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第三話 やろうぜ逃げ切れ鬼ごっこ!…の巻
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一息ついて。
コウはぼけ~っとしながらカナオの様子をじっと眺めていた。自分は今とりあえず何をすべきだろう。まずは父に報告すべきか…。でもはたして信じてもらえるか。まずは例の祠まで足を運ぶべきか…。でもどうやれば手がかりを得られるか…。
そんなことをただ黙々と考えていると、ふとそれらとは全く関係ないことが一瞬頭によぎる。
(あれ...?そういえば僕。なにか大事なことを忘れている気がする。)
約束…。その一言が彼の中でこだました。そのワードに引っかかり、とりあえず昨日までの様子を思い返してみた。たしか昨日はいつもどおり学校へ行って…。勉強して給食を食べて…。
「...あっ、そうだ約束してたんだ!」
(遊んだあと、また明日一緒に遊ぼうって約束してたんだった。たしか…夢ヶ丘公園で待ち合わせだったっけ。いろいろあったからすっかり忘れてたよ。時間も予定の時刻までせまってきてるし...。どうしよう。)
(…そもそもママを一人で置いといて大丈夫かな?…うーん。)
「ねえカナオくん。」
「ん?なあにお兄ちゃん?」
「えっとー...。その、お兄ちゃん、ちょっと用ができちゃったからさ。カナオくん、ちょっと家で留守番して待っててくれないかな。」
「え?」
するとカナオの表情は一瞬にしてやや曇った。もしかしたら大人のときに比べ、感情の起伏もやや激しくなっているのかもしれない。
「えっと...ちょっと友人と会いに公園に...。」
「んもう、ひどいよお兄ちゃん…ぼくをおいて一人であそびにいくなんて…。」
「ごめんね...すっかり忘れててさ...そろそろ行かないと間に合わないんだよ。」
「じゃぁ...つ..てって。」
「え?」
「ぼくも公園つれてって!それならゆるすからぁ。」
「え」
「でも...うんと...。ごめん、それは無理!」
「ずるいぃ!ぼくもつれてってよお!」
本来の凛とした彼女であればこのような展開になろうはずがない。たかが息子が遊びに行くが如きで『ずるい』という言葉が口からでてくるのでさえおかしな話だ。しかし今は違う。性別やら年齢からなにからなにまで変質した少年としての彼女に、そんな視点もブレーキ機能もあるはずがない。『兄を羨望のまなざしで見る、なんでも真似したがる少年』として改変されているのだから、むしろ子供らしくわがままを喚き散らすのが今は正しいのだ。しかし彼の中に『誘いを断る』という選択肢はサラサラなかった。というより本人もテンパっててそこまで頭が働かなかったというのが実情かもしれない。
(どうしよう。みんなにどう説明すればいいんだよ、こんなこと...。そもそも僕に弟なんていないこと、皆知ってるし...。いや…でもよく考えたら写真まで変わってたんだからさ。そもそも周りの認識も変わってるなんて可能性も…?…でも、確かめるにはどっちみちハードル高いなあ…う~ん…。)
そもそもマザコン気味なことさえ普段学校では隠しているのに、ことの顛末なんて同級生に言えるわけがない。言ったら言ったで馬鹿にされるのがオチだ。はっきりいってつれていきたくなかったはずだ。
しかし昨日まで弟なんていなかったコウにとって、この予想外の事態の中、無理にでもつれていくのを拒否すべきかどうか最適な答えが思いつかなかったのだ。こうしてややおされる形で、一緒に公園へ行くことを承諾した。
「よー、コウ!遅かったじゃん、いつもならお前とユウイチのツートップなのに。」
「はぁはぁ...ごめん。ちょっといろいろあって....。」
「まあまあそんなの気にすんなって!…ん?」
「…そういやあさ。」
「マユっちの後ろの子だれなの?弟なんていなかった...よな?」
「ぼく、まゆずみカナオ。5さいでーす!お兄ちゃんの弟なの。」
そういいカナオは小さなその手のひらをパーにして見せた。
(あちゃー…どうしよう。もろに黛って言ってるよ…!)
「あっ…ちょっと。いやまって。」
しかしそんなことはもう想定内。コウは一度深く深呼吸をすると、友人ら数名を少しカナオから離れた場所へと誘導し、聞き耳をたてさせた。
「実は実の弟というより本当はいとこなんだよ。だから名字も同じわけ。僕の家でしばらく預かることになったんだ。」
「へー、いとこかぁ~。」
「なんだよそんなことか。」
「それならわざわざこんな小声で言わなくてもいいのに。」
「...んまあいろいろあってね。」
(ふー...なんとかごまかせた...。)
「それじゃあケイドロでもやんね?」
「いいじゃんやろうやろう。」
「鬼誰にする?」
「じゃんけんでよくね?」
そんなようなことを皆でだべっていると、その間にカナオも割って入ってきた。
「ねえ、ねえ。」
「ん?なんだ?」
「その…ぼくもいっしょにあそびたいなあ。」
「お、いいじゃん。コウん家の子もやるってよ!」
「え...。」
「大丈夫大丈夫。少し手加減するからさ」
「いや...うん。そうだよね...。」
「それじゃあ...。」
「出さなきゃ負けよ、最初はぐー!」
「「じゃんけんポンっ」」
「げっ!俺が鬼かよ!」
「へへ。ユウイチが鬼で決まりだな!」
「ぼくもつかまんないようにしなくちゃっ。」
そう声を荒げたのはリーダー格の秋元ユウイチ。
ここでいうリーダー格というのはあくまでリーダーシップがあるというだけで明確にそう決まっているというわけでもなければ、某国民的漫画の如くガキ大将ポジを担わされているというわけでもない。たしかにおちゃらけたところはあるが、むしろ根は真面目な少年だ。彼はしぶしぶゆっくりと数字を唱え始めると、やがて読み上げるのを止め、大きな声で開始の合図を唱えた。
「...はじめ!」
「おら!俺に逃げられると思うなよ!」 ニヤッ
「ッチ!最初のターゲットはオレかよ!」
「俺の近くにいるほうが悪いんだ!」
「はい!ダイチタッチ!」
「くっそ~!」
「捕まえたぜ!マナト。」
「シラヌイ!捕まえた!」
「ああみんなどんどんとつかまっていっちゃってる。」
どうやらこのユウイチという少年。
おつむは決していいとは言えないが運動神経だけに関しては学年でもトップクラスであり、特に走るのが得意なようである。そのため最初は勝てると息まいていた少年らも、気が付けば次々とその身を拘束されていった。そこでコウは草むらにそっと身を潜め、カナオに小さな声でこう提言した。
「よし、カナオくん。お願いがあるけどいいかな?」 コソッ
「なあに?」 コソッ
「僕がおとりになるからその間にみんなを出してやってくれない?」 コソッ
「うん!わかったよ。」 コソッ
「よし、それじゃあ行ってくるね。」 コソッ
ザザッ!
「ユウちゃん、こっちこっち!」
「お?へへ、やるきだな?行くぜマユっち!」
こうやってコウがユウイチをおびき出している間にも、カナオはその小さな両足をパタパタと足踏みさせ、目的地である収容所へと走って向かう。
「おお!コウんとこの!すまねぇ助けてくれ!」
「うん!」
「タッチ!」
「へへ。つ~かまえた~!」
「うー、やっぱ無理だったか~。」
「へへ。まあでも、やっぱマユっちは強いな。他のやつとは大違いだw」
「それはどうも。」
スタスタタ…
「ん?誰かの足音がしたような…。」
「って!やべぇ!全員脱獄してるじゃねぇか!そっか、今日はあの子がいたんだっけ…!」
「くっそ~!全員捕まえてやる!本気で行かせてもらうぜ!!」
スタタタタッ!!
「あ~ん!こないでぇーっ!」
「へへ、逃げちゃだめだぜ坊やくんよぉ!」
「あっ!」
コケッ!
するとその時であった。つい走るのに夢中で足元にあった小石の存在に気づかず、思わずつまずいてしまったのだ。
_______
____
__
_
じゃ~
「いたっ...。」
「安心して。もう少しの辛抱だよ。」
その足にできた擦り傷に優しく水道の水をかけてやり、慎重にティッシュで傷のあたりを拭いてやる。今はそもそも転んで擦り傷を作るなんて機会もあまりないのであれであるが、たしか筆者も小さな頃はそのようなことを誰かにしてもらった経験がある。それは時によって両親かもしれないし、はたまた学校の教師であったかもしれないが。するとカナオは、瞳にためていた涙を外へと漏らしながらこういった。
「ひぐっ...ごめんねお兄ちゃんたち。ぼくのせいで...。」
「大丈夫大丈夫!まあ気にするな。ゲームはあとでもできるしな!」
「ありがとうみんな。それにしてもカナオくん。足は大丈夫?まだ足は痛い?」
「ううん…たしかにいたいけどもうだいじょうぶだよ。」
「それじゃ、家に帰ったら絆創膏はってあげるからもう少し我慢しててね。」
「うん!でも...。」
「このままじゃぼく、ゲームできないや...。」
哀しそうな顔をするカナオの様子をみかねてか、かの少年ユウイチは、ゲームをケイドロからかくれんぼにするよう提言してくれた。結果意見は満場一致で賛成。こうして6人は、日が暮れるまで皆遊びふけったという。
コウの視点
「それじゃあじゃあな!」
「うん!」
「じゃあね~、ユウイチお兄ちゃん!」
正直ママが僕の弟だって言った時なんかはどうなることかと思ったけど、無事何事もなく遊べてよかった~。皆もママにすごい優しいし。ママは少しわがままというか子供っぽくなったけど基本的にはいい子(?)だし。そういえば思い返してみればだけどこうやってママと公園で遊ぶなんて、幼稚園の年長さんのとき…それも秋の季節以来かも。成長すると友達と遊びに行く機会が多くなるから、なかなか一緒に遊びになんてなくなっちゃうもんね。
「…あっ!」
「?」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「祠へ行くの…いや!なんでもないよ!さ、家に帰って絆創膏でも貼ろうか!」
「うん!」
カナオは満面の笑みでコウにうなづいた。
ユウイチの視点
「それじゃあじゃあな!」
「うん!」
「じゃあね~、ユウイチお兄ちゃん!」
互いに笑顔で別れをつげ、俺たちはそれぞれ各々の帰路へと足を向かわせた。
それにしてもマユっちのいとこ。たしかカナオ?…っていってたっけ。やっぱ小さい子っていいよな~。しぐさって一つ一つがかわいいというか。俺も弟とか妹ほしいけど…なあ。最近母さんも父さんも仲が悪いし。なかなか無理そうだよな。コウノトリが運んでくれるってんならまた別だろうけど。はあ…いいよなぁ。
そんなときであった。
例の祠が彼の眼にちらっと入る。
「あ。これ、願いが叶うって噂のあれじゃん。」
「...まあダメ元で祈ってみるか。もしかしたら叶うかもしれないし。」
パン パン
「俺にも弟ができますように。」
コウはぼけ~っとしながらカナオの様子をじっと眺めていた。自分は今とりあえず何をすべきだろう。まずは父に報告すべきか…。でもはたして信じてもらえるか。まずは例の祠まで足を運ぶべきか…。でもどうやれば手がかりを得られるか…。
そんなことをただ黙々と考えていると、ふとそれらとは全く関係ないことが一瞬頭によぎる。
(あれ...?そういえば僕。なにか大事なことを忘れている気がする。)
約束…。その一言が彼の中でこだました。そのワードに引っかかり、とりあえず昨日までの様子を思い返してみた。たしか昨日はいつもどおり学校へ行って…。勉強して給食を食べて…。
「...あっ、そうだ約束してたんだ!」
(遊んだあと、また明日一緒に遊ぼうって約束してたんだった。たしか…夢ヶ丘公園で待ち合わせだったっけ。いろいろあったからすっかり忘れてたよ。時間も予定の時刻までせまってきてるし...。どうしよう。)
(…そもそもママを一人で置いといて大丈夫かな?…うーん。)
「ねえカナオくん。」
「ん?なあにお兄ちゃん?」
「えっとー...。その、お兄ちゃん、ちょっと用ができちゃったからさ。カナオくん、ちょっと家で留守番して待っててくれないかな。」
「え?」
するとカナオの表情は一瞬にしてやや曇った。もしかしたら大人のときに比べ、感情の起伏もやや激しくなっているのかもしれない。
「えっと...ちょっと友人と会いに公園に...。」
「んもう、ひどいよお兄ちゃん…ぼくをおいて一人であそびにいくなんて…。」
「ごめんね...すっかり忘れててさ...そろそろ行かないと間に合わないんだよ。」
「じゃぁ...つ..てって。」
「え?」
「ぼくも公園つれてって!それならゆるすからぁ。」
「え」
「でも...うんと...。ごめん、それは無理!」
「ずるいぃ!ぼくもつれてってよお!」
本来の凛とした彼女であればこのような展開になろうはずがない。たかが息子が遊びに行くが如きで『ずるい』という言葉が口からでてくるのでさえおかしな話だ。しかし今は違う。性別やら年齢からなにからなにまで変質した少年としての彼女に、そんな視点もブレーキ機能もあるはずがない。『兄を羨望のまなざしで見る、なんでも真似したがる少年』として改変されているのだから、むしろ子供らしくわがままを喚き散らすのが今は正しいのだ。しかし彼の中に『誘いを断る』という選択肢はサラサラなかった。というより本人もテンパっててそこまで頭が働かなかったというのが実情かもしれない。
(どうしよう。みんなにどう説明すればいいんだよ、こんなこと...。そもそも僕に弟なんていないこと、皆知ってるし...。いや…でもよく考えたら写真まで変わってたんだからさ。そもそも周りの認識も変わってるなんて可能性も…?…でも、確かめるにはどっちみちハードル高いなあ…う~ん…。)
そもそもマザコン気味なことさえ普段学校では隠しているのに、ことの顛末なんて同級生に言えるわけがない。言ったら言ったで馬鹿にされるのがオチだ。はっきりいってつれていきたくなかったはずだ。
しかし昨日まで弟なんていなかったコウにとって、この予想外の事態の中、無理にでもつれていくのを拒否すべきかどうか最適な答えが思いつかなかったのだ。こうしてややおされる形で、一緒に公園へ行くことを承諾した。
「よー、コウ!遅かったじゃん、いつもならお前とユウイチのツートップなのに。」
「はぁはぁ...ごめん。ちょっといろいろあって....。」
「まあまあそんなの気にすんなって!…ん?」
「…そういやあさ。」
「マユっちの後ろの子だれなの?弟なんていなかった...よな?」
「ぼく、まゆずみカナオ。5さいでーす!お兄ちゃんの弟なの。」
そういいカナオは小さなその手のひらをパーにして見せた。
(あちゃー…どうしよう。もろに黛って言ってるよ…!)
「あっ…ちょっと。いやまって。」
しかしそんなことはもう想定内。コウは一度深く深呼吸をすると、友人ら数名を少しカナオから離れた場所へと誘導し、聞き耳をたてさせた。
「実は実の弟というより本当はいとこなんだよ。だから名字も同じわけ。僕の家でしばらく預かることになったんだ。」
「へー、いとこかぁ~。」
「なんだよそんなことか。」
「それならわざわざこんな小声で言わなくてもいいのに。」
「...んまあいろいろあってね。」
(ふー...なんとかごまかせた...。)
「それじゃあケイドロでもやんね?」
「いいじゃんやろうやろう。」
「鬼誰にする?」
「じゃんけんでよくね?」
そんなようなことを皆でだべっていると、その間にカナオも割って入ってきた。
「ねえ、ねえ。」
「ん?なんだ?」
「その…ぼくもいっしょにあそびたいなあ。」
「お、いいじゃん。コウん家の子もやるってよ!」
「え...。」
「大丈夫大丈夫。少し手加減するからさ」
「いや...うん。そうだよね...。」
「それじゃあ...。」
「出さなきゃ負けよ、最初はぐー!」
「「じゃんけんポンっ」」
「げっ!俺が鬼かよ!」
「へへ。ユウイチが鬼で決まりだな!」
「ぼくもつかまんないようにしなくちゃっ。」
そう声を荒げたのはリーダー格の秋元ユウイチ。
ここでいうリーダー格というのはあくまでリーダーシップがあるというだけで明確にそう決まっているというわけでもなければ、某国民的漫画の如くガキ大将ポジを担わされているというわけでもない。たしかにおちゃらけたところはあるが、むしろ根は真面目な少年だ。彼はしぶしぶゆっくりと数字を唱え始めると、やがて読み上げるのを止め、大きな声で開始の合図を唱えた。
「...はじめ!」
「おら!俺に逃げられると思うなよ!」 ニヤッ
「ッチ!最初のターゲットはオレかよ!」
「俺の近くにいるほうが悪いんだ!」
「はい!ダイチタッチ!」
「くっそ~!」
「捕まえたぜ!マナト。」
「シラヌイ!捕まえた!」
「ああみんなどんどんとつかまっていっちゃってる。」
どうやらこのユウイチという少年。
おつむは決していいとは言えないが運動神経だけに関しては学年でもトップクラスであり、特に走るのが得意なようである。そのため最初は勝てると息まいていた少年らも、気が付けば次々とその身を拘束されていった。そこでコウは草むらにそっと身を潜め、カナオに小さな声でこう提言した。
「よし、カナオくん。お願いがあるけどいいかな?」 コソッ
「なあに?」 コソッ
「僕がおとりになるからその間にみんなを出してやってくれない?」 コソッ
「うん!わかったよ。」 コソッ
「よし、それじゃあ行ってくるね。」 コソッ
ザザッ!
「ユウちゃん、こっちこっち!」
「お?へへ、やるきだな?行くぜマユっち!」
こうやってコウがユウイチをおびき出している間にも、カナオはその小さな両足をパタパタと足踏みさせ、目的地である収容所へと走って向かう。
「おお!コウんとこの!すまねぇ助けてくれ!」
「うん!」
「タッチ!」
「へへ。つ~かまえた~!」
「うー、やっぱ無理だったか~。」
「へへ。まあでも、やっぱマユっちは強いな。他のやつとは大違いだw」
「それはどうも。」
スタスタタ…
「ん?誰かの足音がしたような…。」
「って!やべぇ!全員脱獄してるじゃねぇか!そっか、今日はあの子がいたんだっけ…!」
「くっそ~!全員捕まえてやる!本気で行かせてもらうぜ!!」
スタタタタッ!!
「あ~ん!こないでぇーっ!」
「へへ、逃げちゃだめだぜ坊やくんよぉ!」
「あっ!」
コケッ!
するとその時であった。つい走るのに夢中で足元にあった小石の存在に気づかず、思わずつまずいてしまったのだ。
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じゃ~
「いたっ...。」
「安心して。もう少しの辛抱だよ。」
その足にできた擦り傷に優しく水道の水をかけてやり、慎重にティッシュで傷のあたりを拭いてやる。今はそもそも転んで擦り傷を作るなんて機会もあまりないのであれであるが、たしか筆者も小さな頃はそのようなことを誰かにしてもらった経験がある。それは時によって両親かもしれないし、はたまた学校の教師であったかもしれないが。するとカナオは、瞳にためていた涙を外へと漏らしながらこういった。
「ひぐっ...ごめんねお兄ちゃんたち。ぼくのせいで...。」
「大丈夫大丈夫!まあ気にするな。ゲームはあとでもできるしな!」
「ありがとうみんな。それにしてもカナオくん。足は大丈夫?まだ足は痛い?」
「ううん…たしかにいたいけどもうだいじょうぶだよ。」
「それじゃ、家に帰ったら絆創膏はってあげるからもう少し我慢しててね。」
「うん!でも...。」
「このままじゃぼく、ゲームできないや...。」
哀しそうな顔をするカナオの様子をみかねてか、かの少年ユウイチは、ゲームをケイドロからかくれんぼにするよう提言してくれた。結果意見は満場一致で賛成。こうして6人は、日が暮れるまで皆遊びふけったという。
コウの視点
「それじゃあじゃあな!」
「うん!」
「じゃあね~、ユウイチお兄ちゃん!」
正直ママが僕の弟だって言った時なんかはどうなることかと思ったけど、無事何事もなく遊べてよかった~。皆もママにすごい優しいし。ママは少しわがままというか子供っぽくなったけど基本的にはいい子(?)だし。そういえば思い返してみればだけどこうやってママと公園で遊ぶなんて、幼稚園の年長さんのとき…それも秋の季節以来かも。成長すると友達と遊びに行く機会が多くなるから、なかなか一緒に遊びになんてなくなっちゃうもんね。
「…あっ!」
「?」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「祠へ行くの…いや!なんでもないよ!さ、家に帰って絆創膏でも貼ろうか!」
「うん!」
カナオは満面の笑みでコウにうなづいた。
ユウイチの視点
「それじゃあじゃあな!」
「うん!」
「じゃあね~、ユウイチお兄ちゃん!」
互いに笑顔で別れをつげ、俺たちはそれぞれ各々の帰路へと足を向かわせた。
それにしてもマユっちのいとこ。たしかカナオ?…っていってたっけ。やっぱ小さい子っていいよな~。しぐさって一つ一つがかわいいというか。俺も弟とか妹ほしいけど…なあ。最近母さんも父さんも仲が悪いし。なかなか無理そうだよな。コウノトリが運んでくれるってんならまた別だろうけど。はあ…いいよなぁ。
そんなときであった。
例の祠が彼の眼にちらっと入る。
「あ。これ、願いが叶うって噂のあれじゃん。」
「...まあダメ元で祈ってみるか。もしかしたら叶うかもしれないし。」
パン パン
「俺にも弟ができますように。」
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