男と女の悲しい性(さが)

しらかわからし

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第2章

第1話 その1:秘密の火曜日

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朋子は和也にLINEをした。

下野朋子
(和くん、昨日は、
 ありがとう。
 とっても気持ち良かった
 また抱いてね 
 今度の火曜日は一日中
 空いているから
ハートスタンプ)

高木和也
(トモ、ありがとう
 俺も気持ち良かったよ、
 それに念願のトモを
 抱けて嬉しかった
 今度の火曜日の
 AM11時に
赤井書店の駐車場で
 どうかな?」
 ハートスタンプ)

朋子
 (OKスタンプ、
 ハートスタンプ)

朋子は、和也との関係が始まってからというもの、日々の暮らしに張りが生まれ、表情もどこか柔らかくなっていた。

以前はどこか影を落としていた彼女の雰囲気が、最近では明るく、軽やかに感じられるようになっていた。

久しぶりに会った姉たちも、その変化にすぐ気づいた。「最近、なんだか雰囲気が変わったね。前よりずっと明るい」と言われることが増えた。

以前は、夫への不満や、息子がいかに女性にモテるかといった話題ばかりだったが、そうした愚痴や自慢話も自然と口にしなくなっていた。

月に一度、夫婦で美容室に訪れる浩一と美晴も、朋子の変化に気づいていた。「トモ、最近すごく明るいけど、何かいいことでもあったの?」と浩一が笑いながら尋ねた。

朋子は、心の中で少し戸惑いながらも、微笑んで「息子から久しぶりに電話があってね」と、咄嗟に嘘をついた。

和也との関係を、この二人にだけは絶対に知られたくなかった。彼らは、朋子と一郎を引き合わせた仲でもあり、朋子夫婦の不仲をずっと気にかけてくれていたからだ。

「そういえば、最近旦那さんの悪口も聞かなくなったけど……もしかして、ラブラブになったの?」と浩一が冗談めかして言うと、朋子は少し照れながら「そうね、息子も家を出て、ようやく二人の時間が持てるようになったの」と、またひとつ嘘を重ねた。

その言葉に、浩一と美晴は安心したように頷いた。朋子の笑顔が本物に見えたからこそ、彼らは心から喜んでいた。

火曜日の午後、朋子は和也との約束の場所へと向かった。待ち合わせは、県北の静かな町にある赤井書店の駐車場だった。

繁華街から離れたその場所は、人通りも少なく、互いの知人に会う心配もなかった。和也が選んだのは、そんな理由からだった。

先に到着していた和也から電話が入り、「森林公園の駐車場に移動して、そこから俺の車でホテルに行こう」と言われた。朋子は指示通り車を走らせ、公園の駐車場で和也の車に乗り換えた。

車内で顔を合わせた瞬間、朋子は和也の首に腕を回し、静かに唇を重ねた。和也も彼女を優しく抱き寄せ、二人のキスは自然と深くなっていった。

言葉よりも確かなものが、そこには流れていた。

つづく


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