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間章
我が娘について3
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私の名前はジェラルド。
グーテンベルク家の当主であり、同時に王国宰相の任を賜っている。
現在は夏季休暇中で不在にしている娘、アトリシアについて話があると国王陛下からの呼び出しがあり陛下の執務室にいる。
我が娘ながら文武に優れ、眉目も秀麗で、礼節を弁えた完全なる貴族といっても過言ではな……
「ジェラルド、聞いているか?」
「もちろんです陛下」
ともあれそんな娘については何の瑕疵もないことは疑う余地もないことは明確であるので、今回の話というのもおそらくはそのあまりの輝かしさに褒賞を与えようというものであろうというのが私の推測である。
もし違うというのであれば、万が一にもありえないと思うが、あの子が男のような格好をしていることについて何か文句を言う輩がいるということであれば、私は私が持つすべてを以って排除する所存である。
仮にそれが陛下ご自身であったならば私はこの国を……
「ジェラルド、聞いているか?」
「もちろんです陛下」
「……はぁ、すまんがもう一度初めから説明してもらえるか」
「はっ」
陛下は何故に呆れたようなお顔をされているのだろうか。
そして、陛下のお言葉に応えたのは確かウラリー・エルノーといったか。
近衛情報部の人間だ。
王国北部では珍しいエルフであり、その容姿を活かして南部や他国に派遣されることが多い者であったはずだ。
「それではまずルルハの動きから……」
彼女が言うにはルルハで魔物被害が拡大しており、その鎮圧に金鹿騎士団が駆り出されているという。
それはアトリシアから聞いていたものと同じだ。
金鹿騎士団といえば、団長のカスパル・カペルが思い出される。
あの男は用兵や戦術だけでなく政治までこなすから厄介だ。
しっかり予算を取っていく食えない男だ。
さらに話を聞くに、なにやらアルス領できな臭い動きがあり、魔物被害もそれに関連するのではないかと調査中であったとのこと。
アルス領は隣国フルーズ帝国における我が国との境にある領地であり、ルルハとは交易においてお互いに利益を生み出してはいるが、軍事的には常に緊張感がある。
フルーズ帝国はヴァールブルクの南西に位置する広大な国土を持つ大国で、領土拡大に野心的であり、外交面では硬軟織り交ぜた交渉をしてくる。
当然軍事的にも発達しており、規模・制度・装備・練度のどれをとっても近隣諸国の中で有数のレベル。
連邦として見れば十分に対抗できるが、我が国単体では遅延戦術をとって援軍を待つしかないのが現状である。
「だが、フルーズが動くか?」
現在彼の国は同じ規模の大国と戦の最中である。
北にも海を挟んで長年因縁のある国があり、安心できる状況ではない。
そこからさらに東へと手を出すほどの余裕は流石にないだろう。
北東に位置する我が連邦に手を出せば南東の国家群も危機感を募らせ動き出す。
「ええ、なのでおそらくこれはアルス領主の独断専行ではないかと」
「地方領主が他国に攻撃すると?」
「いえ、実際にことを構える気はないでしょう。ですが我が国の軍を国境に配備させるのが目的だとしたらどうでしょうか」
「ふむ」
魔物退治が目的とはいえ、国境に軍を配備すれば緊張は高まる。
それを目的とするとなれば……。
そこで陛下からお声がかかる。
「そちらに関しては後に詳細を報告書で確認すれば良い。それよりもアトリシアについてだ。報告を」
「はっ、私はルルハにて調査中にアトリシア様と遭遇し、戦闘になりました」
よし、ころす。
グーテンベルク家の当主であり、同時に王国宰相の任を賜っている。
現在は夏季休暇中で不在にしている娘、アトリシアについて話があると国王陛下からの呼び出しがあり陛下の執務室にいる。
我が娘ながら文武に優れ、眉目も秀麗で、礼節を弁えた完全なる貴族といっても過言ではな……
「ジェラルド、聞いているか?」
「もちろんです陛下」
ともあれそんな娘については何の瑕疵もないことは疑う余地もないことは明確であるので、今回の話というのもおそらくはそのあまりの輝かしさに褒賞を与えようというものであろうというのが私の推測である。
もし違うというのであれば、万が一にもありえないと思うが、あの子が男のような格好をしていることについて何か文句を言う輩がいるということであれば、私は私が持つすべてを以って排除する所存である。
仮にそれが陛下ご自身であったならば私はこの国を……
「ジェラルド、聞いているか?」
「もちろんです陛下」
「……はぁ、すまんがもう一度初めから説明してもらえるか」
「はっ」
陛下は何故に呆れたようなお顔をされているのだろうか。
そして、陛下のお言葉に応えたのは確かウラリー・エルノーといったか。
近衛情報部の人間だ。
王国北部では珍しいエルフであり、その容姿を活かして南部や他国に派遣されることが多い者であったはずだ。
「それではまずルルハの動きから……」
彼女が言うにはルルハで魔物被害が拡大しており、その鎮圧に金鹿騎士団が駆り出されているという。
それはアトリシアから聞いていたものと同じだ。
金鹿騎士団といえば、団長のカスパル・カペルが思い出される。
あの男は用兵や戦術だけでなく政治までこなすから厄介だ。
しっかり予算を取っていく食えない男だ。
さらに話を聞くに、なにやらアルス領できな臭い動きがあり、魔物被害もそれに関連するのではないかと調査中であったとのこと。
アルス領は隣国フルーズ帝国における我が国との境にある領地であり、ルルハとは交易においてお互いに利益を生み出してはいるが、軍事的には常に緊張感がある。
フルーズ帝国はヴァールブルクの南西に位置する広大な国土を持つ大国で、領土拡大に野心的であり、外交面では硬軟織り交ぜた交渉をしてくる。
当然軍事的にも発達しており、規模・制度・装備・練度のどれをとっても近隣諸国の中で有数のレベル。
連邦として見れば十分に対抗できるが、我が国単体では遅延戦術をとって援軍を待つしかないのが現状である。
「だが、フルーズが動くか?」
現在彼の国は同じ規模の大国と戦の最中である。
北にも海を挟んで長年因縁のある国があり、安心できる状況ではない。
そこからさらに東へと手を出すほどの余裕は流石にないだろう。
北東に位置する我が連邦に手を出せば南東の国家群も危機感を募らせ動き出す。
「ええ、なのでおそらくこれはアルス領主の独断専行ではないかと」
「地方領主が他国に攻撃すると?」
「いえ、実際にことを構える気はないでしょう。ですが我が国の軍を国境に配備させるのが目的だとしたらどうでしょうか」
「ふむ」
魔物退治が目的とはいえ、国境に軍を配備すれば緊張は高まる。
それを目的とするとなれば……。
そこで陛下からお声がかかる。
「そちらに関しては後に詳細を報告書で確認すれば良い。それよりもアトリシアについてだ。報告を」
「はっ、私はルルハにて調査中にアトリシア様と遭遇し、戦闘になりました」
よし、ころす。
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