【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!

えとう蜜夏

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06 出会い 

 私は大神殿で聖女候補者として勤めるようになった。

 基本はマルクトの神殿と変わらない。

 神殿の清掃や食事の用意、女神様への感謝の祈り。女神様への感謝や国家安寧の儀式を行う。これに大結界の維持の祈りが追加されるだけ。

 そして、王都の大神殿の聖女見習いの多くは良い家の子女が多かった。それも貴族令嬢や裕福なお家の子ばかり。平民のそれも名もなき村の娘は私だけだった。

 どうやら平民でさらに山奥の鄙びた村の娘を同じ聖女候補と認めるのは嫌だったみたい。

 だから、話しかけても無視されて、行事の連絡などが聞かされていないことはよくあった。

 大神殿の下働きの下女でさえ、用事を頼んでも無視されることがあった。

 マルクトの神殿のような気持でいた私はショックを受けたけれど村で受けていたことを思えば耐えられた。

 ……マルクトに帰りたいな。

 でも、ここだってご飯をきちんと食べられるだけ村よりましだし、衣服も綺麗な物を支給される。

 衣食住がきちんとあるから大丈夫。

 頑張ろう。マルクトの皆の期待に応えないと。

 何処で祈っても女神様に祈りは届くから。

 感謝の祈りを捧げていると送り出してくれた神官のお兄さんやジョイの顔が浮かぶ。そうしたら心がほっこりした。



 そんなある日、私は外出が許される日にそれぞれ出ていく聖女候補者や見習い達を私は神殿の中庭から眺めていた。

 仲が良くなった者同士で買い物にでも出かけるのだろう。楽しそうな声が聞こえる。

「一人ぼっち……、苛めには慣れていたけど一人には慣れていなかったな」

 村では家族の世話に明け暮れていたし、マルクトの神殿では皆と家族のようなつきあいだったから。

「聖女見習いの方ですよね。外出されないのですか?」

「いえ、私は聖女候補者で……」

 声をかけられて振り向くとそこには私と同じくらいの年の男の子がいた。

 柔らかそうなふわふわの薄茶色の髪に琥珀色の瞳の可愛い子だった

 穏やかな雰囲気でキラキラした笑顔を浮かべている。

「聖女候補?」

 男の子は不思議そうに尋ねてきた。

「うーんと見習いよりちょっと上の位かな。でも候補者になったばかりなの」

「でも、新人さんなんだよね?」

「ええ、まあそんな感じ……、確かに聖女候補では新人かも」

「じゃあ、今日僕が持って来た商品を見ていただけますか?」

「商品?」

 この王都の大神殿は地方神殿より圧倒的に人が多い。それに参拝者目当てに月に何回か神殿の外向けの広場で大きな市が立つほどだった。

 聖女や神官の見習いなどあまり表に出ない者は神殿の内向きの場所で商品を並べてくれているのでそこでそれぞれ日用品を購入していた。

 男の子は恥ずかしそうに微笑んだ。

「僕、商人見習いになって売り出すのが今日初めてなんです。良かったらそのお客になってもらえないかと……」

「まあ、そうなのですか。別に今日は予定がないので大丈夫ですよ」

 私がそう言うとよろしくと言われ彼の持ち場に案内された。

 小さな敷物の上にこまごまとした日用品やアクセサリーも手軽な価格で販売されていた。

「うわあ。これ可愛い」

 猫の形のブローチを手に取るけれど司祭服にアクセサリーを付けることは禁止だった。だけど見ているだけでも楽しい。

「とっても良く似合う。いえ、似合います!」

「あ、でも持ち合わせはあまりないの。それに候補と言っても見習いと変わらないからあまりお給金はもらえなくて日常で使う石鹸や何かを買うので精一杯なの」

「そうなんですね。じゃあ、見るだけでも良いです! 君が僕のお店の第一号だから。いつか余裕ができたらいっぱい買ってください」

 にこりと笑ってくれたので私もつられて笑ってみせた。

「僕の名はテオ。行商人見習いです。君の名は?」

「私はミリアって言うの。聖女候補者かな。よろしくね。テオ君」

「よろしくミリアさん」

 そうして差し出された手を私も握り返した。
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