エルメニア物語 - 灰色の少女は南の島で恋をする -

小豆こまめ

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第4章

14 ミリオネア(14)

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 彼はいつもカリーナを妹だと言っていたのに、どうして特別だと思ったんだろう。
 彼が惹かれた人は、いつも美しい金髪の綺麗な人で、カリーナとは全く違っている。

『せめてもう少し早く生まれていれば良かったのに、、、』

 一回り以上年下のさえない女の子では、恋愛の相手としても見て貰えない。

 それでもあんな風に抱きしめられキスされたら、特別な気持ちがあるのではと期待くらいしてしまう。

 それなのに、、、

「出て行ってくれ」

 あんなに冷たい声で言われるなんて、いつだってカリーナには優しい人だったのに、そんな人を怒らせてしまった。

 ダナーが軽い挨拶だとキスをした時とは全然違っていて、もっとして欲しいとさえ思っていた事を知られて軽蔑されたに違いないわ。

 それに妹に恋愛感情を持たれるなんて、気持ち悪いと思われたかもしれない。

『どこかに隠れる場所は無いかしら?』

 落ち着けばまた妹に戻れるはずだ。
 でも今は無理だわ。

『どうして?』って聞きたくなる。
『どうしてカリーナではダメなの?』と言ってしまいたくなる。

 丘の上で泣いていると、優しい人とよく似た人に話しかけられる。

「僕の所に来るかい?」
「ヒューイ様?」

 アレス様の船に乗っている“精霊使い”の人。
 カリーナを助けてくれた時に、彼が“精霊使い”ではなく“精霊”だと教えて貰っている。

「ヒューイ様のところ?」
「“カリーナが困っていたら助けてあげて欲しい” 妹にそう頼まれていてね」

「妹?」
「キミが"お姉様“と呼んでいる人だよ」
「でも、、、」

 今はリディア様にも会いたいのか会いたくないのか、それさえもはっきり分からない。

「リディアはいないから心配しなくていいよ、今、彼女の夫が色々煩くてね」
「本当に?」
「"精霊の国"、見たく無い?」

「見てみたいわ」
「よーし、決まりだ」

 ヒューイ様の差し出された手を取る。

 少しの間ここから離れていられるならどこでもいい。
 それに精霊の国は、始めから行ってみたい国だったのだから、、、


『、、、どんな様子なの?』
『眠っているよ』

『眠って?』
『疲れてしまったみたいだ、、、昔のキミみたいにね』

『まぁ、“精霊の雫”を飲ませ無かったの?』
『大丈夫だよ、別に体に何か害を及ぼす訳ではないからね』
『それはそうだけど、、、』
『それにこんな時はぐっすり眠った方がいいだろう?』

『どうするつもりなの?』
『ちゃんと説明しておくよ、彼らにはね』

『分かったわ、何かあれば知らせてちょうだいね』
『うん』

 何の話をしているのだろう?
 ちゃんと聞きたいのに声がどんどん遠くなって行く。
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