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夜が明ける
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何もなかった、と言う嘘はつきたくなかった。日下部君を苦しませてしまうかもしれないけれど、抱かれた事実は消したくなかったの。それまで否定してしまったら、ずっと好きだった高校時代の自分も救えない。
「記憶が曖昧で……覚えてないんだ。委員長の夢を見たのか、現実だったのかさえ分からない」
日下部君はバツ悪そうに左斜め下を見ながら話す。泥酔寸前だったから覚えてなくても仕方ない。無意識に呼んだ愛しい女性の名前も、私を可愛いと何度も何度も言ってくれた事も本人が覚えてなければ私しか知りえない。そもそもが、ただの成り行きの行為だったのだから私の記憶を封印すれば良いだけ。
「……日下部君、ブラックアウトって知ってる?」
「ブラックアウト?」
「そう、ブラックアウト。泥酔した時、覚えてないけどいつの間にか自宅に帰ってたとか、記憶がないままにシラフで行動してた事をブラックアウトって言うんだって。日下部君、泥酔寸前だったからブラックアウト状態だったんだよ」
私は話を逸らしたくて、いつの日かネットで見た記事を思い出したので声に出した。
「ブラックアウト、か。確かに朝起きたら頭痛が酷くて、見渡したら見慣れないベッドの上に居た。何があったのかは思い出せないけど、委員長の顔ばっかり浮かぶんだ。それにバスローブ一枚で寝てて、隣には誰かが寝てた形跡があった。
頭痛に耐えながら考えたけど、繋がるものは委員長以外は何も浮かばなかった。チェックアウトしようとして精算しようとしたら既に済んでた。精算者を教えてくれって頼んだけど個人情報だからって絶対に教えてくれなかった。
無理矢理にしてたら、本当に申し訳ない……。どう詫びるべきか……」
日下部君は本当に落ち込んでいる。大人なんだから成り行きだった、って済ませれば良いのに。こういうところが日下部君は硬派なんだよね。事実とは異なるけれど、無理矢理にされたから責任とって結婚してよね!って詰め寄ったら、責任を感じてしまい本当にしそうだし。
「違うよ。たまたま立ち寄ったバーに日下部君が居たの。弱ってそうだったから、私が誘ったの。……ほら、私もさ、おひとり様で寂しいからさ、たまに肌恋しくなるし。成り行きだから気にしないで。もう、子供じゃないんだから……!」
作り笑いをしながら、明るく振舞った。日下部君はまだ落ち込んでいるのか、表情が暗い。
「こんな私とエッチしちゃったのがショックかもしれないけど、今後、こんな事はないんだから、もう綺麗さっぱり忘れちゃって……ね?……私も忘れたいし」
自分で言ってて、段々と辛くなって来た。泣くな、私。涙が目尻にじんわりと出てきたので、粒が落ちないように唇をキュッと噛み締める。
ガタンッ。
「……自分を卑下するなよ。でも、本当にごめん!覚えてないんだ。俺、どうしたら良いのか…」
日下部君は立ち上がり、椅子に座って居る私をふわりと抱きしめた。私は両腕を日下部君の背中に回し、ポンポンと軽く叩く。
「別にどうもしなくて良いんだよ。責任感じてるならさ、また一緒に飲んでくれる?今度、居酒屋に行こう。私、おひとり様だから夜は寂しいんだ。……いつまでも、女々しく、くよくよ考えてるなんて日下部君らしくないよ!もう済んだ事だって言ってるでしょ?大人なんだから割り切ろうよ」
「……そのポジティブ思考、羨ましい」
私だって本当は苦しいの。好きだった人にあんなに優しく抱かれて、前よりももっと好きになりそうで。
「もしも採用されたら仕事帰りに居酒屋寄ったりしよ?日下部君もおひとり様なんでしょ?いつも一人で飲んでてつまらないの」
友達は既婚者が多く子供も居て夜は外出出来ないのがほとんど。おひとり様の友達もいるけれど時間が合わなくて……結局は一人飲み。
「……うん」
「日下部君、仕事抜け出してくれたんでしょ?もう戻らなきゃいけないんじゃない?お互い連絡先も分かったし、また連絡するよ」
日下部君を力づくで引き剥がし、私は椅子から立ち上がる。
私達は一夜限りの男女の関係だと日下部君を説得した。夜が明けたら、明日からはまた友達に戻る。
「記憶が曖昧で……覚えてないんだ。委員長の夢を見たのか、現実だったのかさえ分からない」
日下部君はバツ悪そうに左斜め下を見ながら話す。泥酔寸前だったから覚えてなくても仕方ない。無意識に呼んだ愛しい女性の名前も、私を可愛いと何度も何度も言ってくれた事も本人が覚えてなければ私しか知りえない。そもそもが、ただの成り行きの行為だったのだから私の記憶を封印すれば良いだけ。
「……日下部君、ブラックアウトって知ってる?」
「ブラックアウト?」
「そう、ブラックアウト。泥酔した時、覚えてないけどいつの間にか自宅に帰ってたとか、記憶がないままにシラフで行動してた事をブラックアウトって言うんだって。日下部君、泥酔寸前だったからブラックアウト状態だったんだよ」
私は話を逸らしたくて、いつの日かネットで見た記事を思い出したので声に出した。
「ブラックアウト、か。確かに朝起きたら頭痛が酷くて、見渡したら見慣れないベッドの上に居た。何があったのかは思い出せないけど、委員長の顔ばっかり浮かぶんだ。それにバスローブ一枚で寝てて、隣には誰かが寝てた形跡があった。
頭痛に耐えながら考えたけど、繋がるものは委員長以外は何も浮かばなかった。チェックアウトしようとして精算しようとしたら既に済んでた。精算者を教えてくれって頼んだけど個人情報だからって絶対に教えてくれなかった。
無理矢理にしてたら、本当に申し訳ない……。どう詫びるべきか……」
日下部君は本当に落ち込んでいる。大人なんだから成り行きだった、って済ませれば良いのに。こういうところが日下部君は硬派なんだよね。事実とは異なるけれど、無理矢理にされたから責任とって結婚してよね!って詰め寄ったら、責任を感じてしまい本当にしそうだし。
「違うよ。たまたま立ち寄ったバーに日下部君が居たの。弱ってそうだったから、私が誘ったの。……ほら、私もさ、おひとり様で寂しいからさ、たまに肌恋しくなるし。成り行きだから気にしないで。もう、子供じゃないんだから……!」
作り笑いをしながら、明るく振舞った。日下部君はまだ落ち込んでいるのか、表情が暗い。
「こんな私とエッチしちゃったのがショックかもしれないけど、今後、こんな事はないんだから、もう綺麗さっぱり忘れちゃって……ね?……私も忘れたいし」
自分で言ってて、段々と辛くなって来た。泣くな、私。涙が目尻にじんわりと出てきたので、粒が落ちないように唇をキュッと噛み締める。
ガタンッ。
「……自分を卑下するなよ。でも、本当にごめん!覚えてないんだ。俺、どうしたら良いのか…」
日下部君は立ち上がり、椅子に座って居る私をふわりと抱きしめた。私は両腕を日下部君の背中に回し、ポンポンと軽く叩く。
「別にどうもしなくて良いんだよ。責任感じてるならさ、また一緒に飲んでくれる?今度、居酒屋に行こう。私、おひとり様だから夜は寂しいんだ。……いつまでも、女々しく、くよくよ考えてるなんて日下部君らしくないよ!もう済んだ事だって言ってるでしょ?大人なんだから割り切ろうよ」
「……そのポジティブ思考、羨ましい」
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