約書に……」
ガラハド卿は幾枚かの書類を出してアスランに説明をし始めた。まさか、あの皇帝に守ってもらうことになるなんて、ああ、誰かに自慢したい! それに間近であの剛腕な剣技を見ることができるのね。
今日は歴史に語学でお兄様と一緒に勉強をする。お兄様の方の話も聞きながら自分の課題もこなした。午前の授業も終わり、お兄様はお父様の執務のお手伝いに私は図書室で調べものをと思っていたら、学習室を出たところで、
「王女様! 一日で脱落とは情けない。それでも王族としての気概が見られませんね」
ふんぞり返るマドラが待ち構えていて、アナベルとバルドに庇われるように後ろに下がらされた。お兄様は呆れたような声を出した。
「マドラ、リルアは神殿の司祭長から特別講師を派遣してくれたと言っただろう」
「聞いておりましたが、どこの馬の骨とも分からぬ者が王女様のご指導など、どうかしております! やはり我々がご指導を」
――どうかしてるのはそっちよ。あなたのお父様は王宮の筆頭魔術師かもしれませんけど、あなたには何もないのよ? あなたに言われる筋合いはないと思う。
「ファルクは優秀だ。マドラが侮る人物ではない」
お兄様がはっきりと言い切った。
――あれ? もしかしたらもう調査結果がお兄様には知らされているのかもしれませんね。
「王子様まで、あのような者に惑わされておられるとは、やはり神殿は何か良からぬことを企んでいるに違いありません。司祭が魔術を教えるなど」
「あら、光と水の癒しは神殿のものではありませんか」
「王女様、何を仰るのですか? 司祭は神事と癒しだけしていればいいのです」
――現にファルクからは強い水の匂いがする。水の癒しを使う司祭だからかもしれない。これも魔力感知のお陰ね。逆にマドラからはあまり感じられないけど。
「マドラ、いい加減にしろ。私達は忙しいのだ。そのような言いがかりに付き合っている暇はない」
悔しそうに私達を眺めているマドラを置いて私もお兄様と一緒に行くことにした。一人になるとマドラがついてきそうで嫌だった。
「……マドラにも困ったものだ。将来は私の右腕と思っていたんだがな」
「……」
バルドとアナベルらも黙ってついてくる。
「そうそう、リルアの護衛予定の者も騎士団長らが許可して、近々王宮に面会に来る予定になっている」
「まあ、許可が下りたのですね。そうですか、あの、アスラン様ですか」
「まるで英雄か何かの言い方だよね。リルアは何処で彼のことを知ったのかい?」
「どこ、だったでしょうか。きっと侍女達の噂話で……」
――く、苦しい言い訳にしかならない。でもこれであとはフリーニャと出会えればメイン三人と出会ったことになる。ゲームのパッケージイラストで武器を構えている三人組。中央がフォルティスお兄様、右隣がエードラム皇帝、左がフリーニャ、そして少し後ろで描かれているのが、私と……。
そこへ、ガラハド卿がやって来た。
「王子様。護衛希望者が面会に参ったようです」
「そうか――、早かったな」
午後からの予定は変更してアスラン様との面談となった。王城の執務区間にある客間までガラハド卿らと向かう。既にアスラン様は座って待っていたが私達が入ると立ち上がって胸に手を当てるというエイリー・グレーネ方式の礼をする。
「アスラン、よく来てくれた」
「お呼びにより参りました」
「うむ。大儀であった。では早速……」
ガラハド卿が私の護衛役での待遇などの話をする。
「それで、アスラン殿は砂漠国ジプラの出だとお聞きしたが」
「ええ、ジプラ連邦国の下位貴族の出身です。冒険者として各地を転々としておりましたから、ここ数年は戻っておりませんが、何せここからだと遠いです。やはりエイリー・グレーネの西の樹海が冒険者としては活動しやすい」
アスラン様はとても落ち着いた雰囲気で話された。その様子はとても下位貴族とは思えなかった。
「あら、魔道船を使えば早いのでは……」
そのとき私以外の者がぎょっとした様子で私を見た。
――あれ? エードラム魔道帝国の専売特許の超早い船あったよね。魔道石で動くやつ。そのうち浮遊できように開発して、最終決戦場に乗り込むことができるようになるの。あれがないとラスボス倒せないのよ。
「小さなレディはどこまでご存じなのか」
ぽつりとアスランが呟いた。
「リルア、魔道船とは? そんなものは聞いたことはないよ」
「あ、あれそうだったかしら? おほほほ。何かの本で読んだのかもしれませんわ」
慌てて言い繕うと逆に部屋の温度が凍りつくように下がってしまった。
「本ですか……、それはとても興味深いですね。それで私の護衛役は先に申した通り次の方が見つかるまでと言うことでよろしいか?」
「ああ、よろしく頼むよ。アスラン殿。ではいつから来てくれるのか?」
「身軽いもので何時からでも、なんなら今からでも大丈夫です」
「おお、それはこちらも話が早くて助かる。では早速契約書に……」
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