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春休みのアレコレ
第21話 其れは初耳でした
夜の7時も回れば寮の食堂は大混雑だ。
春休み中であるせいか、部活も昼間に活動するので、比較的早い時間から食べに来るものは多い。
が、だらだら過ごしているせいで食事の時間が遅くなりがちなのは仕方がないのかもしれない。
授業がある時と違う顔ぶれが食事に集まるのも春休みらしい。
救いはまだ新入生が入寮していないことだろう。
今まで生徒会役員がよく座っていた場所は、何となく空席になっている。
未だに会長が食堂を利用していないため、食堂で生徒会役員が集まって食事をすると言う光景はなくなってしまった。
「柳田、柳田はいるか」
風紀の榊原が食堂にやってきた。
探している柳田は、一年の問題児。
それなりに広い食堂の中を、榊原はぐるりと見渡した。
端の方の席で、面倒くさそうに手を挙げている柳田がいた。
「なんの用だよ」
春休み中なのに、風紀になにか言われるような筋合いはない。食事の邪魔をされて柳田は迷惑そうだ。
「柳田、昨夜消灯後に寮を出てバイクに乗っていなかったか?」
非常にわかりやすい問いかけである。
消灯時間を過ぎてそんなことするのはお前ぐらいだ。と言う風紀の推測。確かに、バイクに乗る生徒は限られている。消灯時間後に部屋にいなかったのは確かなので疑われるのは仕方がな事だ。
「へーへー、確かに俺は昨夜消灯後部屋にいなかった」
柳田は面倒くさそうに答えた。
「どこに行っていた?」
榊原はそれを肯定と受け止めて、次の質問をしてきた。
「俺がいた場所ね……ちょっと待ってろよ」
そう言って柳田はスマホを取り出し誰かに電話をかける。数回のコールの後柳田は相手を食堂に来るよう話をつけていた。
「なんなんだ?」
「昨夜、俺がいた場所とバイクの話な」
柳田はそういうと、食事の続きを始めてしまった。榊原は柳田の、言っていることを考える。
だが、その答えは出てこない。
榊原のリストの中に、柳田の仲間の該当者がいないのだ。そもそも柳田はいつも一人だ。この学園で、柳田のようなヤンチャをする生徒はほとんどいない。もしかすると、榊原の知らない誰かが柳田にパシリなんぞをさせられているのだろうか?
そんなことを考えていると、食事をしていた柳田が顔を上げた。
「お、来たきた」
柳田がそう言うので、榊原は柳田が見ている方へと顔を向けた。
ここ最近急激にその姿を見るようになった人物が、エレベーターホールから食堂へとやってくるのが見えた。
食堂では見かけない珍しい人の登場に、気がついた生徒はみなそちらへと視線を送る。
自分が注目を浴びていることに気づかないのか、それとも慣れたのか、その人物は随分と堂々とした足取りでこちらに真っ直ぐやってきた。
榊原は予想外の人物の登場に唖然とする。
「なんの用だよ、昭彦」
榊原の隣に立って、なんの躊躇いもなく柳田の下の名前を呼び捨てにした。
「昨夜消灯後にバイクを乗ってたやつはこいつだ」
ニンマリと笑って、柳田が佐藤を指さした。
「あぁ?」
事態が飲み込めていない佐藤は、その顔に似合わないガラの悪い声を出してきた。
そのせいもあってか、食堂内の生徒から視線が集中する。
佐藤は柳田を見て、それから隣に立つ榊原を見た。
「うっわ、そゆことかよ」
佐藤は話の流れを理解したらしい。
「昨夜、バイクに乗って寮を出て行ったのはこいつだよ」
嬉しそうに佐藤を指さして、柳田が言う。
佐藤は一瞬苦虫を噛み潰したようような顔をして、直ぐに柳田を睨みつけた。
「そもそも、お前がミントアイスが食べたいとか言うからだろう」
「バニラって気分じゃなかったんだよ」
「俺の部屋に上がり込んで、文句を言うな」
「負けたのお前なんだから、言うこと聞くのが筋だろう」
「裏切るのか」
「俺は外出はしていない」
しれっと柳田が言うと、佐藤は一瞬榊原を見て、直ぐに食堂の中を見渡した。そうして、誰かを見つけ出すと、その人物の方を向いた。
「消灯時間後に部屋にいなかったやつも同罪じゃないのか?」
「まぁ、反省文は」
榊原がそう言うと、佐藤はその人物に向かって叫んだ。
「明李、お前も反省文だからなっ。一人だけ逃げられると思うなよ」
突然叫ぶから、食堂内の視線はそちらへと向く。
たが、明李とは誰なのか?
佐藤の視線の先にいる生徒が頭を抱えているのが見えた。
「明李って……会計の相葉?」
「そーそー、あいつも俺と一緒に昨夜消灯時間後に佐藤の部屋に居たぜ」
「あいつも同罪にしろ、俺の部屋にいたんだから」
佐藤と柳田に名指しされた相葉に注目が集まる。
「って、お前ら三人……何繋がり…」
三人の関係性が分からず、榊原は戸惑った。
「何繋がり?腐れ縁だよ」
佐藤が間髪入れずに答えた。
「腐れ縁?」
「小等部からこの学園の寮にいる数少ないメンツだよ」
柳田が笑いなが言う。
小等部から寮に入っていたなんて、初耳だ。そもそも小等部に寮があったこと自体初めて聞いた。
「そんなに驚くなよ。表向き、小等部は通学に1時間半以内って、規定があるからな」
佐藤がそう言うと、柳田が無言で笑っている。
榊原が佐藤の顔を見つめていると、佐藤がニヤリと笑って付け足した。
「小等部からこんなとこにぶち込まれるやつなんて、わけアリに決まってんだろ」
佐藤の言ったことに榊原はなんと答えたらいいのか全く、わからなかった。
「ユーヤ、夕飯食ったん?」
「作ってた」
「じゃあ、食いに行こうかな」
「今食べてんじゃん」
「昨夜の流れから行くと肉じゃがだろ?」
「お前の分なんかない」
「今夜も泊めてくれよ、あのでかいベッド」
柳田が、ふた晩続けての規則違反をほのめかす。
「お前、よく寝られるな」
佐藤が心底嫌な顔をして言うと、柳田はケラケラと笑った。
「なんで、すげーじゃんあのベッド。5、60万はすんだろ?」
「するだろうけど、二階堂がヤリまくったベッドだぞ」
佐藤はものすごく嫌そうな顔で言う。
「シーツとか、洗ってんだろ?」
「染み付いてそうじゃん」
「考えすぎだろ」
柳田がまた笑った。
「俺の前で堂々と規則違反前提の話をするな」
ようやく榊原が2人の会話を遮断した。
「ああ、反省文?」
佐藤がまったく反省をしていない顔で聞いてきた。
「そうだ」
「あいつらにも書かせろよ」
佐藤は一応抗議した。
「分かったよ。後で書かせる」
榊原は面倒くさそうにする佐藤を指導室に連れて行った。残された柳田はまだ笑い顔だ。
「明李はユーヤんとこ、行くのか?」
「ほんとに肉じゃがかなぁ」
相葉のポイントはそっちだったらしい。
「アイスも残してるからな、俺」
「あ、俺もだ」
「俺は一旦部屋帰ってから行くけどな」
「俺もそうする」
離れた場所にいながら、普通に話す2人を誰もが黙って見ていた。最初に聞いた3人の関係について、聞きたくても誰も聞けない。
後日、唯一親衛隊のいる相葉に、隊員が代表して聞きに行くのだった。
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