【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!

えとう蜜夏

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02 聖女の聖別の日

 そんなある日、神殿の無い小規模な村々への巡回布教日が知らされた。
 
 半年か一年に一度の割合で神殿から神官が村にやってくる日があり、この時に村の婚姻祝いや葬式など祈祷をまとめて行われる。

 子どもに対しても健康祈願や聖別の儀式が行われる。八歳になると女子は聖女の資質があるのか男子なら神官の資質があるのかを選別する儀式だった。

 女神様の大神殿で仕えることができるか判別される。村の大人達からは選ばれると名誉なことなんだよと教えてくれた。

 八歳になった村の他の家の子はこの日のために新しい服を着せてもらっていた。

 ――服なんてお母ちゃんからもらったことがなかった。

 村の人達から貰える古着を縫い合わせて着ていた。

 それにこの聖別式が終わると子どもも本格的に職業を選べるようになり、家業を継ぐことや職人へ弟子入りできるようになった。

 ただ成人は十五歳だから、それまではあくまでも見習いや弟子扱いになる。

 ――私も何処か働き先を探そう。

 そして稼いだら美味しいものをお母ちゃんに食べさせてあげよう。

 そしたら、お酒なんて飲まなくなるよね。

 もしかしたら、お父ちゃんも帰って来て、普通のお家のように晴れ着を作ってくれたり奉公先を見つけてくれたりするのかな?

 ドキドキしながらお母ちゃんに聖女選別のことを話した。

「お母ちゃん。あのさ、今度神殿から神官さんが来るんだって、それで私は八歳になったから聖別の儀式を受けられるんだって、もし聖女になったら……」

 ……お腹いっぱい食べられるのかな? お母ちゃんは喜んでくれるかな。

 そんな私の言葉を待たずにお母ちゃんは、

「何だって? 聖女聖別なんて、冗談じゃない! お前は娼館に売ることが決まっているんだよ。もしもお前が万が一聖女見習いになんてものに選ばれでもしたら大損だ。いいかい? お前は神官が来る日は納屋にでも隠れているんだ。一人くらいいなくても分からないよ。いいね!」




 私は娼館という言葉は分からなかったけれど怒られたので大人しく言われた様にその日の朝から家の納戸に隠れていた。

 ……他の子達は村の広場で晴れ着を着て自慢しているんだろうなあ。

 すると納戸の扉が開いて、真っ暗な中で一筋の光が差し込んだ。

 眩しくて誰が来たのか分からなかった。

「お姉ちゃん。こんなところで何してるの? ご飯は?」

 声で妹のデリラが来たことが分かった。今日は選別式に出ないように隠れていたのでご飯の準備や家のことが出来ていなかった。

「今日は村で聖女の聖別の儀式があるから、お母ちゃんがここで隠れていろって……」

「ええぇ! 聖女って、よくわかんないけど女神様に仕える人でしょ? 汚くて鈍くさいお姉ちゃんなんて無理無理!」


 デリラがげらげら笑いだしたので静かにするように言っていると家の入口の方からがやがやと騒がしい声がした。

「ここです! この家に儀式を受けられる女の子がいます。神官様」

 マーサさんの声が聞こえてきた。

「どこだい? ミリアちゃん!」

「ここでーす! お姉ちゃんはね、自分が選ばれると思って納屋に隠れていたんだよ! 笑っちゃうね!」

 げらげら笑いながら妹が答えるとバタバタとこちらに向かう足音がした。

 すると納戸の扉が開かれて綺麗な服を着た神官のお兄さんが立っていた。

「こんなところに……。さあ、行きましょう」

 そう言って私を暗い納戸の中から連れ出した。

 お母ちゃんが騒ぎに気がついて私達の方によろよろと近寄って来た。

「いくら教会の神官だって、人の家に勝手に入って家探しして、娘を勝手に連れて行くなんて! 人攫いだよ!」

「……この国に住まう者には全て聖別式を受ける義務があります。それを拒否することは国家、いえ女神様へ反することと同じですよ」

 神官のお兄さんは声を荒げていないのになんだか怒鳴るお父ちゃんより怖い雰囲気だった。お母ちゃんの顔色は真っ赤から真っ青に変わった。

「さあ、これに手をかざして」

 神官のお兄さんは懐から小さな女神像を取り出した。

 その女神像は小さいけど村の教会にあるのと同じ形だった。

 でもお兄さんの持っている像は透明でとても綺麗だった。

 私は言われるがままそれに手を触れてみた。

 すると水晶の女神像から眩い光が放たれるとキラキラと空中に光が降り注ぐ。

 神官のお兄さんが興奮した声を上げた。

「これは……、素晴らしい。聖女見習いとして十分、いいえ、それ以上の……」

「ほおお!」

「あのミリアが……」

 口々に騒ぐ周囲の人々の声が聞こえる。

 私は眩しくて目が開けられなかった。
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