後悔

烈風

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後悔

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「俺にはある悩みがあります。それは好きな人が虐められてることです。」

俺はある掲示板に悩みを書き込んだ

「なら止めればいいじゃないか、先生に言うなり、自分で止めるなり」

おおかた回答は想像できていたはずだ…
だって自分でもそう思っているから

でもできない……

「クラスの殆どが加担していて、先生に行ったり自分で止めたら自分も虐められてしまう」

俺はそう書き込もうとしたが、送信のボタンを押すところで手が止まった。

「…………………」

自分の情けなさと勇気の無さに涙が出てきた……

俺は携帯を充電器に挿し、その日は寝ることにした………

………

夢を見た……

小学生の頃

仲の良かった5人で遊んでいる夢だった

ムードメーカーでみんなから好かれていた、達也……本当は一緒の中学に行きたかったけど親の仕事で引っ越して以来疎遠となってしまった…

チャラい感じだけど根が優しくて、同じ中学の男子で唯一心を開ける、寛太…今でも親友だ…

小六の頃引っ越してきた女子の夏美、最初はあまり話せなかったけど今では秘密も教えあえる仲だ

そして優しくて真面目な裕美、俺の好きな人で本当に優しくて真面目だ……そんな性格が災いを呼んでしまったのだろうか……

…………戻りたい……

楽しかったあの頃に……

正直学校に行きたくない……

これ以上苦しむあの人を見たくない……

そんな悩みを抱えつつ、行きたくもない学校の準備を始めた。

支度ができると俺は重い足を引きずりながら学校へ向かった。

…………

教室へ入った……

誰もいない…一番乗りだったようだ

教室に入って真っ先に目についたはあの人の机だ

見るに耐えない暴言と落書きが書かれている。

中学生にもなってこんなことして何が楽しいのだろう……

そんなことを思いながら自分の席へと着き、必要なものを鞄から取り出した。

次々とクラスメートが入ってくる

「おい!なんだそんなシケた面して」

ボーッとしていた俺に早島が話しかけてきた。

早島は中学からできた友達でよく話している。

仲良くはしてるが……こいつもいじめに加担している……

「ああ…ゲームよしすぎて寝不足でさ…」

俺は咄嗟に思いついた事を話した

流石に裕美のことで悩んでるとはいえなかった……

「ははは!ちゃんと寝ろよ!」

そういうと早島別のやつに話をしに行った

……女子達が何か話してる

……嫌な予感がする…

少し耳を立ててみることにした

「マジで?あいつ泣くかもよ(笑」

ああ………またその話か……

聞き耳を立てたことを後悔した

自分に止める勇気が欲しい…

そう思いながら窓の外を見つめていると、裕美が教室に入ってきた。

女子達が何かするのかと思って横目で見た……が特に動く様子もなく

なーんだただの思い違いかと少しだけ安堵した……

………4時間目が終了して昼休みになった。

俺は中庭で寛太と一緒によくお弁当を食べている。

今日も中庭へ向かおうとしてる時……

「あれ?」

裕美が自分のナップや机を探し回っている

もうなんとなく予想はついた

そんなとき裕美のところへいじめっこの人である、磴基が近づいた

「ねぇどうしたのー?」

白々しいどうぜお前らが何かしたんだろうに

「え……ぃゃ…そのお弁当がなくなってて」

裕美が弱々しく磴基に答える

「へー?よく調べた?教卓の中とか」

磴基はそういうとクスクス笑いながらいじめっこのグループがいるところは戻って行った

裕美は教卓へ向かい、それをいじめでる奴らが笑いながら見ている

裕美は弁当を手に持つと自分の席に帰り、その弁当の箱を開けた……

ふう……この程度でよかった……

朝の会話を思い出し、この程度でよかったと思う反面、いじめに対してこのとつけた自分に悪寒が走った

……しかしこれで終わるわけがなかった

裕美がずっと下を向いて動いていない…

よくよくみるとお弁当の中身がない……

裕美は席を立つと教室を出て行った

何もできなかった…

俺は力なく中庭へ向かった…

中庭で寛太が待っていた

「遅いぞー!もう空腹で限界だ!」

俺が中庭につくなり寛太がいきなり怒鳴ってきた。

「すまんすまん」

俺は平謝りをして、中庭のベンチに座った

俺と寛太は弁当箱を開けて弁当を食べ出した。

俺と寛太は他愛もない雑談を交わしながら弁当を食べた。

俺はふと思いついた。正義感の強い寛太ならどうにかしてくれるのではないかと……

(今は周りに誰もいない……話すなら今しかない……)

俺は寛太にさっきのことを全て話した

寛太は怒り心頭の顔つきで

「どうして止めなかった!」

と怒鳴ってきた

俺はその、怒鳴りを聞くと自然と涙が溢れてきた

「俺だって……止めたかったさ……」

寛太は何かを察したように

「…そうか」

その一言を呟くと寛太は二階へ上がって行った

まさか……と思い俺も後を追った

自分の教室から怒鳴り声が聞こえる

こっそりみると虐めていた女子達に寛太が怒鳴り散らしているようだった、

5分後寛太は満足そうな顔をして出てきた。

俺にサンズアップをして中庭の方へ走って行った

これで終わる……

……………

翌朝、足早に学校へ向かった

もう悩む必要もないんだ! 

学校へついたら寛太にお礼を言おう

そして裕美に謝ろう

どう謝ろうか悩みながら学校へ向かった

教室へ着くと

「あれ?」

裕美の席がない……

(もしかして落書き取ってるのかな?)

そんなことを思いながら自分の席について用意した。

(おかしい…なんで机だけじゃなくて椅子までないんだ……?それに荷物すらないじゃないか)

俺は時間が経つにつれどんどん不安になっていった

そんなことを思っていると裕美が教室は入ってきた

自分の席があったところに来て呆然としている

それから少し経ち先生がやってきた

「あ、あの……」

裕美が先生に話しかけた

「私の席が……」

裕美は先生にそう訴えかけた

するといじめっこの女子が

「あっごっめ~ん、汚すぎて捨てちゃった」と笑いながら先生へ言った

他の女子達も笑ってる…

クラス中が笑ってる…

異常な空間……

「ハハハ、全く、早く持ってきなさい」

と笑いまじりでそう答えた

「さあみんな座って、出席とりますよ」

先生が全員に向かいそういうと笑いが徐々に収まっていく

「え…私の席が…」

裕美がそう呟くと

「まあ少し待ってなさい、貴方のためにみんなの時間を割くことなんてできませんよ」

先生はそう裕美に投げつけた  

先生自体好きではなかったけどこれまで怒りが湧いたのは初めてだ

4時間目が終わった昼休みに

今日も寛太と中庭で弁当を食べていた

俺は朝のことを言おうとしたが

ふと思い出した……寛太が昨日怒鳴ったからその仕返しで……?

そう考えると声が詰まって出なくなってしまった……

結局話せず解散してしまった………

あれ以来さらにいじめがひどくなった

女子だけじゃなく男子もそれに加担するようになり

裕美は日に日に窶れていった……

俺はただそれを見つめることしかできなかった……

………

放課後帰ろうとしていると、いじめっこが裕美にバケツの水を掛けた

「ごめ~ん!転んじゃった」

どう見てもわざとである

しかし周りはそれを見て笑っている

……あれ?なんで俺は……

面白くもないのに笑ってるんだ……

自分の感情が理解できなくなっていた

自分の保身のために虐められてる人を笑ったのだ

自分に対する怒りで部屋の壁に当たった

そして泣き崩れた

なにもできない無力感、それどころかいじめに加担した事への怒り……

怒りでどうにかなりそうだった……

……………

あれからしばらく経ち席替えの日がやってきた。

正直隣が誰であろうとどうでもいい

そう思いながら席のくじを引いた

「えーと……隣は……裕美!」

内心嬉しかったが自分でいいのかという罪悪感へ苛まれた

もし隣なら虐められた時笑わないといけない……

もしかしたら加担するよう強要させるかもしれない

そんな不安を持ちながら席を動かした

……話せない……

お互いなにもできず佇んでいた

(あゝ……やっぱり…)

俺は自分の言動を恥じた

……翌朝

裕美が話しかけてきた

内心俺はそれが嬉しかった……

6年の頃へ戻れたような気がして

それでも……俺は素っ気ない態度を取り続けてしまった

……あの時の……あの時の彼女の顔が忘れられない……

その日以来夢に出てくるようになった

その時の顔が……

結局……この3年間で彼女の笑顔を見ることはなかった……



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