【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!

えとう蜜夏

文字の大きさ
20 / 31

20 テオからのプロポーズ

 テオは私が偶然張った守護結界があるけれど焚火の番をするといって出て行ったので、一人で幌馬車の中に横になっていました。

 すると昼間に感じなかったやりきれなさが押し寄せてきてますます眠れなくなりました。

 私は幌馬車を出てテオの横に座りテオの肩にコテンと頭を預けました。

「どうしたの? 野営なんて初めてだから眠れない?」

 テオが心配そうに尋ねてくれたけれどそのまま暫くじっとしていました。

「いろいろ考えちゃって眠れなくて……。聖女も頑張っていたけれど結局追放されちゃったし、婚約は破棄されたし……」

「……」

 テオが黙って聞いてくれたので私は続けました。

「王太子様と婚約なんて恐れ多かったから破棄されても良かったけれど。……どうしてかな。やっぱり親に売られる子は誰にも愛されないのかな。大神殿では嫌われてばかりだったし。私なんて誰にも好きになってもらえないんだなと……」

「……ミリアっ」

 ガバッとテオに抱き締められました。

「テ、テオ?」

 今まで誰にもこんなふうに抱き締められたことはなかったので驚きました。テオの力は結構強くて振り払うことはできません。

「そんなことはないって僕が言ってもミリアは信じないかもしれないけど……」

 そう言うとテオは腕を緩め私に顔を寄せてきました。暗いけれど焚火の炎でお互いの表情は分かります。

 テオは真剣な表情をしていました。頬に手を当てられて顔を固定されたので目を逸らすことも出来ず、

「……僕はずっとミリアのことが好きだったんだ」

 焚火がパチリと爆ぜた。

「……テオ」

「だけどミリアは僕のことなんてただの商人としか見ていないのも分かっていた。それでも僕はミリアが好きだったよ。そして、ミリアが聖女になると僕にはもっと手が届かないと知ったとき絶望したんだ。だから聖女候補者のままでいて欲しいと女神様に祈ったときもあった」

 テオはそこで目を伏せて、

「ミリアが大神殿で僕以外に親しい人がいないのも薄々気がついていた。それも少し嬉しかったんだ。僕だけがミリアの特別だと思えたから。女神様から見れば、いや、ミリアからすれば僕も悪い人間だったかもしれない」

 私は驚いて何も言えなくなっていました。

 まさか、テオが私を想ってくれていたんだという嬉しい気持ちで。

「ミリアは僕のことを商人としてしか見ていなかったから驚くよね。だから今言っておくよ。ミリアはいつも頑張っていた。そんなミリアだから女神様も祝福を送ったのだろうし、僕だってミリアがいたから行商人の見習いも頑張れたんだよ」

「テオ……」

 いつぶりか私の目から暖かいものが流れ落ちていました。涙が勝手に溢れて止まらないのです。

 でもこの涙はあの村でのお母ちゃんとの別れとは別物でした。

「……私、頑張ったんだよね? 親から要らない子と言われても女神様は祝福してくれていたもの。女神様は私を認めてくださっていたよね? 私は聖女として頑張れていたんだよね」

 テオは再びぎゅっと私を抱き締めてくれた。それは痛いくらいでテオの気持ちも伝わってくるようでした。

「そうだよ。ミリアは立派な聖女様だったよ。僕はずっとミリアを見てきた。だからミリアが頑張っていたのを誰よりも知っているよ。女神様だってきっと分かっていらっしゃるはずだ」

 私はテオの言葉にわんわん泣きじゃくってしまいました。

 子どもの頃だってこんなに泣いたことはなかったように思います。

 ずっと見ていてくれた人がいたことがこんなに嬉しいとは思いませんでした。

「テオ、ありがとう。テオがいなかったら私は今頃どうなっていたか……」

 泣きじゃくりながらお礼を言うとテオは照れながら、

「弱っているミリアにつけ込むようで悪いんだけど聞いて欲しい。これからも僕はミリアと一緒に生きたい。だから僕のお嫁さんになってください」

 私は突然のテオの言葉に涙が引っ込んでしまいました。けれど慌ててテオの申し出に肯きました。

「うん! 私なんかでよければテオのお嫁さんになるよ」

「なんかじゃないよ。僕にはミリアが一番なんだ。ミリアが側でいてくれるだけで僕はとても幸せだよ」

 優しくテオに言われて涙がまた溢れ出しました。おかしいですよね。もう私も成人した大人なのに。こんなに泣き虫だなんて。

 テオは私が泣いてしまったので慌てていましたけれど私からもぎゅっとテオを抱き締め返しました。

「……誰かを好きになるのって、愛おしいって気持ちってこんなふうに暖かいものだったんだね。大神殿はいつも冷たかったけどテオが会いに来てくれたら私は凍らずにいられたんだね」

「ミリア。愛している。これからもずっと」

 そっと二人で顔を寄せ合いました。

 お互いの温もりが心地よくとても安心できるとこのとき初めて知りました。


 夜空には星々が瞬き、二人を祝福しようとほのかな光が天空から降り注いでいました。





 ◇◇◇あとがきめいたもの◇◇◇

 このお話の中で一番書きたかったところなのでこれで満足しています。ここで終わりたいくらいなのですが、怒涛の最後まであと数話なのでお付き合いください。
感想 56

あなたにおすすめの小説

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます

香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。 どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。 「私は聖女になりたくてたまらないのに!」 ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。 けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。 ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに…… なんて心配していたのに。 「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」 第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。 本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

妹なんだから助けて? お断りします

たくわん
恋愛
美しく聡明な令嬢エリーゼ。だが、母の死後に迎えられた継母マルグリットによって、彼女の人生は一変する。実母が残した財産は継母に奪われ、華やかなドレスは義姉たちに着られ、エリーゼ自身は使用人同然の扱いを受ける。そんなある日――。

聖女の妹、『灰色女』の私

ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。 『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。 一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」 広間に高らかに響く声。 私の婚約者であり、この国の王子である。 「そうですか」 「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」 「… … …」 「よって、婚約は破棄だ!」 私は、周りを見渡す。 私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。 「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」 私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。 なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。

聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~

キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。 パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。 最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。 さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。 その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。 王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。 こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。 ※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。 ※カクヨムにも掲載中です。