境界線上の女 ― その一線を越えるとき

しらかわからし

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第6話:交錯する視線、揺れる嫉妬

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スタジオの一角に、美穂の声が響いた。
「お越しいただきました!皆さん、直接お礼を言ってくださいね!」

奥から現れたのは、少しオタク系の雰囲気を持つ若者たちだった。彼らは機材を手にしていた。ビデオカメラ、照明、音声機器――撮影に必要な道具が次々と運び込まれていく。

美穂が代表して頭を下げた。
「本日はご協力ありがとうございます。美しく撮らせていただきますので!」

(美しく?人の妻だぞ……)
和也は心の中で苦々しく呟いた。

美穂は続けた。
「こちらの皆さんは、制作を一緒に担当する同期です。話したらぜひ参加したいと言ってくれて。カメラや照明、音声のコースの学生たちなので、同席させていただくことになりました」

学生たちは響子の姿をちらりと見て、ニヤつきながら小声で何かを話していた。

(美穂ちゃん、そんな話は聞いてないぞ……)
和也の胸に、焦りと苛立ちが広がった。
(くそ……こんな若造たちにまで響子の身体を見られるなんて……)
胃の奥が重く、鈍い痛みが走った。

一人の男子学生が響子に挨拶した。響子は柔らかく微笑みながら応じた。
「こちらこそ。女優は初めてなので分からないことばかりですが、制作がうまくいくように協力させていただきます。いろいろ教えてくださいね」
(協力? 教えてもらう? 裸を晒して若者に見せるのに……響子、何だよその言い方は……)
和也は胸の奥で叫んでいた。

学生は緊張した様子で、言葉を選びながら話した。
「い、いえ……こちらこそ……玲奈さんも美しいですが、ママさんはそれ以上に感じて……想像以上で、ちょっと緊張してしまって……」
(想像以上?想像って……響子の身体を妄想してたのか?まさか昨夜、響子を思い浮かべて……)
和也は顔をしかめ、言葉にならない思いを飲み込んだ。

響子は少し不安げな表情で訊ねた。
「私も正直、不安と緊張でいっぱいなんですけど……どのくらいで終わりますか?」
学生は丁寧に答えた。
「それは撮影の進み具合にもよります。最初は監督の脚本に合うイメージを探す時間が必要で、その後、各シーンごとに演技をしていただくので、だいぶ時間がかかるかもしれません。ご理解いただけると助かります」
響子は静かに頷いた。

「なるほど……女優の演技って、そういうものなのね。分かりました」

(彼らのイメージに合わせて、長時間の演技……響子は若者たちの前で裸のまま……彼らの指示に従って演じて……その要求がエスカレートしていったら……)
和也は苦虫を噛み潰したような顔で、黙ってその場に立ち尽くしていた。

響子と男子学生の何気ない会話だけで、胸が締め付けられるような嫉妬が和也を覆っていた。

つづく

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