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誘惑の延長線上、君を囲う。
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「郁弥ー、おめでとう!今年のお正月は帰らないつもりだったけど、やっぱり帰って来ちゃったわよ!」
副社長と会話していたら、玄関先から急に騒がしい音がした。何だろう?と不思議に思っていたら……年配の男女がリビングに入って来た。
「こ、来ないんじゃなかったの……」
ご婦人が日下部君に向かって話をかけると、咄嗟に顔が引きつった。
「来るに決まってるじゃないの!可愛い郁弥が結婚すると聞いて、直ぐに飛んできたわよ!ねぇ、あなた」
「そうだぞ、郁弥。郁弥も家族の一員なのだから、駆けつけるのは当たり前だ!」
賑やかな方々だ。
「佐藤琴葉さんは……、貴方ですね。噂通りにお綺麗な方だ。郁弥は我が娘に似て頑固者で一度言い出したら聞かない面もありますが、根は素直で他人思いの頑張り屋です。どうか墓場まで見捨てずに一緒にいてやって下さい」
「まぁ、何なのかしらね?その挨拶は。二人は好きで一緒になるのよ、一生を添い遂げる覚悟があるから結婚するんじゃないの。まぁ、そうならなかったのがうちの娘だけれども……。佐藤さんは高校時代からの友人よね?学生の頃から郁弥を見てきた人だもの。きっと、この結婚は上手くいくわよ」
挨拶をしようと思っているのだが、なかなか入れる隙が見つからずに困った。この方々は副社長と日下部君の祖父母らしい。ご夫婦の会話が面白くて、私は思わず笑ってしまった。
やっとの思いで挨拶をした後は、和やかなムードに包まれた。日下部君は今までおひとり様だったけれど、こんなに温かい人達に囲まれて居たならば、寂しくは無かったのかもしれない。子供の頃、実のお父さんに着いていく事を決めた日下部君だけれど、あちらの家族は家族で賑やかそうだし、寂しい思いをした時期が短かければ良いな、と勝手な思いを頭の中で巡らせる。
思いがけぬお祝いをされて、沢山、皆と話して楽しんだ後の帰路は何だか寂しく感じた。重ね重ねで幸せな事が重なり、人生で一番の幸せな年明けだった。
マンションに戻り、入浴はシャワーで済ませた。ベッドに二人で寝転び、思い出した様に日下部君に聞く。
「ねー、いつの間に結婚するって知らせたの?」
「んー?年始に花野井家に来てって、有澄から言われてたんだけど、同窓会もあったから保留にしてたんだ。その後に三日になら行けるかも?って事と結婚するって有澄に何となく言ったら、パーティーになってた」
日下部君と向かい合って、ゴロンと横になっている。
「そうなんだ……。婚約おめでとうって言われたから、びっくりした」
花野井家がパーティー会場だと知った時は戸惑ったけれど、秋葉さんも綾美ちゃんも居ると分かっていたので、落ち着いて行く事が出来た。会社の同僚という立場で行くはずが、既に結婚すると報告されていたので本当に驚いた。
結婚すると決めてから、あっという間に世界が変わっていく。今後に開かれるであろう社長メインの女子会も、澪子ちゃんを含めた女子会も、どちらも楽しみだ。日下部君と結婚する事により、付き合う範囲も広がる。
友達や澪子ちゃん、美鈴ちゃんにも結婚の報告をしなきゃいけないし、自分自身と日下部君の実のお父さんにも挨拶しに行かなくちゃ。結婚する事はとても幸せな事だれども事前準備も沢山あるよね。
今まで見てきた、おひとり様のどこか寂しげな静寂な景色ではなく、幸福感を表す暖色系に彩られた景色がくすぐったい。
「これからは、琴葉が望む事は出来る限りは叶えていくつもりだ」
前髪をくしゃくしゃとしつつ、頭を撫でられる。
「じゃ、じゃあさ、会社帰りに堂々とデートしたい。沢山、帰り道デートしたい」
「うん、しよう」
「それからさ、以前に当選した高級ホテルのチケットをまだ使って無かったから近いうちに行きたいな」
「入籍する日に行こうか?」
「うん、その日を待ってるね」
私達はどちらかともなく、抱き締めあってキスをせがむ。結婚するのだから、これから先は隠す事なんて何も無いのだ。今まで出来なかった事を沢山しよう。
あの時、日下部君に再会出来て良かった。止まっていた運命の歯車を誘惑の延長線上にて、動かす事が出来たのだから──
.。.:✽・゚END+.。.:✽・゚
副社長と会話していたら、玄関先から急に騒がしい音がした。何だろう?と不思議に思っていたら……年配の男女がリビングに入って来た。
「こ、来ないんじゃなかったの……」
ご婦人が日下部君に向かって話をかけると、咄嗟に顔が引きつった。
「来るに決まってるじゃないの!可愛い郁弥が結婚すると聞いて、直ぐに飛んできたわよ!ねぇ、あなた」
「そうだぞ、郁弥。郁弥も家族の一員なのだから、駆けつけるのは当たり前だ!」
賑やかな方々だ。
「佐藤琴葉さんは……、貴方ですね。噂通りにお綺麗な方だ。郁弥は我が娘に似て頑固者で一度言い出したら聞かない面もありますが、根は素直で他人思いの頑張り屋です。どうか墓場まで見捨てずに一緒にいてやって下さい」
「まぁ、何なのかしらね?その挨拶は。二人は好きで一緒になるのよ、一生を添い遂げる覚悟があるから結婚するんじゃないの。まぁ、そうならなかったのがうちの娘だけれども……。佐藤さんは高校時代からの友人よね?学生の頃から郁弥を見てきた人だもの。きっと、この結婚は上手くいくわよ」
挨拶をしようと思っているのだが、なかなか入れる隙が見つからずに困った。この方々は副社長と日下部君の祖父母らしい。ご夫婦の会話が面白くて、私は思わず笑ってしまった。
やっとの思いで挨拶をした後は、和やかなムードに包まれた。日下部君は今までおひとり様だったけれど、こんなに温かい人達に囲まれて居たならば、寂しくは無かったのかもしれない。子供の頃、実のお父さんに着いていく事を決めた日下部君だけれど、あちらの家族は家族で賑やかそうだし、寂しい思いをした時期が短かければ良いな、と勝手な思いを頭の中で巡らせる。
思いがけぬお祝いをされて、沢山、皆と話して楽しんだ後の帰路は何だか寂しく感じた。重ね重ねで幸せな事が重なり、人生で一番の幸せな年明けだった。
マンションに戻り、入浴はシャワーで済ませた。ベッドに二人で寝転び、思い出した様に日下部君に聞く。
「ねー、いつの間に結婚するって知らせたの?」
「んー?年始に花野井家に来てって、有澄から言われてたんだけど、同窓会もあったから保留にしてたんだ。その後に三日になら行けるかも?って事と結婚するって有澄に何となく言ったら、パーティーになってた」
日下部君と向かい合って、ゴロンと横になっている。
「そうなんだ……。婚約おめでとうって言われたから、びっくりした」
花野井家がパーティー会場だと知った時は戸惑ったけれど、秋葉さんも綾美ちゃんも居ると分かっていたので、落ち着いて行く事が出来た。会社の同僚という立場で行くはずが、既に結婚すると報告されていたので本当に驚いた。
結婚すると決めてから、あっという間に世界が変わっていく。今後に開かれるであろう社長メインの女子会も、澪子ちゃんを含めた女子会も、どちらも楽しみだ。日下部君と結婚する事により、付き合う範囲も広がる。
友達や澪子ちゃん、美鈴ちゃんにも結婚の報告をしなきゃいけないし、自分自身と日下部君の実のお父さんにも挨拶しに行かなくちゃ。結婚する事はとても幸せな事だれども事前準備も沢山あるよね。
今まで見てきた、おひとり様のどこか寂しげな静寂な景色ではなく、幸福感を表す暖色系に彩られた景色がくすぐったい。
「これからは、琴葉が望む事は出来る限りは叶えていくつもりだ」
前髪をくしゃくしゃとしつつ、頭を撫でられる。
「じゃ、じゃあさ、会社帰りに堂々とデートしたい。沢山、帰り道デートしたい」
「うん、しよう」
「それからさ、以前に当選した高級ホテルのチケットをまだ使って無かったから近いうちに行きたいな」
「入籍する日に行こうか?」
「うん、その日を待ってるね」
私達はどちらかともなく、抱き締めあってキスをせがむ。結婚するのだから、これから先は隠す事なんて何も無いのだ。今まで出来なかった事を沢山しよう。
あの時、日下部君に再会出来て良かった。止まっていた運命の歯車を誘惑の延長線上にて、動かす事が出来たのだから──
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