境界線上の女 ― その一線を越えるとき

しらかわからし

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第15話:揺れる身体、試される意志

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スタジオの空気は、張り詰めたまま沈黙していた。 
 
響子に注がれる視線は、ただの観察ではなかった。そこには、演技を超えた何かが混じっていた。彼女はその視線の熱に、肌がじわりと汗ばむのを感じていた。

(どうして……こんなに見られているのに、身体が反応してしまうの……)  
羞恥と混乱が交錯し、響子は自分の感覚に戸惑っていた。

スタジオの一角には、撮影用のベッドが置かれていた。次の演技は、その上で行われることになった。響子は指示に従い、ベッドに仰向けになって両手を頭の上で組む姿勢を取った。

だが、続く指示はさらに過酷だった。

「次は、四つん這いになってください」

先輩監督の言葉に、スタジオの空気が一段と重くなった。和也は思わず玲奈の方を見た。彼女は唇を噛みしめ、目を伏せたまま動かない。誰もが、これ以上の口出しをためらっていた。

響子は、頬を真っ赤に染めながらも、涙を浮かべてベッドの上に四つん這いの姿勢を取った。最初は両脚を閉じていたが、監督の声が響く。

「両膝をもっと開いて、顎を上げてください!」

その指示に従うと、自然と背中が反り、身体のラインが強調された。響子は羞恥に震えながらも、演技を続けるしかなかった。

和也はその姿を見つめながら、胸の奥に重たいものを抱えていた。  
(どうしてここまで……)  
彼の中で、怒りと無力感が交錯していた。

演技が一区切りつくと、監督が声をかけた。

「10分間の休憩を取ります。そのままの姿勢でいてください。次はペアでの演技に入ります」

響子は、ベッドの上で静かに息を整えていた。喉が渇いていたところに、美穂が氷入りのジュースを差し出した。

「どうぞ、冷たいですよ」

響子は礼を言い、一気に飲み干した。だが、そのジュースには、彼女の心と身体に微妙な変化をもたらす媚薬が含まれていた。最初は気づかぬまま、響子の感覚は徐々に鈍くなり、やがて心と身体の境界が曖昧になっていった。

先輩監督は、次の演技のために台本を手渡した。響子には寮母役、相手役には男子学生の吉川龍太が選ばれていた。彼は体格も大きく、存在感のある学生だった。

「次は、寮母と男子寮生のシーンです。セリフに合わせて動いてください」

響子は台本を手に取り、ページをめくった。そこには、これまでとは異なる、より密接な演技が描かれていた。

彼女の手がわずかに震えていた。

(登場人物)

寮母役 響子さん

男子寮生役 吉川龍太 男子学生(実際にも男の威厳が監督たちの次に大きくて太い学生を選んでいた。)


つづく

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