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第2話 最悪の目覚め
しおりを挟むーー王国 某所
(ここは何処かしら...)
窓からは暖かい日差しが降り注ぐ。木々が風になびき微かに揺れる音、小鳥のさえずり、柔らかくいい匂いのベッド...。
アイリーンは天国と錯覚するような穏やかな空気に包まれながら目覚めた。
(幸せ...。何もかもが平和だわ。でも何か大切なことを忘れている気がする。大切な何かを...)
「おはよう!やっと目が覚めたか」
聞き覚えのある声でアイリーンの記憶は一気に蘇る。
「そうだ!私、勇者の封印を解きに崖の上で!」
アイリーンはそう言うとベッドから飛び起きた。見慣れない部屋のドアの前に奴の姿があった。
「きゃああああああああああ!」
「どうした、どこか痛むのか?」
「違うわよ変態!なんで全裸なのよ!」
「仕方ないだろ。封印から解かれて都合よく服なんか着ているわけないだろ」
「何でもいいから隠すものをくらいあるでしょ!」
「仕方ない、君の持っていたハンカチで代用す...」
その瞬間、光の速度で繰り出されたアイリーンの平手打ちが、会心の一撃を放った。
ーー5分後ーー
「君のおかげで余計な体力を消費したよ。随分昔にくらった魔王の拳より重かった」
自称勇者は腫れ上がる頰をさすりながら、アイリーンを睨む。
「あんたが大人しく最初からその服を着ていれば避けられたダメージよ」
「魔法で服を作るのも楽じゃないんだぞ。封印から覚めた大勇者をもっと丁重に扱ってほしいものだ」
「長い封印のせいで理性もだいぶ失われてしまったようね。私の想像する勇者とはまったくかけ離れてるわ」
アイリーンは相変わらず軽蔑した目で自称勇者を見つめている。
「そんな惚れた目で見つめるなよ。俺の趣味はもっと大人の女性なんだ。あと何度も言うけど俺は『大勇者』だ。そこを間違ってもらっては困る」
(こいつもう一回封印してやろうかしら)
「この国が大変なことになってなかったら誰もあんたなんか呼び出さないわよ!今はこんな事をしている場合じゃないの」
「ふーん、と言うと?」
「この国の隣にあるウルカ帝国は知ってる?その帝国が今もの凄い勢いで近隣の国を攻め滅ぼしながら領土を拡大しているの。この王国も、もう半分以上が植民地にされてしまっていて、植民地にされたとこに住む国民は奴隷にされ苦しんでるわ」
アイリーンは王国の悲惨な現状を自称大勇者に告げる。すると自称大勇者が突然狼狽えだした。
「え?」
「え?」
アイリーンは自称大勇者の返答におうむ返しする。明らかにこの男は動揺している。
「つまり今回の滅亡の危機は、そのウルカ帝国のせいで魔王は関係ないのか?」
「えぇ、魔王は随分昔に貴方が倒したのでしょう。あれ以来はその脅威も去ったわ」
「マジかー...」
「何かまずい事でもあるの?」
「いやー...、なんというか。俺はてっきりまた魔王が悪さしてるのかと思って、お前が眠ってる間にちゃちゃっと解決してやろうという善意でだなー...あれだよアレ」
男は歯切れが悪い返答をする。
「はっきり言ってよ。私が眠ってる間に何をしたの?」
「まあ簡単に言うと魔王をしばいてきてしまった。多分今頃めっちゃ怒ってる、王国に攻めてくるかも。わりいな!でも良かれと思ってやったんだ許してやってくれ」
男は平謝りしながらヘラヘラと笑った。
重い沈黙の後、男の頰には怒りの鉄拳がめり込んでいた。
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