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BACK TO THE ・・・・・・
00010話「マナノキ」
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手続きを終え、学校を重い足取りで出る。
まさか魔道具の技術体系があんなに変わっていようとは・・・・・・。
だが俺のいた時代よりもかなり未来なのだし、当然と言えば当然か。
大きな時間の隔たりを感じ、思わずため息を吐いてしまう。
「おいおい、そんなに落ち込むなって。アタシだってちゃんと卒業できたんだしさ。」
言いながらグリグリと頭を撫でられる。
「さて、ちっと遅くなっちまったな。さっさと買い物に行こうぜ。」
「何を買いに行くんですか?」
「おチビの生活用品と晩飯だな。昼はその辺で済ませちまおう。」
「分かりました。また運搬車に乗るんですか?」
「いや、ここからは徒歩だけど・・・・・・チビは平気か?」
「はい、慣れてるので大丈夫ですよ。」
冒険者ギルドの仕事で一日歩き通しだったこともあるし、街の散策くらいは問題にならない。
「よし、それなら必要な物は今日のうちに買い揃えちまうか!」
大股で歩き出したカレンに慌ててついて歩く。
彼女が向かった先は学校から十分ほど歩いた場所にある商店街だった。
昼時ということもあり人で賑わっている。
「んー、まずは・・・・・・飯にするか。」
カレンはそう言うと商店街の中を進んで行き、一軒の食堂の扉を開けた。
大衆食堂のようで席は八割以上埋まっており、カレンと同じ警備隊の制服を着た人もチラホラと見かける。
外回りの途中で寄ったり、基地の食堂に飽きた人なんかが来ているらしい。
「オヤジ、席空いてるか?」
「カレンか。・・・・・・奥が空いてるぞ。」
カレンの挨拶に応えたのは眼帯をしたガタイの良いおじさんだった。
髪と髭には白いものが混じっており、年はそれなりに取っているようだ。
「その子が例の子供か?」
「もう知ってんのかよ。そうだよ。」
「・・・・・・そうか。」
二人はそれ以上言葉を交わすことはなく、カレンはさっさと奥の席に着いてしまった。
間もなくして、給仕の少女が注文を取ってもいないのに料理を運んできた。
昼食は一種類しか無いので、席に着いたら勝手に運ばれてくるシステムになっているらしい。
「お待たせ、カレンさん! と、可愛い子ちゃん!」
「あぁ、ありがとな、マレル。」
お金を渡そうとしたカレンの手を止め、マレルが囁く。
「カレンさん、大変だったんでしょ? 今日はお父さんの奢りだって。」
「そっか・・・・・・悪ぃな。」
「その代わり、その子連れてまた来てね。私、妹が欲しかったんだ! ふふふ~。」
マレルにわしゃわしゃと頭を撫でられる。
「おいマレル! 後がつかえてんだ、早く戻ってこい!」
「ふふ、お父さんが怒ってるからもう行くね。二人ともごゆっくり!」
エプロンを翻らせるマレルを見送ってから、俺たちは食事を始めた。
パンにスープとサラダ、肉串焼きが数本。値段のわりには美味い。人気になるのも分かるが・・・・・・ボリュームは足りない気がする。俺ならこれで十二分なのだが。
「お前・・・・・・結構食うんだな。」
「そうですか? 確かに少し多かったですけど。」
「アタシでも結構キツいのに・・・・・・。食費は多めに見積もった方が良さそうだな、ははっ。」
女性冒険者でも俺の二倍は食ってたけどなぁ。時代が進んでみんな少食になってしまったのだろうか。それならこのボリュームなのも頷ける。
オヤジさんにお礼を言ってから店を後にすると、商店街の人波は少し落ち着いていた。
「よし、次は服を買いに行くか。」
インベントリに予備の服はあるが、使う訳にもいかないか。
どこから持って来たんだって話になるだろうし。
そんなことを考えながらカレンと一緒に服を売っている店に入っていく。
「とりあえず好きな服を三着ほど選びな。下着も忘れるなよ。」
中の商品は質はそこまで良くないが、同じデザインの服がたくさん置かれている。大量生産も出来るようになっているようだ。
下着は俺が居た時代にあったものと殆ど変わらない、というのは語弊があるか。
元の時代よりも以前から地球のものと遜色のない下着が格安で普及していたのだ。一種のオーパーツである。
普及には魔女たちが一役買っているという話を耳にしたことがある。おそらくこの時代でも彼女たちは元気に暗躍しているのだろう。
「じゃあコレで。」
手近にあった三着を手に取る。
「アタシも大概オシャレの事なんて分かんねーけど・・・・・・流石にもっと可愛いの選んでもいいと思うぞ?」
「私もよく分からないので・・・・・・。」
自分で選ぶとどうしても楽そうなものを選んじゃうんだよなぁ。
元の時代でもお姉ちゃんたちに選んでもらってたし・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・よし。おーい、店員さーん!」
無事店員さんに服を選んでもらい、その後も買い物のために色んな店を訪れた。
やっと買い物が終わったと一息ついた時には、陽が沈み始めていた。
街の至る所に立っている街灯に魔力の光が灯っていく。
陽があるうちは気にしていなかったけど、街灯も魔道具化しているようだ。
しかし妙に太くてデカいな。電柱みたいだ。
「ん? ”マナノキ”がどうかしたのか?」
「”マナノキ”って、あの街灯のことですか?」
「なんだ、知らなかったのか。アレから魔力が送られてくるから魔道具が使えるんだぞ。ま、仕組みは分からねえけどな。」
なるほど、”マナの樹”ね。こんな名づけをするのは魔女くらいだろう。
どうやら見た目通り電柱のような役割を果たしているようだ。あの”マナの樹”から周辺の建物に魔力を送っているらしい。あんな丈夫そうに作る理由も分かる。
でも魔力が少し漏れてないか・・・・・・あ、漏れた魔力を使って街灯を光らせてるのか。それでも漏れた分は使い切れてないけど。
あれちょっと待って・・・・・・もしかして、空気中の魔力が少し濃いのってコレの所為じゃ・・・・・・。
うん、何も見なかったことにしよう。
「さて、そろそろ帰るか。しかしさすがに疲れたな・・・・・・。チビは平気か?」
「はい、大丈夫です。」
「ガキは元気だなぁ・・・・・・。」
というよりもカレンの体力が無いような気が・・・・・。
いや、でもカレンは警備隊での訓練をこなしているんだし、普通の人よりは体力があるはず。
つまり・・・・・・未来人の身体能力が全体的に落ちている?
その分エネルギー消費も減ったから食事の量も少なくなった?
「おい、何してんだ。早く行こうぜ。」
「今行きます。」
モヤモヤとしたものを抱えながら、俺はカレンと共に帰路についた。
まさか魔道具の技術体系があんなに変わっていようとは・・・・・・。
だが俺のいた時代よりもかなり未来なのだし、当然と言えば当然か。
大きな時間の隔たりを感じ、思わずため息を吐いてしまう。
「おいおい、そんなに落ち込むなって。アタシだってちゃんと卒業できたんだしさ。」
言いながらグリグリと頭を撫でられる。
「さて、ちっと遅くなっちまったな。さっさと買い物に行こうぜ。」
「何を買いに行くんですか?」
「おチビの生活用品と晩飯だな。昼はその辺で済ませちまおう。」
「分かりました。また運搬車に乗るんですか?」
「いや、ここからは徒歩だけど・・・・・・チビは平気か?」
「はい、慣れてるので大丈夫ですよ。」
冒険者ギルドの仕事で一日歩き通しだったこともあるし、街の散策くらいは問題にならない。
「よし、それなら必要な物は今日のうちに買い揃えちまうか!」
大股で歩き出したカレンに慌ててついて歩く。
彼女が向かった先は学校から十分ほど歩いた場所にある商店街だった。
昼時ということもあり人で賑わっている。
「んー、まずは・・・・・・飯にするか。」
カレンはそう言うと商店街の中を進んで行き、一軒の食堂の扉を開けた。
大衆食堂のようで席は八割以上埋まっており、カレンと同じ警備隊の制服を着た人もチラホラと見かける。
外回りの途中で寄ったり、基地の食堂に飽きた人なんかが来ているらしい。
「オヤジ、席空いてるか?」
「カレンか。・・・・・・奥が空いてるぞ。」
カレンの挨拶に応えたのは眼帯をしたガタイの良いおじさんだった。
髪と髭には白いものが混じっており、年はそれなりに取っているようだ。
「その子が例の子供か?」
「もう知ってんのかよ。そうだよ。」
「・・・・・・そうか。」
二人はそれ以上言葉を交わすことはなく、カレンはさっさと奥の席に着いてしまった。
間もなくして、給仕の少女が注文を取ってもいないのに料理を運んできた。
昼食は一種類しか無いので、席に着いたら勝手に運ばれてくるシステムになっているらしい。
「お待たせ、カレンさん! と、可愛い子ちゃん!」
「あぁ、ありがとな、マレル。」
お金を渡そうとしたカレンの手を止め、マレルが囁く。
「カレンさん、大変だったんでしょ? 今日はお父さんの奢りだって。」
「そっか・・・・・・悪ぃな。」
「その代わり、その子連れてまた来てね。私、妹が欲しかったんだ! ふふふ~。」
マレルにわしゃわしゃと頭を撫でられる。
「おいマレル! 後がつかえてんだ、早く戻ってこい!」
「ふふ、お父さんが怒ってるからもう行くね。二人ともごゆっくり!」
エプロンを翻らせるマレルを見送ってから、俺たちは食事を始めた。
パンにスープとサラダ、肉串焼きが数本。値段のわりには美味い。人気になるのも分かるが・・・・・・ボリュームは足りない気がする。俺ならこれで十二分なのだが。
「お前・・・・・・結構食うんだな。」
「そうですか? 確かに少し多かったですけど。」
「アタシでも結構キツいのに・・・・・・。食費は多めに見積もった方が良さそうだな、ははっ。」
女性冒険者でも俺の二倍は食ってたけどなぁ。時代が進んでみんな少食になってしまったのだろうか。それならこのボリュームなのも頷ける。
オヤジさんにお礼を言ってから店を後にすると、商店街の人波は少し落ち着いていた。
「よし、次は服を買いに行くか。」
インベントリに予備の服はあるが、使う訳にもいかないか。
どこから持って来たんだって話になるだろうし。
そんなことを考えながらカレンと一緒に服を売っている店に入っていく。
「とりあえず好きな服を三着ほど選びな。下着も忘れるなよ。」
中の商品は質はそこまで良くないが、同じデザインの服がたくさん置かれている。大量生産も出来るようになっているようだ。
下着は俺が居た時代にあったものと殆ど変わらない、というのは語弊があるか。
元の時代よりも以前から地球のものと遜色のない下着が格安で普及していたのだ。一種のオーパーツである。
普及には魔女たちが一役買っているという話を耳にしたことがある。おそらくこの時代でも彼女たちは元気に暗躍しているのだろう。
「じゃあコレで。」
手近にあった三着を手に取る。
「アタシも大概オシャレの事なんて分かんねーけど・・・・・・流石にもっと可愛いの選んでもいいと思うぞ?」
「私もよく分からないので・・・・・・。」
自分で選ぶとどうしても楽そうなものを選んじゃうんだよなぁ。
元の時代でもお姉ちゃんたちに選んでもらってたし・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・よし。おーい、店員さーん!」
無事店員さんに服を選んでもらい、その後も買い物のために色んな店を訪れた。
やっと買い物が終わったと一息ついた時には、陽が沈み始めていた。
街の至る所に立っている街灯に魔力の光が灯っていく。
陽があるうちは気にしていなかったけど、街灯も魔道具化しているようだ。
しかし妙に太くてデカいな。電柱みたいだ。
「ん? ”マナノキ”がどうかしたのか?」
「”マナノキ”って、あの街灯のことですか?」
「なんだ、知らなかったのか。アレから魔力が送られてくるから魔道具が使えるんだぞ。ま、仕組みは分からねえけどな。」
なるほど、”マナの樹”ね。こんな名づけをするのは魔女くらいだろう。
どうやら見た目通り電柱のような役割を果たしているようだ。あの”マナの樹”から周辺の建物に魔力を送っているらしい。あんな丈夫そうに作る理由も分かる。
でも魔力が少し漏れてないか・・・・・・あ、漏れた魔力を使って街灯を光らせてるのか。それでも漏れた分は使い切れてないけど。
あれちょっと待って・・・・・・もしかして、空気中の魔力が少し濃いのってコレの所為じゃ・・・・・・。
うん、何も見なかったことにしよう。
「さて、そろそろ帰るか。しかしさすがに疲れたな・・・・・・。チビは平気か?」
「はい、大丈夫です。」
「ガキは元気だなぁ・・・・・・。」
というよりもカレンの体力が無いような気が・・・・・。
いや、でもカレンは警備隊での訓練をこなしているんだし、普通の人よりは体力があるはず。
つまり・・・・・・未来人の身体能力が全体的に落ちている?
その分エネルギー消費も減ったから食事の量も少なくなった?
「おい、何してんだ。早く行こうぜ。」
「今行きます。」
モヤモヤとしたものを抱えながら、俺はカレンと共に帰路についた。
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