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がっこうにいこう!
179話「懐の味」
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「ちょっとアリス。フラム・・・・・・どうしたのよ?」
陽射しを遮るパラソルの下、リーフが耳打ちしてくる。
「昨日、フラムと学院を卒業したらどうするのかって話になって・・・・・・。」
「ハァ・・・・・・何やってるのよ、もう。」
「そ、それは・・・・・・でも、フラムがその話題を出てきたし・・・・・・。」
「貴女の話を聞いていたかっただけなのよ、あの子は。」
「そ、そうなの・・・・・・?」
乙女心ってヤツ?
俺には難易度が高過ぎる・・・・・・。
「とにかく、フラムの事は貴女に任せるわよ。他の子たちは私とヒノカで見てるから。」
「分かったよ・・・・・・。」
「それと、水着似合っているんだから、もっと堂々としていなさい。」
「うぐ・・・・・・。」
傍から見る分には全然良いんだがなぁ・・・・・・。
リーフに促されて立ち上がる。
その脚で膝を抱えたフラムの元へ寄り、手を差し出した。
「フラム、立って。」
「ど、どうしたの・・・・・・?」
「えーっと・・・・・・・・・・・・おやつ買いに行こう、おやつ!」
「おや・・・・・・つ?」
返事を待たず、フラムの手を取って半ば強引に立ち上がらせた。
そのまま引きずる様に海の家を目指す。
ビーチは昨日までの騒ぎとは打って変わって穏やかな雰囲気。
人影もまばらで過ごしやすい。
まぁ、あれだけ魔物でごった返してたんだし、ビーチに近づきたくないのも理解出来る。
あとあのデカいサメも転がってるしな。
ちなみにマグロドンは日が昇る前に浜に打ち上げられた。
別に魔女たちが倒した訳ではなく、死因は餓死である。
あの巨体を維持するには相当なエネルギーが必要なのだそうだ。なんと悲しい運命。
ともかくイベント戦はこれで終了。
そして、その打ち上げパーティーが海の家で行われていた。
静かなビーチとは対照的に、随分盛り上がっている。
メンバー構成は大半が魔女となっており、幼女が酒盛りしているという、しかるべきところから指導が来てしまいそうな絵面である。
もちろん肴はマグロ&フカヒレ料理。
「いらっしゃいませー。 ご注文はお決まりですか?」
俺たちに対応する店員も魔女。即ち幼女。
そんな店員相手にもオドオドしてしまうのがフラムらしい。
「んー・・・・・・何か食べたいものある、フラム?」
「ぅ、え、えーっと・・・・・・。」
まぁ、迷うのも無理はない。
ここの品揃えは定番のものから、何だかよく分からないものまで異常に多い。
”寿司クレープ”とか”炒飯ケーキ”とか、食うやつ居るんだろうか。
・・・・・・とりあえず、安全そうなのを幾つか見繕っておこう。
目に留まった定番メニューを適当に注文していく。
「かしこまりー。」
結構な量の注文を受けた店員が、涼し気な顔で調理に向かった。
その流れるような手際と往年のシェフを思わせるような貫禄に、思わず見惚れてしまう。
「あ、あの子・・・・・・すごい、ね。」
「そうだねぇ。きっとたくさん練習してるんだろうね。」
それこそ何年、何十年と。
「アリスも、あの子も、私より小さい、のに・・・・・・みんな、すごくて・・・・・・。」
「な、何言ってるのさ。フラムだって凄いんだよ。私なんて何度も助けられてるんだし。」
「私、なんて・・・・・・・・・・・・。」
フラムの言葉尻が、波の音に融けるように消えていく。
うーん、一体何が原因なんだ?
おそらくは家の事情だろうけど、無闇に首を突っ込む訳にもいかないしな・・・・・・。
フラムも年頃だし、結婚とか婚約とかそういう類の話だろうか。
もしそうなら・・・・・・俺に出来ることは無いに等しい。
仮にフラムが望む通り、俺とフラムが結婚したとしても、彼女は貴族。
リヴィが言っていたように、子孫を残すという義務がある。
となれば結局、彼女の望む未来はそこにはない。
家を捨てて”かけ落ち”という手もあるだろう。
でもそれは、最良とは程遠い手段だ。
フラムが負い目を感じるような真似はさせたくない。
もし俺が男だったら話は簡単なんだが・・・・・・それはそれで大変そうだな。特に俺が。
所詮それも”たられば”の話である。
思考は巡るも、打開策は浮かんでこない。
そもそも原因すら分かっていないのだから考えようもない。
「いつでも話を聞くよ」とは伝えてあるのだけれど。
「アイス、一本もらうね。」
「あいよー。」
考えを中断し、備え付けられた冷凍庫からアイスを一本引き出した。
それをフラムの口の中に無理矢理ねじ込む。
「ふぁ・・・・・・っ!? な、なにすゆの!?」
「難しい顔をしていたからさ。・・・・・・その、私には事情は分からないけど、今は全部忘れちゃっても良いと思うよ。」
「ぅ、うん・・・・・・。」
「・・・・・・ね、それ美味しい?」
「ふ、不思議な味・・・・・・だけど、あ、甘くて、おいしい。空の色も・・・・・・綺麗。」
「そっか、なら良かった。」
”空の色”か・・・・・・。
俺には安っぽいソーダバーにしか見えないってのに・・・・・・。こっちでは高いけど。
「お待たせしましたー!」
代金を払い、両手と触手を使ってやっと抱え切れる荷物を受け取り、来た道を戻り始める。
結構な量になってしまったが、食堂で大暴れした怪物たちもいることだし”物足りる”ということは無いだろう。
「た、食べる・・・・・・アリス?」
フラムが差し出してきたアイスを少し齧る。
「うん、おいしいね。」
けど、やっぱり懐かしのソーダ味だった。
陽射しを遮るパラソルの下、リーフが耳打ちしてくる。
「昨日、フラムと学院を卒業したらどうするのかって話になって・・・・・・。」
「ハァ・・・・・・何やってるのよ、もう。」
「そ、それは・・・・・・でも、フラムがその話題を出てきたし・・・・・・。」
「貴女の話を聞いていたかっただけなのよ、あの子は。」
「そ、そうなの・・・・・・?」
乙女心ってヤツ?
俺には難易度が高過ぎる・・・・・・。
「とにかく、フラムの事は貴女に任せるわよ。他の子たちは私とヒノカで見てるから。」
「分かったよ・・・・・・。」
「それと、水着似合っているんだから、もっと堂々としていなさい。」
「うぐ・・・・・・。」
傍から見る分には全然良いんだがなぁ・・・・・・。
リーフに促されて立ち上がる。
その脚で膝を抱えたフラムの元へ寄り、手を差し出した。
「フラム、立って。」
「ど、どうしたの・・・・・・?」
「えーっと・・・・・・・・・・・・おやつ買いに行こう、おやつ!」
「おや・・・・・・つ?」
返事を待たず、フラムの手を取って半ば強引に立ち上がらせた。
そのまま引きずる様に海の家を目指す。
ビーチは昨日までの騒ぎとは打って変わって穏やかな雰囲気。
人影もまばらで過ごしやすい。
まぁ、あれだけ魔物でごった返してたんだし、ビーチに近づきたくないのも理解出来る。
あとあのデカいサメも転がってるしな。
ちなみにマグロドンは日が昇る前に浜に打ち上げられた。
別に魔女たちが倒した訳ではなく、死因は餓死である。
あの巨体を維持するには相当なエネルギーが必要なのだそうだ。なんと悲しい運命。
ともかくイベント戦はこれで終了。
そして、その打ち上げパーティーが海の家で行われていた。
静かなビーチとは対照的に、随分盛り上がっている。
メンバー構成は大半が魔女となっており、幼女が酒盛りしているという、しかるべきところから指導が来てしまいそうな絵面である。
もちろん肴はマグロ&フカヒレ料理。
「いらっしゃいませー。 ご注文はお決まりですか?」
俺たちに対応する店員も魔女。即ち幼女。
そんな店員相手にもオドオドしてしまうのがフラムらしい。
「んー・・・・・・何か食べたいものある、フラム?」
「ぅ、え、えーっと・・・・・・。」
まぁ、迷うのも無理はない。
ここの品揃えは定番のものから、何だかよく分からないものまで異常に多い。
”寿司クレープ”とか”炒飯ケーキ”とか、食うやつ居るんだろうか。
・・・・・・とりあえず、安全そうなのを幾つか見繕っておこう。
目に留まった定番メニューを適当に注文していく。
「かしこまりー。」
結構な量の注文を受けた店員が、涼し気な顔で調理に向かった。
その流れるような手際と往年のシェフを思わせるような貫禄に、思わず見惚れてしまう。
「あ、あの子・・・・・・すごい、ね。」
「そうだねぇ。きっとたくさん練習してるんだろうね。」
それこそ何年、何十年と。
「アリスも、あの子も、私より小さい、のに・・・・・・みんな、すごくて・・・・・・。」
「な、何言ってるのさ。フラムだって凄いんだよ。私なんて何度も助けられてるんだし。」
「私、なんて・・・・・・・・・・・・。」
フラムの言葉尻が、波の音に融けるように消えていく。
うーん、一体何が原因なんだ?
おそらくは家の事情だろうけど、無闇に首を突っ込む訳にもいかないしな・・・・・・。
フラムも年頃だし、結婚とか婚約とかそういう類の話だろうか。
もしそうなら・・・・・・俺に出来ることは無いに等しい。
仮にフラムが望む通り、俺とフラムが結婚したとしても、彼女は貴族。
リヴィが言っていたように、子孫を残すという義務がある。
となれば結局、彼女の望む未来はそこにはない。
家を捨てて”かけ落ち”という手もあるだろう。
でもそれは、最良とは程遠い手段だ。
フラムが負い目を感じるような真似はさせたくない。
もし俺が男だったら話は簡単なんだが・・・・・・それはそれで大変そうだな。特に俺が。
所詮それも”たられば”の話である。
思考は巡るも、打開策は浮かんでこない。
そもそも原因すら分かっていないのだから考えようもない。
「いつでも話を聞くよ」とは伝えてあるのだけれど。
「アイス、一本もらうね。」
「あいよー。」
考えを中断し、備え付けられた冷凍庫からアイスを一本引き出した。
それをフラムの口の中に無理矢理ねじ込む。
「ふぁ・・・・・・っ!? な、なにすゆの!?」
「難しい顔をしていたからさ。・・・・・・その、私には事情は分からないけど、今は全部忘れちゃっても良いと思うよ。」
「ぅ、うん・・・・・・。」
「・・・・・・ね、それ美味しい?」
「ふ、不思議な味・・・・・・だけど、あ、甘くて、おいしい。空の色も・・・・・・綺麗。」
「そっか、なら良かった。」
”空の色”か・・・・・・。
俺には安っぽいソーダバーにしか見えないってのに・・・・・・。こっちでは高いけど。
「お待たせしましたー!」
代金を払い、両手と触手を使ってやっと抱え切れる荷物を受け取り、来た道を戻り始める。
結構な量になってしまったが、食堂で大暴れした怪物たちもいることだし”物足りる”ということは無いだろう。
「た、食べる・・・・・・アリス?」
フラムが差し出してきたアイスを少し齧る。
「うん、おいしいね。」
けど、やっぱり懐かしのソーダ味だった。
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