エルメニア物語 - 灰色の少女は南の島で恋をする -

小豆こまめ

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第4章

06 ミリオネア(6)

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「ラナ、エマを見なかった?」
「いいえ」
「そう、どこに行ったのかしら?」

 ロートアに着いた時からお仕着せでは無くドレスを身に付ける様になったので、ファリス先生から借りた魔道具を身に付ける事が出来なくなっている。

 もう自分の魔道具を持っても不思議では無いので、先生にお返ししたいけど、ダナーが側にいるので渡す事が難しい。

 何だかダナーに知られたく無いようだったので、二人だけの時に渡したいが、まさか船室に来て貰う訳にもいかない。

 アンから何かあれはエマに相談する様にと言われているので、彼女に話を聞きたいが、軽い昼食を終えた頃から彼女の姿が見えない。

 出港する前後では、カリーナの荷物を片付けたり、日焼けしないよう気を付ける様にと日除けを渡したりと忙しそうだったので、今頃、疲れて休んでいるのかもしれないわね。

「ラナは大丈夫?」
「何が?」
「船が動き出した頃、気分が悪いみたいだったから」
「もう慣れたみたい」
「そう、良かった」

「ねぇ、エマさんに何か用事なの?」
「ちょっと相談したかったのだけど、、、後で大丈夫よ」
「そう」

「ごめんなさい、ラナ。少し一人にしてくれる?」
「分かったわ」

 少し横になりたい。

 リュートを演奏する"精霊使い"の人がくれた赤い実は、甘くて食べるとちょっとふわふわするし、なんだか眠たくなってくる。

 船室のベッドに横になりながら考える。

 ダナーが側に居てくれるので寂しい訳では無いが、アレス様はロートアに着いた頃から何となくカリーナを避けている様に思えるし、ロアンお義兄様は何かと五月蝿くて仕方がない。

『これなら使用人としてみんなと一緒にいた時の方が楽しかったわ』

 カリーナがミリオネアに来たいと思ったのは、母のような恋がしたかったからだ。

 自分のおじ様に対する気持ちが、単なる憧れだと言う事くらい気が付いている。
 幼い頃父を亡くした為、その面影をおじ様に求めているだけだと言う事も。

 だからどこか違う知らない場所に来てみたかった。
 誰も知らない所に行けば、冴えない自分にも何か起こるかも知れないと勝手に期待していたのかもしれない。

 確かにサウストリアに来て、ダナーと再会し、彼が好きだと言ってくれたし、仲間達が言う様にファリス先生も素敵な人だと思う。
 でもダナーがレオーナ様と話していても、ファリス先生が側にいなくても嫌な気持ちになる事はない。

 それなのに自分を妹とにしか見ていない人の事ばかり気になっている。

 彼にはずっと前にその気は無いと断られているし、その時だって仕方がないと分かっていたはすだ。
 今でも友人の妹として相手にして貰っているだけなのに、悲しい気持ちになる方が間違っている。

『せめて、もう少し綺麗になれたら良かったのに』

 彼の心を捕らえた人達は、今も昔もとても魅力的な人達で、自分では足元にも及ばない。

『他人を羨んで落ち込むなんて間違っているわ』

 最初から分かっていたはずだ。
 自分の気持ちが報われなくても、それでもいいと考えて旅に出た。

 それに旅に出たおかげで友人は出来た。

 おまけにこの辛い気持ちが恋であるなら、私が見つけたいと思っていた物を見つけた事に変わりはない。
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