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第五章
番外 肉体の死といっしょ
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最近、というか結構前から。タナトスからの目線が温かい。彼に対してはどうしても死ぬことを止められていた時期の厳格で理知的な印象が強くあったが、最近はそうでもなく――
「…お前、自分の時間をもう少し自分のために使ってもいいんだぞ。オネイロスもやっていた…みりどる?だとか、触らなくていいのか。あと前のように外食に行きたい、だとか。ちゃんとお前の要望は聞くから…。」
「いや、今のところは……ごはん食べられてますし…」
「……そうか。でも、何かあったら言いなさい」
ご覧の通り、めちゃくちゃ気を遣われている。
このタナトスからかなり気を遣われたり明確に慈しまれているようになったのはおそらく、レーテーの依代と顔を合わせてからだった。
いや、その前からかもしれない。わたしの行動によって結果的にヒュプノスもオネイロスも揃って、それでタナトスに縁を繋ぎ直してくれてありがとうと言われたあたりだろうか。……わからないが、タナトスとの関係は以前のものから結構変わっている。
この前の双子兄弟ASMRの時も、ほぼかき消されて聞こえなかったけど聞こえた分のタナトスの声はとても柔らかかった。…彼にはちょっとくらい辛辣にされないと照れてしまうのに、最近全然やさしくされてばっかりで困る。本気で困ってはない。
「……おい、聞こえているか。上の空だったようだが」
「わっ、すみません。考え事たくさんしてて。あっ、でもレーテーさんのことじゃなくて、死神さんのことを考えてて……」
「そうか。……私の?何故だ。」
「いや、なんか最近死神さんってめちゃくちゃ優しいから照れちゃうなというか。なんならおねがぁい、紫苑のお父さん代わりになってぇ、って言っても受け入れてくれそうというか。あ、フリじゃないですからねこれ」
ふ、とタナトスの長い睫毛で彩られた目が伏せられる。
「…………お前が娘か。養子、なるほど……。」
あっ、冗談8割本気2割のボケがめちゃくちゃな悪手だったかもしれない。フリじゃないって言ったのに。
「…最近魔法も使えるようになった魔法少女マジカル紫苑ちゃんですけど、一応人間なのでわたし。ねっ。もう既に出来上がった関係性の中に土足で上がり込むことに対しては本気じゃないですよ、マジで。」
「……お前の言っていることが前半だけまた少し理解できなかったが、お前が居ないと弟達も寂しがるしこんな小さな子供をまた一人で放り出すなんて正気じゃない。保護責任があるだろう」
「わ~~~~、真面目だ。寂しいのって弟さんだけなんですか?死神さんはわたしが居ないとさみしいですか、はは、なんちゃって…」
ちょっとだけ首を傾げたタナトスから、そう遅くなく爆弾発言が飛んでくる。
「否定はできない」
「………ひえ。」
駄目だ、ボケで自爆してどうする。
そこに追撃するかのようにタナトスが淡々と言葉を落としていく。
「弟もそうだが…お前がいるから私の過ごす日々も色付いた。それは紛れもない事実だ。年こそ離れているがな、私はお前を信頼して大切に思っているよ」
「あっちょっとやめてくださいデレの過剰摂取で死んじゃうので、いや、その、デレとかじゃないですね……。わたしとの縁を、めちゃくちゃ大事にしてくださる。」
「……お前の方はどうだ、私と縁を繋いだことを後悔していないか。神格の相手を毎日して、度々身の危険に晒されるこの日々を、どう思ってる」
相手の瞳が少しだけ不安げに揺れているのを見て、まっすぐ、でもちょっとふざけて言葉を返す。
「……正直、めちゃくちゃ青春だと思ってます。青春という言葉自体よく意味を知らないんですけど。毎日楽しくて、うれしくて、はは…」
「そうか。お前が苦痛に思わないなら、良かった」
それを聞いたタナトスが、ふわりと笑む。
この日々は、多分レーテーを倒したら終わってしまうけれど。それでも、今は煌めいている。
ぐ、と伸びをしてぽつりとつぶやく。
「術式の勉強、頑張らないとな…」
「程々にな。糖分も摂りなさい」
「…はい。」
――この誰よりも綺麗な人が穏やかにいられるためにわたしも毎日頑張れる、と思った。
「…お前、自分の時間をもう少し自分のために使ってもいいんだぞ。オネイロスもやっていた…みりどる?だとか、触らなくていいのか。あと前のように外食に行きたい、だとか。ちゃんとお前の要望は聞くから…。」
「いや、今のところは……ごはん食べられてますし…」
「……そうか。でも、何かあったら言いなさい」
ご覧の通り、めちゃくちゃ気を遣われている。
このタナトスからかなり気を遣われたり明確に慈しまれているようになったのはおそらく、レーテーの依代と顔を合わせてからだった。
いや、その前からかもしれない。わたしの行動によって結果的にヒュプノスもオネイロスも揃って、それでタナトスに縁を繋ぎ直してくれてありがとうと言われたあたりだろうか。……わからないが、タナトスとの関係は以前のものから結構変わっている。
この前の双子兄弟ASMRの時も、ほぼかき消されて聞こえなかったけど聞こえた分のタナトスの声はとても柔らかかった。…彼にはちょっとくらい辛辣にされないと照れてしまうのに、最近全然やさしくされてばっかりで困る。本気で困ってはない。
「……おい、聞こえているか。上の空だったようだが」
「わっ、すみません。考え事たくさんしてて。あっ、でもレーテーさんのことじゃなくて、死神さんのことを考えてて……」
「そうか。……私の?何故だ。」
「いや、なんか最近死神さんってめちゃくちゃ優しいから照れちゃうなというか。なんならおねがぁい、紫苑のお父さん代わりになってぇ、って言っても受け入れてくれそうというか。あ、フリじゃないですからねこれ」
ふ、とタナトスの長い睫毛で彩られた目が伏せられる。
「…………お前が娘か。養子、なるほど……。」
あっ、冗談8割本気2割のボケがめちゃくちゃな悪手だったかもしれない。フリじゃないって言ったのに。
「…最近魔法も使えるようになった魔法少女マジカル紫苑ちゃんですけど、一応人間なのでわたし。ねっ。もう既に出来上がった関係性の中に土足で上がり込むことに対しては本気じゃないですよ、マジで。」
「……お前の言っていることが前半だけまた少し理解できなかったが、お前が居ないと弟達も寂しがるしこんな小さな子供をまた一人で放り出すなんて正気じゃない。保護責任があるだろう」
「わ~~~~、真面目だ。寂しいのって弟さんだけなんですか?死神さんはわたしが居ないとさみしいですか、はは、なんちゃって…」
ちょっとだけ首を傾げたタナトスから、そう遅くなく爆弾発言が飛んでくる。
「否定はできない」
「………ひえ。」
駄目だ、ボケで自爆してどうする。
そこに追撃するかのようにタナトスが淡々と言葉を落としていく。
「弟もそうだが…お前がいるから私の過ごす日々も色付いた。それは紛れもない事実だ。年こそ離れているがな、私はお前を信頼して大切に思っているよ」
「あっちょっとやめてくださいデレの過剰摂取で死んじゃうので、いや、その、デレとかじゃないですね……。わたしとの縁を、めちゃくちゃ大事にしてくださる。」
「……お前の方はどうだ、私と縁を繋いだことを後悔していないか。神格の相手を毎日して、度々身の危険に晒されるこの日々を、どう思ってる」
相手の瞳が少しだけ不安げに揺れているのを見て、まっすぐ、でもちょっとふざけて言葉を返す。
「……正直、めちゃくちゃ青春だと思ってます。青春という言葉自体よく意味を知らないんですけど。毎日楽しくて、うれしくて、はは…」
「そうか。お前が苦痛に思わないなら、良かった」
それを聞いたタナトスが、ふわりと笑む。
この日々は、多分レーテーを倒したら終わってしまうけれど。それでも、今は煌めいている。
ぐ、と伸びをしてぽつりとつぶやく。
「術式の勉強、頑張らないとな…」
「程々にな。糖分も摂りなさい」
「…はい。」
――この誰よりも綺麗な人が穏やかにいられるためにわたしも毎日頑張れる、と思った。
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