迷い道

琥珀正狐

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迷い道

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生まれて大きくなるまでは、親や家族が面倒見てくれて、生きる方向も教えてくれた。

敷かれたレールを行くのは簡単だが、楽ではない。
敷かれたレールを走れない電車は整備不良として扱われる。
敷かれたレールを走るまで整備される。人なら自らの整備という努力がいる。

僕は敷かれたレールを走ってた。
整備して、元のレールに戻って。整備しながら走り続けなければならない。
周りにある草原に転がってはダメなのだろうか。
あの綺麗な海を眺めていてはいけないのだろうか。

ある日唐突に言われた。
「好きに生きろ」と。

ああ。もう草原を走っても、転がってもいいんだ。

あの海を眺めるだけじゃなく、泳いでもいいんだ。

僕の夢はたった言われた一言で叶ってしまった。

ずっと願ってた夢だ。

こんな長年の夢を誰が塗り替えることが出来るだろう。


それから飽きることない日々が続いた。
雨の日も、風の日も、日々の景色が変わっていきながら、僕はずっとレールでない場所を走った。


だが、日に日に車輪には草原の草が絡まり、草の水分で車輪は錆びていた。

海風に乗った塩が体に当たり、錆びてきた。

動きにくい。

僕は整備した。

しかし、レールから外れ走っていた日々を考えると、巻き戻せるほどの馬力も無くなっていた。
1日、数ヶ月での整備ではもう戻れなくなっていた。


敷かれたレールしか走ったことの無い僕はどこを目的地として走ればいい?

こんな体でどこを走ればいい?

自分で考えてレールを作るしか無かった。

レールを作り走ってみた。

川や溝に落ち込む日々。

レールがちょっと強い風が吹いただけなのに壊れる。



僕はどこに向かっているのだろう。



僕は迷いに迷った。


僕と同じく迷ってる電車もいた。


こんなものかと

僕は走るのを止めた。



風が吹いて勝手に体が動く。


坂道で勝手に体が動く。


岩にぶつかりどんどん壊れる。



やっと止まった時には。



暗い土の中だった。










これから僕はどこへ行けばいい。







前にも後ろにも動かなくなった体を思いながら。






僕はさまよった。












暗い土の中で、もっと暗い所へ。








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