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第二章 がまんできないっ

(10)がまんできないっ その2-1

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「真野様は普段はグッズなどお使いは?」

 若野はフローリングに膝をついてソファーに座っている愛子の斜め向かいに位置取り、慣れたしゃべり方で、にこやかに営業トークをはじめる。

「いえ、今まで一度も。あっても、ほとんど使いませんし……」

 愛子の男性経験からいっても、道具を使うことはほぼなかった。肌で触れ合う快感よりも、もっと内面からくる快感を、それまでの愛子は求めていた。

「こんなに素晴らしい身体をお持ちなのに、もったいない気が僕はしますねー」

 若野は、横に置いた鞄から、サーモンピンク色の若干大き目で駆動部に子機のついているタイプのバイブを取り出した。デザインはシンプルだが、色や形が男性器そのものに近く、指で押すと弾力があり、肌のような柔らかな素材のようで、女性への気配りを感じられる。

「数あるバイブでもこれが一番売れてるんですよ。素材が他社の商品とは違うものでして、動きはシンプルですが、定番で一本は持っておきたいですね」

 スイッチを入れると亀頭部がくるくると回転しだし、子機の部分が、ぶぅーん、と、うなりをあげて振動をはじめた。愛子の目は、そのなまめかしい動きにくぎ付けになった。

「旦那さんもこういうの使って、喜ばせてあげれば良いのに」

 若干夫の悪口を言われたような気がして、カチンときた愛子は思わず反論していた。

「夫も淡白ってわけではないんですよ。優しくしてくれますし」

「うーん、もったいないなぁ。僕だったら、こういうの使っていじめ倒しちゃうけど」

 愛子は反論をしながらも、若野が手に持つサーモンピンク色のバイブから目を離せなかった。

『いやらしい動き……。あれでかき回されたら……』

 亀頭部が回転するのをじっとみつめながら、愛子は無自覚に言葉を洩らした。

「あの……、試してもらって構いませんよ」

 若野は一瞬驚いた顔をしたが、それからニヤッと笑って囁くように言う。

「今の奥さん、いやらしい目してます。好きですよ。僕」

 愛子にはその声があまり聞こえてなかったのか、バイブの動きをじっと見つめながら、ゆっくりと若野の方へ両脚を向ける。短いタイトスカートから白い太腿のラインが見事な脚がソファーに投げ出され、スカートの奥のピンク色の下着が、若野の位置から見え隠れする。

「じゃぁ、奥さん、行っちゃいますよ」

 愛子はソファーに横向きにもたれかかりながら腰を浮かせ、スカートを少しだけめくり上げる。

「まだ、少し恥ずかしいからこれで」

 若野はうなずいて、バイブを愛子の太腿にあてる。振動している子機の方を下に向けてを太腿をストッキング越しに刺激しながら、うねうねと回転している亀頭の先を、ゆっくりスカートの奥へと向かわせる。

「ああっ……」

 ストッキング越しにも伝わる振動に愛子の身体は反応し、吐息を洩らす。若野自身が放つフェロモンの効果もあり、愛子の身体はどこを触られても性感帯状態になっていた。
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