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19 相性
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祖父母の件が片付いて一安心、僕は真面目に講義に出ていた。何としてでも卒業せねば伯父にも悪い。その日講義の合間に喫煙所に行くと、蒼士が先に吸っていた。
「美月ぃ、また新しいお客さん紹介したるわ」
「ええけど。条件ちゃんと伝えとうやろうな?」
「大丈夫やって。早速今日連れていってええか?」
「おう」
昨日も常連が来て三箱渡してきたので、正直身体がキツかったが、ニコチンが切れる方がキツい。僕は四限が終わり学食で一番安いきつねうどんをかきこんだ後帰宅した。
隣の留学生だか何だかがまた宅飲みをしているのか、何語かわからない声がけたたましく響いていた。僕はとりあえずタバコに火をつけて彼らが来るのを待った。家に居ると延々と吸ってしまう。灰皿はもうパンパンだ。
「美月ぃ、来たで」
蒼士が連れてきたのは気の弱そうな肌の白い男で、目には生気がなく幽霊のような奴だと思った。蒼士がその彼の肩に腕を回して言った。
「こいつ、透。童貞やねんて。優しくしたってや」
「ええよ。よろしく、透くん」
「よろしくお願いします……」
透が差し出してきたタバコを確かに受け取ってこたつの上に置いた。まどろっこしいことはしたくない。僕はさっさと透をしごいて準備をさせた。透は消え入りそうな声で恐々と言った。
「ほんまに、ええんですか……?」
「そっちこそ、ほんまに男で童貞捨ててええんか? 僕は構わへんけど」
「美月さんやったら、いいです。可愛いし」
透はうつむいて赤くなった。僕相手にこの態度じゃ女の子となんて到底無理だろうなと可哀想になった。
「透くん、希望ある?」
「顔見ながら、したいです」
「ええよ。おいで」
蒼士はこたつに入ってタバコを吸いながら僕たちの様子を眺めていた。サングラスをしたままなので表情はよくわからない。いつものことだ。
「美月さん、美月さん……」
ぎこちない腰の動きを多少誘導させてやりながら、透の浮き上がったアバラ骨を見ていた。僕だってろくな食事をしていないがそれにしても痩せている。この様子だと固定客になるかな、などと考えた。
「いっていいですか……」
「自分のタイミングでいき」
隣からはまた騒がしい笑い声がしていてムードもへったくれもない。透が達して身を折り曲げ僕の胸に顔を乗せてきたので、頭くらいは撫でてやるかと癖のない黒髪に触れた。
「童貞卒業、おめでとうさん」
僕がそう言うと透はひきつった笑顔を見せた。引き抜かせてコンドームの口を縛りゴミ箱に放り投げる。ゴミの日がまだだから昨日の男のものも中にまだあるはずだった。
蒼士も一緒に帰るのかと思いきや、彼は透を追い出して居座った。僕は新しいタバコの封を切った。
「どないしたん、蒼士、今日は」
「たまには二人でゆっくり話したいと思ってな」
話ならたっぷりとしているつもりなのだがまだ足りないのか。
「話すことなんかないで」
「寂しいこと言うなよ。俺は美月に興味があるんやから」
そう言って蒼士はジャケットのポケットからタバコを取り出した。
「しながら話そうや」
「……ええ?」
蒼士とやるためのタバコを受け取るのは久しぶりだなと思いながら、吸い殻を捨ててベッドに二人で乗った。
「美月、気になってたんやけどさぁ……初めては、誰やったん?」
そう言いながら蒼士は僕のものに手を触れた。
「母親の愛人に襲われた」
「うわっ、最悪やなぁ」
雅彦さんのことを詳しく話す気になどなれなかった。ましてや愛していたことなんて、絶対に。ゆっくりと焦らすように蒼士の指は動き、さすがの僕も吐息が漏れた。
「美月って誰かに挿れたことはあるん?」
「ないよ」
「こっちは使いまくってんのにな。綺麗に縦割れしとうし」
蒼士の指がするりと中に入った。ほぐさなくても大丈夫なのにな、と思う。そして、いつまでも顔が見えないのも不気味だったので、僕は蒼士のサングラスを外した。
「……蒼士、珍しい色しとうな。カラコン?」
「ああ、目ぇやろ? 自前やで」
青みがかかっていて美しい。蒼士との付き合いはそこそこ長いがこんな瞳をしていたとは知らなかった。
「なぁ……美月。キスしてええ?」
「あかん」
僕はそこだけは譲らない。意地のようなものだった。無理やり奪われてもたまらないので、僕は四つん這いになって尻を突き出した。
「はよ挿れぇや」
蒼士が入ってきた。僕はなるべく楽な体勢を探しながら彼の求めに応えた。一度始めると長いのだ。獣のような荒い声はきっと隣にも聞こえていると思う。それもお互い様だ。文句を言われたことはない。
「はあっ……美月……俺だけのもんになる気はない……?」
いよいよ直接的なことを口にしてきた。僕は切り捨てた。
「ないよ。縛られるん嫌やもん」
「こんなに相性いいのに……?」
「そう思ってるんは蒼士だけや」
どの男も正直気持ちよさは変わらない。相性の良さがどうとかそういうことは分からない。変えずにいたいのはタバコだけだ。
さっさと終わらないかな、と僕は他のことを考え始めた。レポートの提出期限が迫っておりそろそろ始めないとまずいのだ。
蒼士は何度も何度も僕の名前を呼びながら果てていった。ベッドにうずくまる彼を放って僕はタバコに手を伸ばした。
「美月ぃ、また新しいお客さん紹介したるわ」
「ええけど。条件ちゃんと伝えとうやろうな?」
「大丈夫やって。早速今日連れていってええか?」
「おう」
昨日も常連が来て三箱渡してきたので、正直身体がキツかったが、ニコチンが切れる方がキツい。僕は四限が終わり学食で一番安いきつねうどんをかきこんだ後帰宅した。
隣の留学生だか何だかがまた宅飲みをしているのか、何語かわからない声がけたたましく響いていた。僕はとりあえずタバコに火をつけて彼らが来るのを待った。家に居ると延々と吸ってしまう。灰皿はもうパンパンだ。
「美月ぃ、来たで」
蒼士が連れてきたのは気の弱そうな肌の白い男で、目には生気がなく幽霊のような奴だと思った。蒼士がその彼の肩に腕を回して言った。
「こいつ、透。童貞やねんて。優しくしたってや」
「ええよ。よろしく、透くん」
「よろしくお願いします……」
透が差し出してきたタバコを確かに受け取ってこたつの上に置いた。まどろっこしいことはしたくない。僕はさっさと透をしごいて準備をさせた。透は消え入りそうな声で恐々と言った。
「ほんまに、ええんですか……?」
「そっちこそ、ほんまに男で童貞捨ててええんか? 僕は構わへんけど」
「美月さんやったら、いいです。可愛いし」
透はうつむいて赤くなった。僕相手にこの態度じゃ女の子となんて到底無理だろうなと可哀想になった。
「透くん、希望ある?」
「顔見ながら、したいです」
「ええよ。おいで」
蒼士はこたつに入ってタバコを吸いながら僕たちの様子を眺めていた。サングラスをしたままなので表情はよくわからない。いつものことだ。
「美月さん、美月さん……」
ぎこちない腰の動きを多少誘導させてやりながら、透の浮き上がったアバラ骨を見ていた。僕だってろくな食事をしていないがそれにしても痩せている。この様子だと固定客になるかな、などと考えた。
「いっていいですか……」
「自分のタイミングでいき」
隣からはまた騒がしい笑い声がしていてムードもへったくれもない。透が達して身を折り曲げ僕の胸に顔を乗せてきたので、頭くらいは撫でてやるかと癖のない黒髪に触れた。
「童貞卒業、おめでとうさん」
僕がそう言うと透はひきつった笑顔を見せた。引き抜かせてコンドームの口を縛りゴミ箱に放り投げる。ゴミの日がまだだから昨日の男のものも中にまだあるはずだった。
蒼士も一緒に帰るのかと思いきや、彼は透を追い出して居座った。僕は新しいタバコの封を切った。
「どないしたん、蒼士、今日は」
「たまには二人でゆっくり話したいと思ってな」
話ならたっぷりとしているつもりなのだがまだ足りないのか。
「話すことなんかないで」
「寂しいこと言うなよ。俺は美月に興味があるんやから」
そう言って蒼士はジャケットのポケットからタバコを取り出した。
「しながら話そうや」
「……ええ?」
蒼士とやるためのタバコを受け取るのは久しぶりだなと思いながら、吸い殻を捨ててベッドに二人で乗った。
「美月、気になってたんやけどさぁ……初めては、誰やったん?」
そう言いながら蒼士は僕のものに手を触れた。
「母親の愛人に襲われた」
「うわっ、最悪やなぁ」
雅彦さんのことを詳しく話す気になどなれなかった。ましてや愛していたことなんて、絶対に。ゆっくりと焦らすように蒼士の指は動き、さすがの僕も吐息が漏れた。
「美月って誰かに挿れたことはあるん?」
「ないよ」
「こっちは使いまくってんのにな。綺麗に縦割れしとうし」
蒼士の指がするりと中に入った。ほぐさなくても大丈夫なのにな、と思う。そして、いつまでも顔が見えないのも不気味だったので、僕は蒼士のサングラスを外した。
「……蒼士、珍しい色しとうな。カラコン?」
「ああ、目ぇやろ? 自前やで」
青みがかかっていて美しい。蒼士との付き合いはそこそこ長いがこんな瞳をしていたとは知らなかった。
「なぁ……美月。キスしてええ?」
「あかん」
僕はそこだけは譲らない。意地のようなものだった。無理やり奪われてもたまらないので、僕は四つん這いになって尻を突き出した。
「はよ挿れぇや」
蒼士が入ってきた。僕はなるべく楽な体勢を探しながら彼の求めに応えた。一度始めると長いのだ。獣のような荒い声はきっと隣にも聞こえていると思う。それもお互い様だ。文句を言われたことはない。
「はあっ……美月……俺だけのもんになる気はない……?」
いよいよ直接的なことを口にしてきた。僕は切り捨てた。
「ないよ。縛られるん嫌やもん」
「こんなに相性いいのに……?」
「そう思ってるんは蒼士だけや」
どの男も正直気持ちよさは変わらない。相性の良さがどうとかそういうことは分からない。変えずにいたいのはタバコだけだ。
さっさと終わらないかな、と僕は他のことを考え始めた。レポートの提出期限が迫っておりそろそろ始めないとまずいのだ。
蒼士は何度も何度も僕の名前を呼びながら果てていった。ベッドにうずくまる彼を放って僕はタバコに手を伸ばした。
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