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10 聖女はつらいよ
私はいつものように大神殿の内宮の市場でテオ君の店の商品を眺めていた。
外出日、他の人達は外の華やかな広場の市や街に出かけている。
テオ君と話すときやマルクト神殿からのジョイや神官さんからの手紙がないと正直聖女候補なんてやっていけなかった。
「――テオ君のアイテム収納のお陰で助かっているよ。また他のも欲しいな」
ブレスレットタイプをいくつかと他に小さなポシェットのような物も作ってくれた。
それも私専用のだからとても贅沢な気分。
ポシェットなんて他の人が見ても中が空っぽにしか見えない素晴らしいものだった。
「……ミリアさんが次期聖女様か」
今日のテオ君はやや元気が無さそうだった。
私が来月に十五歳を迎えて成人となるのに合わせて聖女として発表される予定になっている。
「うん。この一年頑張ったよ。聖女様だって、大丈夫って言ってくれたもの」
私が次期聖女に選ばれたときに少し騒動があったのを思い返していた。
平民の小娘が聖女になるのは喜ばれない。
今まで聖女に選ばれたのは最低でも騎士の娘かそれなりに裕福な家や貴族の位を持ったものばかりだったからだそうな。
ましてや鄙びた村の小娘は論外だそうな。
そこを現聖女様や神殿長様がなんとか収めたけれど見習い聖女や現聖女補佐や候補者から今まで以上に嫌がらせや無視されることが多くなった。
――まあ、今までで慣れているけどね。
まだ大神殿の神官長や神官見習い、下女はそこまであからさまなことはしないから助かっているけど。
でも、こうして今まで励ましてくれていたテオ君が不満そうなのは初めてで、どうしたらいいのか不安になった。
「テオ君も私が聖女なんて無理だって思うの?」
少し泣きそうになってしまった。本当なら辞められるなら辞めたい。でも、女神様の祝福があったんだもの。
大神殿にあれだけの光が満ち溢れたのは今までにもないほどだと様々な人に褒められた。
聖女様も厳しかったけど私の頑張りを期待してくれた。
今までそんなふうに認められて褒められることなんてなかったから期待に応えたかった。
「ち、違うよ。そんなんじゃなくて。こんなふうに話すことが無くなってミリアさんが遠くなるなぁって」
「え? 聖女は買い物できないの?」
「いや、そんなことはないけど。ああ、聖女様って呼ばないといけないし、敬語だって使わないと、それに忙しくなるだろうし、こんなふうにもう話せないかもしれない……」
「なんだ。そんなこと敬語とか呼び名は人前では分かんないけど忙しくなったってテオ君のところでお買い物できるようにするよ。なんたって、私がテオ君のお店の一番のお客様だもんね」
フンスと鼻を鳴らして胸をはってみせた。
するとテオ君はいつもの笑みを浮かべた。
出会った頃はそんなに変わらなかった背もいつの間にか頭一つ分は追い越されて大きくなったテオ君。でも、私の中では可愛らしい笑顔の男の子だった。
「……ミリアさん。うん。忙しくなって市に来られなくなったら、聖女様特権で僕を自室に呼びつけてよ。聖女様の御用商人になってみせるから」
「うふふ。神殿御用達でなく、聖女様の御用達ね!」
私は力強く宣言して立ち上がってみせた。だから、そのあとぼそりと呟いたテオ君の言葉に気が回らなかった。
「……でも、聖女様は大体ミレニア王国の王族か高位貴族と婚約するようになっているんだよね」
それから私は十五の成人を祝う儀式のあと、聖女としての引継ぎの儀式を行い、新しい聖女として認められたのだった。私は無事聖女としての地位に就くことが出来た。
マルクト神殿のジョイや神官のお兄さんに手紙で知らせるととても喜んでくれていた。
選ばれなかった聖女候補者達や聖女見習い達からはますます苛められたけれどそれでも儀式のときに女神様にいつも以上にキラキラと光る祝福を頂いたので頑張ろうと誓った。
お母ちゃんにもいつか知らせたいな。聖女になったらきっと喜んでくれるよね。
でも、聖女見習いより娼館に売るほうがいいと叫んだ言葉が思い出された。思わず頭を振って気持ちを切り替える。
「だけど、聖女はヘンリー王太子様と婚約するってありえない……」
丁度王太子様は私より一つ上だった。
どうやら聖女の力や技を他国に流出させないために王族か高位貴族が娶ることになっているらしい。
前聖女様はそもそも公爵令嬢で王族との身分の釣り合いは文句無しだったけれど少しお年が上過ぎるとのことで見送られたそうだった。代わりに別の公爵家にお嫁入り予定。
私とヘンリー王太子とは年が丁度良かった。
でも、ヘンリー王太子と初顔合わせのときに最初は普通に話していたけれど私が平民と分かると白けた雰囲気になった。
それから殆ど話すことは無かった。
「聖女を引退したら、あのヘンリー王太子様と結婚かぁ。精一杯聖女の座に居座ってなるべく先延ばしにしよう。うん。そうしよう」
「どうしましたか? 聖女様?」
「いいえ、別に何も……」
今日もテオ君のお店で買い物がてらお話をしていた。
人前ではテオ君の口調や態度はすっかり改まってしまったけれど。
「そう言えば今度も素敵な魔道具をありがとう」
「聖女様には魔力を流していただいているので試作品も捗ります」
テオ君は魔力が低く魔道具を動かすにも力が足りないことも多い。そこでこっそりこうした市で私が魔力を流して成功したか確認する。今までもそうして商品の開発を手伝ってしてきた。
……魔道具開発をしてテオと一緒に行商人もいいなあ。なんて言っても私は不器用だから無理ね。
魔力が多すぎて制御が難しく、元々繊細な作業に私は向いていなかった。
外出日、他の人達は外の華やかな広場の市や街に出かけている。
テオ君と話すときやマルクト神殿からのジョイや神官さんからの手紙がないと正直聖女候補なんてやっていけなかった。
「――テオ君のアイテム収納のお陰で助かっているよ。また他のも欲しいな」
ブレスレットタイプをいくつかと他に小さなポシェットのような物も作ってくれた。
それも私専用のだからとても贅沢な気分。
ポシェットなんて他の人が見ても中が空っぽにしか見えない素晴らしいものだった。
「……ミリアさんが次期聖女様か」
今日のテオ君はやや元気が無さそうだった。
私が来月に十五歳を迎えて成人となるのに合わせて聖女として発表される予定になっている。
「うん。この一年頑張ったよ。聖女様だって、大丈夫って言ってくれたもの」
私が次期聖女に選ばれたときに少し騒動があったのを思い返していた。
平民の小娘が聖女になるのは喜ばれない。
今まで聖女に選ばれたのは最低でも騎士の娘かそれなりに裕福な家や貴族の位を持ったものばかりだったからだそうな。
ましてや鄙びた村の小娘は論外だそうな。
そこを現聖女様や神殿長様がなんとか収めたけれど見習い聖女や現聖女補佐や候補者から今まで以上に嫌がらせや無視されることが多くなった。
――まあ、今までで慣れているけどね。
まだ大神殿の神官長や神官見習い、下女はそこまであからさまなことはしないから助かっているけど。
でも、こうして今まで励ましてくれていたテオ君が不満そうなのは初めてで、どうしたらいいのか不安になった。
「テオ君も私が聖女なんて無理だって思うの?」
少し泣きそうになってしまった。本当なら辞められるなら辞めたい。でも、女神様の祝福があったんだもの。
大神殿にあれだけの光が満ち溢れたのは今までにもないほどだと様々な人に褒められた。
聖女様も厳しかったけど私の頑張りを期待してくれた。
今までそんなふうに認められて褒められることなんてなかったから期待に応えたかった。
「ち、違うよ。そんなんじゃなくて。こんなふうに話すことが無くなってミリアさんが遠くなるなぁって」
「え? 聖女は買い物できないの?」
「いや、そんなことはないけど。ああ、聖女様って呼ばないといけないし、敬語だって使わないと、それに忙しくなるだろうし、こんなふうにもう話せないかもしれない……」
「なんだ。そんなこと敬語とか呼び名は人前では分かんないけど忙しくなったってテオ君のところでお買い物できるようにするよ。なんたって、私がテオ君のお店の一番のお客様だもんね」
フンスと鼻を鳴らして胸をはってみせた。
するとテオ君はいつもの笑みを浮かべた。
出会った頃はそんなに変わらなかった背もいつの間にか頭一つ分は追い越されて大きくなったテオ君。でも、私の中では可愛らしい笑顔の男の子だった。
「……ミリアさん。うん。忙しくなって市に来られなくなったら、聖女様特権で僕を自室に呼びつけてよ。聖女様の御用商人になってみせるから」
「うふふ。神殿御用達でなく、聖女様の御用達ね!」
私は力強く宣言して立ち上がってみせた。だから、そのあとぼそりと呟いたテオ君の言葉に気が回らなかった。
「……でも、聖女様は大体ミレニア王国の王族か高位貴族と婚約するようになっているんだよね」
それから私は十五の成人を祝う儀式のあと、聖女としての引継ぎの儀式を行い、新しい聖女として認められたのだった。私は無事聖女としての地位に就くことが出来た。
マルクト神殿のジョイや神官のお兄さんに手紙で知らせるととても喜んでくれていた。
選ばれなかった聖女候補者達や聖女見習い達からはますます苛められたけれどそれでも儀式のときに女神様にいつも以上にキラキラと光る祝福を頂いたので頑張ろうと誓った。
お母ちゃんにもいつか知らせたいな。聖女になったらきっと喜んでくれるよね。
でも、聖女見習いより娼館に売るほうがいいと叫んだ言葉が思い出された。思わず頭を振って気持ちを切り替える。
「だけど、聖女はヘンリー王太子様と婚約するってありえない……」
丁度王太子様は私より一つ上だった。
どうやら聖女の力や技を他国に流出させないために王族か高位貴族が娶ることになっているらしい。
前聖女様はそもそも公爵令嬢で王族との身分の釣り合いは文句無しだったけれど少しお年が上過ぎるとのことで見送られたそうだった。代わりに別の公爵家にお嫁入り予定。
私とヘンリー王太子とは年が丁度良かった。
でも、ヘンリー王太子と初顔合わせのときに最初は普通に話していたけれど私が平民と分かると白けた雰囲気になった。
それから殆ど話すことは無かった。
「聖女を引退したら、あのヘンリー王太子様と結婚かぁ。精一杯聖女の座に居座ってなるべく先延ばしにしよう。うん。そうしよう」
「どうしましたか? 聖女様?」
「いいえ、別に何も……」
今日もテオ君のお店で買い物がてらお話をしていた。
人前ではテオ君の口調や態度はすっかり改まってしまったけれど。
「そう言えば今度も素敵な魔道具をありがとう」
「聖女様には魔力を流していただいているので試作品も捗ります」
テオ君は魔力が低く魔道具を動かすにも力が足りないことも多い。そこでこっそりこうした市で私が魔力を流して成功したか確認する。今までもそうして商品の開発を手伝ってしてきた。
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