【完結】魔力提供者の僕は王子に焦がれる

夕月ねむ

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3-2*

 ナサニエル殿下は上着を脱いで僕の顔を隠すように被せた。いつになく不機嫌な声で「ケヴィン」と呼ぶ。
「それなりの罰はあると思え」
「はい」
 悪いけど、庇う余裕は今の僕にはない。

 ナサニエル殿下の腕が僕を抱き上げた。服が擦れるのも、ほのかに感じる体温も、今の僕には毒でしかなくて。上擦った声が漏れるのを抑えきれない。

「……媚薬か」
「はい、申し訳、ぁ、」
「いい。喋らないで」
 僕はナサニエル殿下のシャツの胸元を掴んで、奥歯を噛み締めた。

 視界は遮られたままで、ナサニエル殿下の匂いに包まれて運ばれた。殿下の腕は力強くて、落とされる心配はしなかった。僕が小柄なのは確かだけど、年下の天使はいつの間にかずいぶんと逞しくなってしまった。

 どこに行くつもりだろう。医務室か? 大事にならないといいけど。あの女の子たちは命令されて逆らえなかっただけだろうし。僕としても、媚薬を盛られて号泣していたなんて、噂になったら居た堪れない。

 周囲は見えなかったけど、雰囲気が変わったのを感じた。ナサニエル殿下は危なげなく階段を上っていく。
「君は軽いな。もう少し食べた方がいい」
 少食なのは否定しない。筋肉がつきにくいのも。体質なのだから仕方がない。

 魔力錠が解除される気配がした。
 ということは、ここは寮の部屋か?
 ベッドの上に下ろされて、やっと視界が晴れた。ナサニエル殿下の部屋だ。

「なんで……医務室、じゃ」
「医務室に行く必要はないよ。今の君の姿を他人に晒すなんてできるわけがないしね」
「……でも」
 ナサニエル殿下が笑った。ヘーゼルの目に明らかな色欲が見えて、僕は震えた。

「俺に任せて。薬はちゃんと抜いてあげる」
 頬を撫でられただけで、ぞくっと快感が走った。額に口付けられ、服を脱がされていく。
「ぁ……でんか、僕、足が」

「足?」
「ひざ、下……麻痺して」
 ナサニエル殿下が「チッ」と舌打ちした。行儀悪いなあ。王子様でしょう。

「ごめん。俺に解呪は無理だ」
 わかっている。解呪は聖属性の魔法だ。僕が自分でできない以上、しばらくこのままでいるしかない。

 シャツが脱がされた。裸の上半身を見られているのが恥ずかしくて仕方がない。貧弱な身体は肌の滑らかさくらいしか褒められるところがない。

 背中を撫で上げられて、小さく喘ぐ。ナサニエル殿下は僕をそっと押し倒した。
 頬に、目元に、鼻先に口付けられて唇が重なった。魔力譲渡じゃない、ただのキスだ。

 脇腹を撫でられ、服のウエストが緩められる。ナサニエル殿下は一度身体を起こし、僕の下肢から衣服を取り去った。
「見ないで……」
 隠そうとしたけど、腕を掴まれた。ヘーゼルの目がぎらぎらと僕を見下ろしている。

「レジィ」
 熱っぽく名前を呼ばれた。ナサニエル殿下が口付けてくる。抱きつく代わりに腕を掴んだ。殿下の手が僕の中心に触れる。

「ん、あ……だめ、でんか、汚れます、んぅ」
「ああ。少しだけ待って」
 僕の手を優しく外して、ナサニエル殿下は服を脱いだ。きれいに筋肉がついた引き締まった身体が羨ましい。さすがに下は穿いたままだ。

 裸の胸に抱き込まれた。しっとりと汗の気配がする。直に感じる体温が生々しい。肌が触れ合うことがこんなに気持ちいいなんて。

「ん、はぁ……殿下ぁ……」
 自分のものとは思いたくないような甘ったるい声。耳を塞ぎたくなるけど、その耳にはナサニエル殿下がキスをして、舌を這わせている。いやらしい水音に興奮を煽られる。
「あ、あぁ、やっ……ん、んぅ」
「レジィ。声、我慢しないで」

 ナサニエル殿下の手が僕の中心を撫でた。それだけで僕の身体はビクビク跳ねた。
「あっ、あぁッ」
 片手で殿下の腕を、もう片方ではきつくシーツを掴んで、僕は身を捩る。情けなさに涙が浮かんでくる。

「辛そうだね。ほら、出してしまえばいい」
「ひ、ああッ、んぁ……ッ」
 呆気なく吐精して、一瞬脱力した。呼吸が整わない。
「ちゃんとイケたね」
 ナサニエル殿下は僕のこめかみにキスを落とした。

「まだ足りないでしょ」
 萎える様子のないそこをゆるゆると扱かれる。濡れた音が響く。ものすごく恥ずかしいのに、たまらなく気持ちいい。

「殿下、殿下……あぁ」
「レジィ」
 ナサニエル殿下が何かを堪えるような、切なそうな顔をする。僕は殿下の眉間に触れて、深く刻まれたしわを伸ばそうとした。その手を掴まれ、指先にキスをされる。

「レジィ。名前呼んで。俺の名前」
「……ん、あぁ、ナサニエルさま……」
「ネイト。そう呼んでくれる?」
 ナサニエル殿下に耳殻を甘噛みされ、中心を扱かれて、僕はあられもなく喘いだ。
「あぁ、ネイトさま、ひぁ、あッあぁん」

 二度目を出しても、僕はまだ満足できず、浅ましい自分が嫌でまた少し泣いた。
「レジィ、苦しい?」
 そう聞きながら、ナサニエル殿下は僕を撫で回すのをやめようとしない。

「も、ぃや……こんな、ぁ、あぁ……殿下の、手を汚して……ん、ぁ……」
「薬のせいだよ、レジィ。君はなんにも悪くないからね。むしろ悪いのは俺の方」
「ぁ……そん、な、こと」

 ナサニエル殿下が自嘲気味に笑った。
「君の言う通り、本当なら医務室に連れていくべきだった。なのに、こうやって俺は自分の欲をぶつけてる」

 ナサニエル殿下が僕の首筋を舐め上げる。
「ひ、ぁあ、ん、ネイト様……ッ」
「レジィ」
 切なげに息を吐いたナサニエル殿下が、僕の太ももに股間を擦りつける。硬い感触に一層、心臓が跳ねた。

 このまま食べられてしまうのだろうか。そうだとしたら、それでもいい。まだ足りない、熱くて苦しくて切ない。

 僕はナサニエル殿下のそこに手を伸ばした。
「レジィ、それはだめ」
「でも……あなたも苦しそう……」
 トラウザーズの上からなぞる。ナサニエル殿下が視線を泳がせた。

 ため息をついて、殿下は自身の前をくつろげると、二人分の雄を合わせて擦り上げた。
「あぁッ、ネイト、様ぁ、あ、あッ」
「はぁ、レジィ、レジィ」

 ナサニエル殿下の肩に腕をまわす。見事な金髪を抱き寄せるようにして喘いだ。僕の耳たぶを殿下が舐めて噛んで弄ぶ。

 頭の中が真っ白になって。
「んん……ねいと、さま。すきです、すき……」
 次の瞬間、僕は自分が何を口走ったかを理解して、血の気が引くのを感じた。







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