9 / 59
雨に打たれる
1
「可愛い~!自宅に飾りたい!」
今にも雨が降り出しそうな梅雨の日の15時過ぎ、私は新作の商品を眺めては惚れ惚れしていた。陶器で出来ている小さな小物入れ。指輪とか入れるのに丁度良さそう。
私は無事に彩羽コーポレーションの"Иatural+"の面接をパスして、入社する事が出来た。地方の店舗が増えるまでは実際の店舗での研修となり、主に第3号店に勤務している。
来客がない時間帯はアルバイト店員の美鈴ちゃんと一緒に商品を眺めている。私はフルタイムの勤務で早番、中番、遅番のシフト制、美鈴ちゃんは掛け持ちアルバイトだから早番、中番のみ。美鈴ちゃんは私よりも歳が6つも下。身長も小さくて、話し方から立ち振る舞いまで全てが可愛い女の子。
「今日は来ませんね、日下部部長」
「本社での仕事もあるから、そう毎日は来ないんじゃない?」
「でも佐藤さんが出勤の時は二日に一度は顔出しに来てますよ!佐藤さんが休みの時は、よっぽど何かがない限りは来ないですもん!ぜぇーったいっ、佐藤さんに会いに来てますって!」
「……だとしたら、冷やかしじゃないの?私がきちんとやれてるかどうか見に来てるんだよ」
日下部部長こと日下部 郁弥。高校時代の同級生であり、現在は上司。そして一夜限りの男女の関係。
美鈴ちゃんは私と日下部君が同級生だと知っていて、私達のやり取りを見ていた時から『二人の関係は怪しい…』と言っている。私は怪しい関係になりたいけれど、それはない。もう二度と身体を重ねる事もなければ、恋人にも発展しない関係だから。
「そうですかね?朝イチで顔を出してみたり、私が退勤押す頃に来てみたり、急な仕事の用ではなさげですけど?」
美鈴ちゃんはニヤニヤしながら私に訴える。確かに仕事の事を伝えるにしてもメールや電話で済む話だったから、わざわざ来なくても良かった。美鈴ちゃんの話を総合的に見て期待が膨むが、そんな事はない、絶対に!日下部君が会いに来るとしたら、一夜限りでも男女の関係になった後ろめたさなんじゃないかな?私が誘惑したのだから、もういい加減に割り切ったら良いのに。
「……多分ね、高校時代の話が盛り上がったから、もっと話したいだけなんじゃないかな?私と日下部君はクラス委員や生徒会長とか一緒にやった仲だから。高校時代もね、私は可愛げがないから日下部君には女の子としては見られてなかったの。私、男の子に混ざって遊ぶのも好きだったし、友達も女の子より男の子の方が多かったんだよ」
「あー、上手くはぐらかされた気がする!私は絶対に日下部部長は佐藤さんに気があると思うんだよなぁ……」
何も知らないって、これ程までに残酷なんだな。気があるのだとしたら、高校時代にとっくに付き合っていると思う。ないからこそ、私達は時を経ても、身体の関係があってもこのままなの。
「美鈴ちゃん、もう上がり時間じゃないの?」
「あ、大変!今日は居酒屋バイトが入ってるから急いで行かなきゃ……!」
美鈴ちゃんの上がり時間は16時。バタバタしながら帰り支度をして、店舗を後にした。平日はお店がそんなに混まないから、アルバイトスタッフと私の二人体制。夕方17時から締め作業までの間にもう一人のアルバイトの女の子が来る事になっている。
今にも雨が降り出しそうな梅雨の日の15時過ぎ、私は新作の商品を眺めては惚れ惚れしていた。陶器で出来ている小さな小物入れ。指輪とか入れるのに丁度良さそう。
私は無事に彩羽コーポレーションの"Иatural+"の面接をパスして、入社する事が出来た。地方の店舗が増えるまでは実際の店舗での研修となり、主に第3号店に勤務している。
来客がない時間帯はアルバイト店員の美鈴ちゃんと一緒に商品を眺めている。私はフルタイムの勤務で早番、中番、遅番のシフト制、美鈴ちゃんは掛け持ちアルバイトだから早番、中番のみ。美鈴ちゃんは私よりも歳が6つも下。身長も小さくて、話し方から立ち振る舞いまで全てが可愛い女の子。
「今日は来ませんね、日下部部長」
「本社での仕事もあるから、そう毎日は来ないんじゃない?」
「でも佐藤さんが出勤の時は二日に一度は顔出しに来てますよ!佐藤さんが休みの時は、よっぽど何かがない限りは来ないですもん!ぜぇーったいっ、佐藤さんに会いに来てますって!」
「……だとしたら、冷やかしじゃないの?私がきちんとやれてるかどうか見に来てるんだよ」
日下部部長こと日下部 郁弥。高校時代の同級生であり、現在は上司。そして一夜限りの男女の関係。
美鈴ちゃんは私と日下部君が同級生だと知っていて、私達のやり取りを見ていた時から『二人の関係は怪しい…』と言っている。私は怪しい関係になりたいけれど、それはない。もう二度と身体を重ねる事もなければ、恋人にも発展しない関係だから。
「そうですかね?朝イチで顔を出してみたり、私が退勤押す頃に来てみたり、急な仕事の用ではなさげですけど?」
美鈴ちゃんはニヤニヤしながら私に訴える。確かに仕事の事を伝えるにしてもメールや電話で済む話だったから、わざわざ来なくても良かった。美鈴ちゃんの話を総合的に見て期待が膨むが、そんな事はない、絶対に!日下部君が会いに来るとしたら、一夜限りでも男女の関係になった後ろめたさなんじゃないかな?私が誘惑したのだから、もういい加減に割り切ったら良いのに。
「……多分ね、高校時代の話が盛り上がったから、もっと話したいだけなんじゃないかな?私と日下部君はクラス委員や生徒会長とか一緒にやった仲だから。高校時代もね、私は可愛げがないから日下部君には女の子としては見られてなかったの。私、男の子に混ざって遊ぶのも好きだったし、友達も女の子より男の子の方が多かったんだよ」
「あー、上手くはぐらかされた気がする!私は絶対に日下部部長は佐藤さんに気があると思うんだよなぁ……」
何も知らないって、これ程までに残酷なんだな。気があるのだとしたら、高校時代にとっくに付き合っていると思う。ないからこそ、私達は時を経ても、身体の関係があってもこのままなの。
「美鈴ちゃん、もう上がり時間じゃないの?」
「あ、大変!今日は居酒屋バイトが入ってるから急いで行かなきゃ……!」
美鈴ちゃんの上がり時間は16時。バタバタしながら帰り支度をして、店舗を後にした。平日はお店がそんなに混まないから、アルバイトスタッフと私の二人体制。夕方17時から締め作業までの間にもう一人のアルバイトの女の子が来る事になっている。
あなたにおすすめの小説
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
桜井 響華
恋愛
派遣受付嬢をしている胡桃沢 和奏は、副社長専属秘書である相良 大貴に一目惚れをして勢い余って告白してしまうが、冷たくあしらわれる。諦めモードで日々過ごしていたが、チャンス到来───!?
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】
remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。
佐倉ここ。
玩具メーカーで働く24歳のOL。
鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。
完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。
【完結】ありがとうございました‼
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。