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第一章 覚 醒
二十六 樹海の街のギルドにて
アラス様は私を横抱きに乗せると顔を覗き込んできた。迫力のイケメン様の顔が間近にある。実は『薔薇伝』ではアラス様がダントツで人気だった。
「あの……」
「確かに、調子は悪そうだな」
「リルア様に何ということをっ……」
バルドが咄嗟に動こうとしたけれどアラス様だと分かっているので歯ぎしりをしながら押し留まった。サブマスがそんな様子を苦笑して見ていた。
「おいおい、あの一級冒険者のアスランともあろう者が子どもの機嫌をとるとはな。くくくっ。面白れぇものが見れたな。それにそのお姫様はどうやら気がついているみたいだぞ。気分の悪さはそのせいだろう」
「……確かに彼女なら気がつくのは当然か」
「それはどういうことなのでしょうか?」
私の問いにアラス様はにこりと笑っただけだった。
「姫君のこの後の予定は?」
「ええと領主館でご挨拶をして調査隊の準備と休養を取るようになっております。明日は早朝から樹海の入り口の調査をしてお城へ戻りますわ」
夜も調査隊は出るみたいけれど私はお留守番の予定。やっぱりモンスターはゲームと同じように夜行性が多く、上位種も出やすいみたい。これも王宮の図書室で読んだ元冒険者グレイヤードの手記に書いてあったの。
「じゃあ、その調査隊に私も混ぜてもらおうか。姫君の護衛は多い方がよいだろう」
「よろしいのですか? 私はとても嬉しいですけど」
こくりと私が小首を傾げているとサブマスとバルドが溜息をついていた。アナベルは無表情のまま。
―ー何かいけなかったかしら? アラス様が来て下さると心強いですのよ?
「そう言えばアスラン様の剣技の方はどうなのでしょうか?」
「おお、最上位の技の会得はまだだが、剣の方は随分使い慣れてきたぞ。元々私のための剣だと思ったほどの物だ」
「まあ、流石ですわ。一度私にもお見せくださいませ」
「そうだな。姫君の仰せのままに」
「おーお、にやけた面になってやがる。お前がお姫様を膝に抱っこするとかありえんな。お前のこんな姿を見ることがあるとはなあ」
サブマスが揶揄ってくるけれど確かに私はアラス様のお膝の上。まだ小さいから良いの。大人になって人前でこんなの恥ずかしいじゃないの。
お兄様も上で話が終わったので部屋に迎えににいらっしゃった。そしてにこりと微笑むと私をアラス様から奪い取るように抱き上げたのだった。
私はまだ子どもだけどそう何度も抱き上げられるほど小さくないと思うのよ。お兄様はアラス様にも穏やかな笑みを向けた。何だかお兄様はやや不機嫌そうですわね。その微笑み方なので分かります。
「あなただろうと思っていましたけどね。リルアは具合が良くなさそうなので切り上げて領主館で休ませようと思っています」
「そうだな。それが良いだろう」
「あの、お兄様、アスラン様は明日の調査に護衛として一緒に来てくださると」
「それはわざわざのご助力、恐縮いたします」
そうして私達は領主館へ向かい、挨拶を済ますと私は休ませてもらった。
領主館も普通で、穏やかだが有能そうな雰囲気の壮年の男性が迎えてくれた。実質彼がこの街の取り纏め役だから無能な者では務まらない。
あのギルドだけ黒い靄のようなものが……。あれは一体。アラス様は気がついているのかしら?
部屋から見える樹海へ私は視線を送った。普通の緑の樹々が見える。どこまでも緑の樹ばかりで静かな様子だった。
――モンスターの氾濫、本格的なのはまだ先よね。だって、それは私が十八歳のときになるはずだもの。まだ八年も先だから。
樹海から押し寄せるモンスター達の姿。焼け落ちるエイリー・グレーネ城。パチパチと弾ける炎の音まで聞こえてきそうだったあの『薔薇伝』のオープニングが脳裏に浮かぶ。絶対そんなことにはさせない。
翌早朝、私達は樹海の畔へと向かう。騎士団の分隊が一緒に同行してくれる。樹海へと続く門にも常駐の警備兵がいて、樹海へ出入りする者の確認を行い、モンスターの状況をいち早く王都まで知らせる役目を担っている。
樹海が街を侵食しないよう障壁がぐるりと張り巡らされていた。その昔、この地に降臨した光の神が創造したとされている。勿論空を飛ぶ者までもは遮ることはできないけれど大概のモンスターはこの障壁を超えられない。
「じゃあ、行ってくるよ」
樹海の中にも避難場所や道もいくつか存在していて、今私がいるのは障壁の外に出たけれどまだ樹海の入り口くらいにある広場だった。
私とアラス様、騎士団の数名は待機、お兄様とバルド達はもう少し奥まで調査に向かわれた。時折冒険者パーティが通り過ぎていく。私を物珍しく見る人もいたけれど側に居る騎士団の鎧を見ると軽く会釈をして去っていく。
「今のところは普通の森よね」
「でも油断は禁物だ」
アラス様の言葉に肯く。本当はお茶でも飲みながら色々とお話をしたいけれどアナベルは領主館に置いてきた。まさかこんなところでゆっくりお茶など飲もうとは思わないしね。
「それでアスラン様の魔道具などの進み具合はそうなのでしょうか?」
いずれは魔道船が空を飛べるようにしていただかないと。
「ああ、それは……」
そのときお兄様達の進んだ方からドンと音が響いてきた。かなりの音だった。
そして、悲鳴のような声も聞こえる。
「うわぁぁぁ。た、助けてくれ!」
音がした方の道の奥から必死で叫びながら走ってくる人影が見えた。転げるようにしてやってきたのは、あのハーレムパーティの青年と、続いてパーティメンバーの女性も。
「どうしたのだ!」
騎士団の一人が彼らに声を掛けると青年はよろよろとしながら近寄って来た。
「いきなりウルフ系のデカイのが出てきやがって……、あんなの見たことない。助けてくれ。怪我をしてるんだ」
言われて見ても少し肩が裂けている程度だった。
「それでそのモンスターは? そのまま逃げてきたのか?」
「い、いいや。別の集団が来ていて、そいつらが……」
もしかしてその集団はお兄様ではないの?
「その集団に擦り付けてきたのですね? なんて卑怯な」
「な、何だと。俺は未来の勇者候補とも言われているのだぞ! その俺に……」
「ほう、勇者とな。初耳だな」
アラス様が私の前庇うように出ると青年は怯んだ。
「それにあなた方のパーティには他にもう一人おられませんでしたか?」
「ああ? 何でそんなことを知っているんだ? あいつならさっきのところに置いてきた。そもそもあいつは行き倒れて拾ってやったときから見栄えは悪いし、気が利かないし、使えねえんで、パーティのメンバーから外そうと思っていたところなんだ。だからあいつがモンスターにやられている間、俺らが逃げる時間を稼ぐくらいしてもらわないとな。本当にそれぐらいしか取り柄がないんだからな」
「では彼女とあなたのパーティはもう何も関係ないのですね?」
「あ、ああ。それがなんだっていうんだよ。今頃もう食われているさ」
そのとき獣の唸り声が響いた。私はアスラン様を見上げた。
「では私は参ります」
「あの……」
「確かに、調子は悪そうだな」
「リルア様に何ということをっ……」
バルドが咄嗟に動こうとしたけれどアラス様だと分かっているので歯ぎしりをしながら押し留まった。サブマスがそんな様子を苦笑して見ていた。
「おいおい、あの一級冒険者のアスランともあろう者が子どもの機嫌をとるとはな。くくくっ。面白れぇものが見れたな。それにそのお姫様はどうやら気がついているみたいだぞ。気分の悪さはそのせいだろう」
「……確かに彼女なら気がつくのは当然か」
「それはどういうことなのでしょうか?」
私の問いにアラス様はにこりと笑っただけだった。
「姫君のこの後の予定は?」
「ええと領主館でご挨拶をして調査隊の準備と休養を取るようになっております。明日は早朝から樹海の入り口の調査をしてお城へ戻りますわ」
夜も調査隊は出るみたいけれど私はお留守番の予定。やっぱりモンスターはゲームと同じように夜行性が多く、上位種も出やすいみたい。これも王宮の図書室で読んだ元冒険者グレイヤードの手記に書いてあったの。
「じゃあ、その調査隊に私も混ぜてもらおうか。姫君の護衛は多い方がよいだろう」
「よろしいのですか? 私はとても嬉しいですけど」
こくりと私が小首を傾げているとサブマスとバルドが溜息をついていた。アナベルは無表情のまま。
―ー何かいけなかったかしら? アラス様が来て下さると心強いですのよ?
「そう言えばアスラン様の剣技の方はどうなのでしょうか?」
「おお、最上位の技の会得はまだだが、剣の方は随分使い慣れてきたぞ。元々私のための剣だと思ったほどの物だ」
「まあ、流石ですわ。一度私にもお見せくださいませ」
「そうだな。姫君の仰せのままに」
「おーお、にやけた面になってやがる。お前がお姫様を膝に抱っこするとかありえんな。お前のこんな姿を見ることがあるとはなあ」
サブマスが揶揄ってくるけれど確かに私はアラス様のお膝の上。まだ小さいから良いの。大人になって人前でこんなの恥ずかしいじゃないの。
お兄様も上で話が終わったので部屋に迎えににいらっしゃった。そしてにこりと微笑むと私をアラス様から奪い取るように抱き上げたのだった。
私はまだ子どもだけどそう何度も抱き上げられるほど小さくないと思うのよ。お兄様はアラス様にも穏やかな笑みを向けた。何だかお兄様はやや不機嫌そうですわね。その微笑み方なので分かります。
「あなただろうと思っていましたけどね。リルアは具合が良くなさそうなので切り上げて領主館で休ませようと思っています」
「そうだな。それが良いだろう」
「あの、お兄様、アスラン様は明日の調査に護衛として一緒に来てくださると」
「それはわざわざのご助力、恐縮いたします」
そうして私達は領主館へ向かい、挨拶を済ますと私は休ませてもらった。
領主館も普通で、穏やかだが有能そうな雰囲気の壮年の男性が迎えてくれた。実質彼がこの街の取り纏め役だから無能な者では務まらない。
あのギルドだけ黒い靄のようなものが……。あれは一体。アラス様は気がついているのかしら?
部屋から見える樹海へ私は視線を送った。普通の緑の樹々が見える。どこまでも緑の樹ばかりで静かな様子だった。
――モンスターの氾濫、本格的なのはまだ先よね。だって、それは私が十八歳のときになるはずだもの。まだ八年も先だから。
樹海から押し寄せるモンスター達の姿。焼け落ちるエイリー・グレーネ城。パチパチと弾ける炎の音まで聞こえてきそうだったあの『薔薇伝』のオープニングが脳裏に浮かぶ。絶対そんなことにはさせない。
翌早朝、私達は樹海の畔へと向かう。騎士団の分隊が一緒に同行してくれる。樹海へと続く門にも常駐の警備兵がいて、樹海へ出入りする者の確認を行い、モンスターの状況をいち早く王都まで知らせる役目を担っている。
樹海が街を侵食しないよう障壁がぐるりと張り巡らされていた。その昔、この地に降臨した光の神が創造したとされている。勿論空を飛ぶ者までもは遮ることはできないけれど大概のモンスターはこの障壁を超えられない。
「じゃあ、行ってくるよ」
樹海の中にも避難場所や道もいくつか存在していて、今私がいるのは障壁の外に出たけれどまだ樹海の入り口くらいにある広場だった。
私とアラス様、騎士団の数名は待機、お兄様とバルド達はもう少し奥まで調査に向かわれた。時折冒険者パーティが通り過ぎていく。私を物珍しく見る人もいたけれど側に居る騎士団の鎧を見ると軽く会釈をして去っていく。
「今のところは普通の森よね」
「でも油断は禁物だ」
アラス様の言葉に肯く。本当はお茶でも飲みながら色々とお話をしたいけれどアナベルは領主館に置いてきた。まさかこんなところでゆっくりお茶など飲もうとは思わないしね。
「それでアスラン様の魔道具などの進み具合はそうなのでしょうか?」
いずれは魔道船が空を飛べるようにしていただかないと。
「ああ、それは……」
そのときお兄様達の進んだ方からドンと音が響いてきた。かなりの音だった。
そして、悲鳴のような声も聞こえる。
「うわぁぁぁ。た、助けてくれ!」
音がした方の道の奥から必死で叫びながら走ってくる人影が見えた。転げるようにしてやってきたのは、あのハーレムパーティの青年と、続いてパーティメンバーの女性も。
「どうしたのだ!」
騎士団の一人が彼らに声を掛けると青年はよろよろとしながら近寄って来た。
「いきなりウルフ系のデカイのが出てきやがって……、あんなの見たことない。助けてくれ。怪我をしてるんだ」
言われて見ても少し肩が裂けている程度だった。
「それでそのモンスターは? そのまま逃げてきたのか?」
「い、いいや。別の集団が来ていて、そいつらが……」
もしかしてその集団はお兄様ではないの?
「その集団に擦り付けてきたのですね? なんて卑怯な」
「な、何だと。俺は未来の勇者候補とも言われているのだぞ! その俺に……」
「ほう、勇者とな。初耳だな」
アラス様が私の前庇うように出ると青年は怯んだ。
「それにあなた方のパーティには他にもう一人おられませんでしたか?」
「ああ? 何でそんなことを知っているんだ? あいつならさっきのところに置いてきた。そもそもあいつは行き倒れて拾ってやったときから見栄えは悪いし、気が利かないし、使えねえんで、パーティのメンバーから外そうと思っていたところなんだ。だからあいつがモンスターにやられている間、俺らが逃げる時間を稼ぐくらいしてもらわないとな。本当にそれぐらいしか取り柄がないんだからな」
「では彼女とあなたのパーティはもう何も関係ないのですね?」
「あ、ああ。それがなんだっていうんだよ。今頃もう食われているさ」
そのとき獣の唸り声が響いた。私はアスラン様を見上げた。
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