【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!

えとう蜜夏

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28 女神様との邂逅~選択肢~

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「あら、いらっしゃい。愛し子よ」

「ここは……」

 ミリアは自分の身体から魂が抜けて空を駆け上がっていくと気がつけばふわふわとした雲の上だった。

 ――目の前には光の塊がありました。そこから声が聞こえてきていますが、眩しくて直視ができません。人ではありえない圧倒的な存在感です

「うふふ。さしずめここは女神の住処というところかしら?」

「女神様の……。では私は死んだのですね」

「ふふ。それはどうかしらね」

「……」

「あの王国はもう駄目。私の祝福を蔑ろにしたもの。ふふ。でもミリア、あなたはよく頑張ったわ。純粋な祈りで久しぶりに私を喜ばせてもらいました。辛い中よく耐えましたね。だから、最後にご褒美をあげましょう」

「ご褒美ですか?」

 何か気になることがあったように思えるけど、今はぼんやりとした思考しかできませんでした。

 あの聖女として結界に魔力を流していた頃のように大量に吸い取られたような感じだったのです。それも少し懐かしい感覚でした。

「そう、ご褒美よ!」

 女神様がそう叫ばれると突然私の足元に風景が見えました。山が見え、村が見えてきました。

「村?」

「ええ、あなたの育った村よ。あなたが小さい頃は試練をちょっと与え過ぎたわね」

 そこに見えるのは懐かしい母と妹。貧しい食事だけど二人で仲良く食べていました。

 ――良かった。ご飯を食べられているのね。

「お姉ちゃんはどうしているかな」

「ミリアも元気にしているだろう。マルクトはここから遠いから連絡はできないけど……」

「お姉ちゃんが戻ったら、今までゴメンねって言うんだ」

「そうだね。ミリアが戻ったらお母ちゃんもそうするよ……」

 私は黙ってそれを見入っていました。

 ……こんなことありえません。これはきっと私の都合の良い夢です。もしくは幻想なのです。こんなのは勝手な自分の希望でしかないのに。でも、二人がそう思っていてくれたなら私は……。

 そのとき凄まじい音が鳴り響いて村人達の山が崩れたから逃げろと言う声が聞こえてきました。

「山崩れだって? 大変だ。デリラ! 逃げよう」

「お母ちゃん!」

 そうして母は妹の手を握り家の外に出ようとしましたが、そこには大量の土砂が迫って来ていました。母は妹を庇うように抱き締めて覚悟を決めたようでした。そこに多量の土砂が家ごと二人を押し流していきました。

「お母ちゃん! デリラ!」

 私は思わず足元に蹲って叫んでいました。

「これはもう既に過去に起こったこと。次は……」

 女神様がそうおっしゃると再び足元に風景が見えました。そこには、

 テオが血まみれの私を抱えている姿。そして、私達の周囲はたくさんのモンスターが取り囲んでいました。

「テオ!」

 私は思わず叫んでしまいました。――そして思い出したのです。ここにくる直前のテオとのことを。

「これはこれからの未来。あの子はあなたをモンスターに取られまいと必死で自分の身体を盾にしているわ。でもそれも時間の問題ね」

 今にもモンスター達はテオに襲い掛かろうとしています。その後ろから冒険者の方々も近寄ろうとしていますが、モンスター達の数が多すぎました。

「あなたに選択肢を与えましょう。土砂崩れの前に戻って家族とやり直す。要は家族を土砂から守って助け出すのね」

「家族を、救える……」

「ただし、家族の元に戻るともうテオに出会うことはありません」

「テオに会えない?」

「ええ。あの時の家に戻り、そこからは聖女でない人生を歩むことになるでしょう。そうするとテオともう会う機会はないわね」

「過去に戻り聖女でない人生を歩む……」

 そうして女神様は、光の塊でお姿は見えませんが微笑んだように感じました。

「もう一つの選択肢は命の消えかけたあなたを私の力で癒しテオの元へ戻すことです。でもあの場所に戻すので直ぐにモンスターに襲われて二人とも命を失うかもしれないわね」

「癒しを受けてテオの元に戻れるけれど命を失う……」

「――どちらかを選びなさい。愛しい子よ」

「お母ちゃん達か、テオか、聖女じゃない人生か、直ぐに落とす命か……。私が選ぶのですね」









 ◇◇◇あとがきめいたもの◇◇

 次でまだ終わりませんがハッピーエンドになります。
 あとリクエストのあった番外編も改稿している途中です。テオ視点での聖女料理と美味しい物食べてほのぼのとしています。
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