外面だけは！

四章

奏、陽太サイド

　よし、二人は逃がせた。
姫嘘付けないし、陽太もどちらかというと、嘘が苦手であるが、姫よりはごまかせるという自負があった。
その為二人には逃げてもらった。
それ以外に、二人を逃したのには理由がある。
本来逃げるべきであるのは、優美だけである。
なら、何故逃したかと言うとすれば、優美は物凄い方向音痴＋危機管理能力が皆無だからである。
その為案内役に姫を付けたのだ。
そのことを無意識に姫は察してくれたであろう。
じゃないと、姫は今頃文句を垂れているところである。
しかも、本屋を目指してる時にこうなってしまったのだ。
あの本の虫、良い言い方をすれば、番人の姫が文句を言わないわけなかろう。
だから、彼女が察してると踏んだ。
自分の妹ながら、彼女はとっても頭が良いのだ。
　でも、非常に残念なのが彼女は、すこぶる鈍感であることである。
まあ、彼女のことはひとまず置いておこう。

　おい、何逃してんだ静の息子たちめ

　あまりにも失礼じゃないですか？
　僕たち名前あるんですけど、いっしょっくたにまとめないでくれます？

　へいへい、悪かった。
　んで、アイツと一緒に生活してんの？
　それとも、ただ遊びに行くだけ？

　貴方には言いません。
　
　は？誰に口聞いてんだこのガキが
そう言いながら、亮平さんは奏にいちゃにまず、殴りかかった。
でも、奏にいちゃは華麗に拳を交わしていく。
しかも…あろうことか挑発する。

知りません？先に手出した方が、つまり殴った方が負けなんですよ。
パパと同い年なのに、随分お子様なんですね～
奏にいちゃは、パパ譲りの可愛らしい顔をしながら、ドSだった。　
そして、亮平さんを口から出る毒舌で撃退。
亮平さんは、あたかも負け犬の遠吠えのように逃げていった。
でも僕はそれで終わらないことを悟っていた。
何故なら、パパはあの人はしつこいから気をつけなさいと言ったのだ。
パパの言うことは、今まで外れたことなどない。
そのパパが言っているということは、実際しつこいのだろう。
そうして、僕たちは帰り道を付けられてるとも露知らず、自宅へと帰っていった。


　俺は、何としても優美を取り返さねばならない。
何故なら一般人と関わって、しかも放置したとバレると、厳罰になるからだ。
結局は自分の身が可愛いのである。
それと、家政婦として雇うにはうってつけであろう。
ただ、アイツは地味だ。
化粧っ気の一つもありゃしない。
せめて、もう少し化粧か何かしたらいいと思う。
当然のように服装も地味だ。
とにかく、アイツを回収しないといけない。
俺は、とにかく静の息子たちの後を付けた。
ストーカーに成り下がっているが、仕方がない。
俺のカッコよさでどうにか、なるだろう。
静の家に到着し、俺は裏から様子を伺う。
すると、静の娘の姫っていう、上品なガキと、目当ての優美がお茶を呑気に飲んでいた。
これ幸いとばかりに、俺は優美に近づく、すると丁度運悪く家主である、静が帰って来たのだった。
つくづく運が悪い。