おじいちゃんの遺影

チゲン

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 最近、祖父がよく夢枕に立つ。
 やっと、遺影を見ても微笑むくらいの余裕ができた頃になって。
「夢枕って……たまに立つからありがたいんであって、こんなにしょっちゅう出てこられても困るんだけど」
「んなこと言うなよ、香奈。可愛い孫の成長だけが、死後の何よりの楽しみなんだ」
「それを言うなら『老後の楽しみ』でしょ」
 暇を見付けては、週に一回くらいのペースで私の安眠を妨害してくれる。昔から一風変わった人だったけど、○○は死んでも治らないってのは本当なんだな。
「そろそろ寝かせてよ。明日も忙しいんだから」
「今寝とるだろう」
「寝てるうちに入らないわよ」
「仕事なんて、適当にサボっちまえって」
「よく孫にそんなこと言えるわね。だいたいおじいちゃんだって、生きてるときは仕事ひと筋だったじゃん」
「そんなことないぞ。いかに働いているふりをして、要所要所でバレないように居眠りするか。それが長続きする秘訣ひけつだ」
「だから、孫に言うことじゃないってば。それに明日は、長峰さんとご飯食べにいくんだから」
 長峰さんとは、仕事で知り合ったビジネスマン。四十一歳で、落ち着いた雰囲気の、笑顔が素敵な男性です。
 初めは仕事上の付き合いだけだったけど、今ではプライベートで何度か食事に行っている。正直、いい感じだと自分では思っている。
「ひと回り以上年の離れた男なんかやめとけ。それに話を聞く限り、どうも胡散うさん臭い。信用ならん」
「またそれ……おじいちゃん、私といい感じになった男の子全員に言ってたよね」
「おまえの男を見る目が無さすぎるんだ」
「あのね、私も、もう大人なの。学生じゃないの。それに長峰さんこんかいに限っては、ホントにちゃんとした人だから」
「そう言って、いつも最後にはベソかいとったな」
「うるさい」
「まあそうまで言うなら、一度ウチに連れてこい。おじいちゃんが直々に吟味ぎんみしてやる」
「吟味って……おじいちゃん死んでるし」
「もうすぐお盆だろう。そっちに行って、この目で確かめてやるのよ」
「えっ、なに……お盆ってホントに死んだ人が帰ってこれるの?」
仏壇ぶつだんがアクセスポイントになっておるからな」
「wi-fiかよ」
「とにかく、一度連れてこい。いいな」
「もう……」
 祖父は、一度言いだしたら、こっちが何を言っても聞く耳を持たない。たぶん長峰さんを連れてくるまで、毎晩のように夢枕に立ってきやがるに違いない。
「わかったわよ。吟味でも何でもしてもらおうじゃない」
 私は渋々、了承した。
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